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エピローグ 続・勇者のパーティのお手伝い

どこか懐かしい、昔親から連れて行ってもらった小さい頃に入った温泉の臭いのする祠から出てこれた。これから勇者御一行様のお手伝いのお手伝いというヴァミリオンドラゴンが勇者御一行様パーティに慣れるまで一緒に行動しようとするところ。そろそろお昼の時間帯であり、僕は妻帯者であって、お昼はいつも一緒に過ごすようにしているのである。勇者御一行様パーティにお昼休みを頂きたく、恐れながらも口を開こうとしたところ。


「そういえば、マッキーとヒーラーはどこで出会ったんですか?」


赤魔道士に質問された。良い質問だと思う。


「長い話ですよ」


僕はそう言った。


「ずっと暗闇の道を進んでたところで、僕と似てるというか、同じ魂の煌めきを感じてね。そこから、一緒に生きようって思ったところでかな」


ヴァミリオンドラゴンはそう言う。


「なるほど。暗い夜道でひとりぼっちは寂しいからな!」


勇者さんはそう言ったが、的を得ているように思える。


「そうなんだ。僕はその頃、寂しいなんて感情も知らない、何も知らなかったんだと思う」


「分かりますよ〜。強すぎると、一人でも不便じゃないですからね」


黒魔道士さんがそう言うが、その通りだ。まさにその通り。


「俺なんて、一人じゃ絶対無理だぜ…」


「4回ぐらい死んでますよね」


そう言って仲良く三人で笑い話にしてるけど、何とかなった結果として話の種になってるけど、そうじゃなければ終わってた。笑い話にできるぐらいのタフさはあるのか。僕にはそういう精神的余裕なんてなかった。


「えっと。僕は少し用事があるので先に行っててください」


「どうかされました?」


「あの祠でちょっと調べたいことがありますので。追跡はできるので、お先に。また後で合流しますね」


「まさかマッキー。考古学いじってるのか!?」


「そう言うところに近いかな…?じゃ。また後で」


そう行って僕は祠の中に入って行った。妙な硫黄の臭いがする。瘴気はそうでもないけど。


「さて。一旦帰って妻と昼食かな」


今日の昼食はどうしようか。一応札幌一番の味噌ラーメンの残りが二袋あったはずだ。簡易で良ければそれで。どこか食べに行きたいなら外食で。


「何食べたいかって聞かれたらどうしようか…」


そんな事を考えてると、祠の内壁に魔力で書かれた文章に気付いた。


「相当古いなこれ…」


文字は読めないけど、文字自体に強い気持ちが読み取れる。


「強い義務感と焦燥感が伝わってくるな。そして恐怖」


流れ出てくる瘴気はそう大したことじゃない。と。僕は思うけど。この祠、小さく短い洞窟なんだけど。この祠は自然に出来たものじゃなく、人為的に作られた建築物だ。


「ちょっと気にかかるな」


勇者の装備品が置かれていたらしい台座を注視する。魔力の微かな残滓を感じ取れる。


「何かあるな」


この台座はもう必要の無いものだろう。


「よいしょっと」


台座を抱えて右にずらすと地下に降りるための階段があった。


「…」


瘴気の濃度が跳ね上がった。


「…」


異質な魔力で形取られた質量を伴った影のような存在が、その階段にぎっしりといた。


「モンスターハウスかな?」


もの言わずとも、僕に襲いかかってきた。


「…」


攻撃性の魔力を拳に乗せて放つ。が。二つ三つが壊れただけで、残りが気持ち悪い動き方で近寄ってくる。


「マジかよ」


この世界のレベルとは別格である。これ、レベル30かそこらあるぞ。それが目を凝らして確認できるだけでも200体はいる。


「ふーッ」


久しぶりに体を動かす感じ。機械的に敵性脅威を葬るだけの運動。頭を使わずに、ただ殴ったりだとか蹴ったりを繰り返すだけ。三秒ぐらいで階段を駆け降りた。


「はぁはぁ。こういうの久々だなぁ」


肉体を駆け巡る魔力の経路が、疼き出す。ちょっとハイになってくる感覚だ。ジョギングした後の気分。


「Real換算でレベル50程度のダンジョンにおけるトラップかな」


階段を降りた先に、ぐつぐつと沸騰したドス黒い魔力を帯びた液体の池があった。その中央では影の集合体が蠢いてる。


「ヤバいな…」


自身の魔力をエコロケーションのように放ち物体を感知しながら視覚にも魔力を捉えて見る。妻の実家の洞窟で発明した技術なのだけれども、生物として肌に刺さるようなグロテスクを感じる。これはやばい。ヴァミリオンドラゴンを呼んだらそこそこジューシーに飲み干してくれるかもしれない。


「…」


先ほどの影みたいなのが地上に溢れたら、生態系は大きく変わるな。これはここらで終わらせておいた方がいいだろう。明らかに良くないものではある。ただ、これがここにある理由というのもある。研究対象として、この世界のヒト達に任せるべきかもしれない。


「でも、これはヤバいよね」


根を張って、他からも魔力を汲み取ってるようだ。


「あっ」


シュルシュルと触手が僕の心臓を狙って攻撃してきたので、払い除けたらそのまま触手から本体までドス黒い瘴気で溢れた液体ごと消えていった。


「やっちまった…」


日本のホラー映画は洋画と違って一撃必殺である。触れられたらアウトみたいなところがある。よって、ちょっとマジで反射的に力をこめたらこの結果である。


「あれ?」


気持ち悪い蠢いてるやつがいた場所に何かが落ちている。


「何だこれ」


何かの装備品がそこに落ちてた。王冠みたいな。髪留めじゃないな。こういうのつけてるヤツは池袋にも原宿にも居ない。少なくとも僕には馴染みがない。


「いい素材使ってそうだな」


かなり硬くて奇妙な加工が施されてる。この世界のものではない。次元のランクが高い場所のものだろう。


「っといけない」


好奇心で行動してたら五分も過ぎてた。そこから急いで次元をぶち抜いて実家に戻って、妻と一緒に札幌一番味噌ラーメンを作って食べた。

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