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第十五話 月三億の男?

男子高校生一人の一軒家に高校生と中学生の姉妹が二人。そして時刻は深夜十二時を過ぎろうかというところ。二人を帰宅させるべくタクシーを呼ぼうとしたところで待ったがかかった。


「通話中に通話切ボタン押すのは失礼だよ小林さん」


ちょっと怖い顔で小林さんは僕に接近し突如としてタクシーコールを切ってしまった。


「先ず私の話を聞いて。それから。さえちゃんはお風呂に入ってて」


「え?ダメでしょ」


「ダメじゃない。私は東雲末樹のユーチューブ動画でちょっとしたビジネスのお話があるの。それは実の妹にも聞かせられない話なんだ」


「納得できないなぁ。それに、確かに明日は学校だし」


「私は東雲君からRealの事もいろいろ聞いてて打ち合わせしないといけないの。その情報の中にはいろいろこれ以上口外できないのも含まれてる。ユーチューブの動画出してから演者である東雲君とコラボしたいとか連絡取りたいって人もいるし。中にはびっくりするような有名人とか海外のユーチューブで数字持ってる人もいる。これは私のビジネスなの。そして東雲君はパートナー。さえちゃんはスタッフその一。重要な会議で出席するにはまだ早い」


「…分かった」


「ちょっ言い過ぎだよ…」


「いいの?これから話す内容は東雲君の秘密も含まれるんだよ。もちろん私は誰にも言ってない。秘密っていうのは、人の生死に関わるような内容のことなんだよ。私はさえちゃんをそういうのに引きずり込みたくないの。東雲君もでしょ?」


「うッ。まぁそうだけど」


「だったら座って。さえちゃんがシャワーから戻るまで商談よ」


「うぅ」


ヴァミリオンドラゴンの事は小林さんにバレている。これは、相当重要な問題だ。小林さんがもし口が軽かったら。ちょっと怖いどころじゃない。かなりマズイ状況になる。


「分かったよ。聞くよ」


中坊が浴室へ向かっていき、ドアが閉まる音が聞こえた。


「この二日でコラボしたいって言って来た人達のリスト。これを見て」


ノートを出され、そこには結構有名な名前が書かれていたりした。


「うわ。マジで有名人みたいだ…」


ちょっと驚く。中にはナポレオンズは当然無い。


「そして、これが私に直接会って話したいって言って来た人達のリスト」


ページをめくられると筆記体の英語で書かれていたりする名称とその下にどういう人物かが書かれていた。


「嘘か本当かわからないけど、アメリカの情報局、自称イギリスの情報機関、石油王に自称資産家。もちろん、東雲君が本当にただの同姓同名なら彼らをダシにお小遣いを稼げたかもしれないけど、実はそうじゃない。本当に東雲君はそれを持ってる」


「まぁ。そうだね」


マジなところが反応しているのか。だとしたら。結構危険信号出てんじゃあないか。これ。


「誰と連絡してどことコラボするかっていうのも結構危険だと思う。だから動画のホームで、誰ともコラボは出来ませんって書き記しておいた。一応、ステマや商品の販促みたいなメールも来たんだけど。それは後でやるとしてね」


「う、うん…」


「それとさ。なんとなくなんだけどさ」


「うん」


「東雲君はあんまり一人で出歩かない方がいいかも。なんてことも思ってる。なんとなくだけど」


「…変な事は考えるもんじゃないよ」


最悪の想定ぐらい僕だって考える。でも。まさか。ありえないという妄想が現実になる可能性は確かにある。


「東雲君ってさ。Realはどんな感じなの?」


Realでの事を聞かれた。


「…」


ツキコモリさんやミルフィーの事を話すべきか。僕の、おそらくは初恋であろうこの一目ぼれみたいな事を話すべきか。それも女子に。おそらくは好意を持たれてるであろう小林さんに対して打ち明けていいものなのだろうか。


「好きになった人がいるんだ」


言ってしまおう。僕は、小林さんの気持ちには応えられない。もっとも小林さんは好意を持つというよりも、僕を、東雲末樹という人物を支配したがっているんだろうと思う。恋心というか支配欲が先にきてるんだと思う。僕は、決して、流れで小林さんと下手な関係を結ぶ事は出来ない。


「へぇ」


「その人がRealで絶景を見たいからって言って。僕はその人に付き合う形で行動してる。その人はシークレット賞の事を知ってるけど、別に興味も無い感じでさ」


「…」


「僕個人を見てくれて、付き合ってる感じがするんだ」


「ふうん。私と違って打算抜きでの友達付き合いってヤツ?」


「そんな感じ………かな」


どうだろうか。僕はただ一方的に絶景見るためのお手伝いをしてるだけで。ツキコモリさんにとっては、都合のいいボランティアみたいな感じなんだろうか。でも。彼女居ないのって聞かれたよな。どうなんだろうか。正直。そこらへんハッキリさせたくないかな。もし。もし…。


「両想い?」


ぐぐっと顔を近づけて言われた。思わずのけぞる。


「多分違うと思う。彼女はただ、きっと手伝ってくれて感謝してるだけかな。僕はそれでいいんだ。それだけで。ただ。まったりと。そういう感じでRealを進んでいけば。別に目的なんて無いし、大した理由でRealを始めたわけじゃないし」


「ふーん。ふーーん。へえ。利用されてるだけなんだ」


「極端な言い方かもしれないけどね。それ。僕を傷つけるために言ったでしょ」


「分かってるなら怒ってよ」


「一理あるからさ。正直。今の宙ぶらりんなぐらいが丁度いいんだよ。人生だって、何か目的があるわけじゃないでしょ。途中途中でいろいろあって、なんとかなってくって感じだと思うし」


「東雲君にしてはなかなか深い事言うなぁ。まぁね。でも、それはスタートラインに立ててる人。私の場合は家にお金が無いから稼がないといけないし、妹の学費だって大変だから。さえちゃんには、大学まで行かせてあげたいからね。私はテキトーなとこを推薦と奨学金でなんとかするか。推薦で役所勤めするかの二択だし。だから。選べない。東雲君ほど選択肢は無い分、余裕も無い。とりあえず、お金が必要なわけだ」


「妹さん。すっごいバカな考え持ってたよ。知ってる?」


「知らない。何それ?」


「ならいいんだよ。もういい」


「むかつくなぁ。適当にRealやってるなら、いっそのことアレさ。他人に譲ったら?」


「それは無理だよ。召喚獣だから。僕とひっついてる。多分、ひっぺがせないよ。一心同体ってやつ。なんか。そんな感じが分かるんだ」


「ふーん。ならいっそどっかのギルドに所属すれば?アラビアの王子とか、アメリカの副大統領とかのさ」


「うーーーーーん」


「悩む?」


「自分でギルドしたいなぁって気持ちはあるんだよね。誰だって一国一城の主を夢見るでしょ」


「それって漠然としてRealやってるって言わないよ。目標があるじゃん」


「そうかなぁ」


結構参考になるなぁ。なんか。こうやって顔と顔を突き合わせながら、堂々巡りのように話し合って何か答えが出るって新鮮だ。小林さんも僕に遠慮なんか今更しないし、僕だって小林さんには遠慮もしないし。


「でもさ。矛盾してない?それ」


「どういう風に?」


「その好きになった片思い相手とReal観光してるけど、傍らで自分はすっごいヤバイ召喚獣持ってるわけでしょ?」


「うん」


「それってヤバくない?」


「どういうこと?」


「成立しないよ。そんなすっごい召喚獣持ってながら、フツーにRealをプレイできるなんて思ってる?ギルド立てたって、それでもフツーじゃいられない。巻き込まれるだろうし。普通のゲームはもうできないんじゃない?」


「…普通のゲームプレイが出来ない」


言われてみると、なんかに落ちるというか、なんか妙に納得してしまう。確かに。客観的に観て普通のゲームが出来ないと言われてみると、確かにそうかもしれない。いや。確かにそうなのだ。


「普通のふりを今やってるわけでしょ?」


「すっごい言い方だね。それ」


「長く続かないと思うよ」


「なんでそう思うの?」


「私はRealの端末高すぎてやってないけど、それなりに話は聞いてるよ。プレイヤーキラーが居たりさ。現実の資金をRealに投資しちゃって殺されて奪われたとかさ。Realに投資するために借金しちゃったりさ。皆さ。結構必死になって頑張ってんだよ。そんな中でさ。最強のカードをさ。出さないわけがないじゃん。ましてや、東雲君だし」


「何かのきっかけがあれば、僕は召喚して、ばれるってこと?」


「そうそう。そしてきっかけなんてものは腐るほどあるからね。私達のために動画協力とかしてくれるぐらいお人よしだし。妹から話は聞いたけど、東雲君って動物として終わってるって話をしたよ」


「僕動物じゃないよ!?」


「そういう話じゃなくってさ。なんていうか。ちょっと多分、私が言うのもなんだけど、壊れてる部分があるんだと思う。普通じゃないって知ってるのに、普通で居続けるように努力っていうか、自然体でやってのけてる。ぶっ壊れてるって自覚してるのに、それを認めて生きている。ずっとそうやってるから、多分これからもそういう風になんとかなるだろうって思ってるだろうけど、多分無理だと思う」


「…」


核心を突くなぁ。


「ずっといい人を演じ続ければ、最高なんだろうけど。これから東雲君を狙う大勢の人がたかろうとすると思う。私みたいな優しい美少女ばかりじゃない」


「…」


殺しにかかられたけどね。血みどろになったけどね。


「ワルイ大人が、あの手この手で東雲君から奪おうとしたり、絞り取ってやろうって考えると思う。そんな時、東雲君。なぁなぁで終わらせたり、いい人でずっと通してくつもりなの?」


「…」


言われてみればと思う。それは今後の課題だった。


「ギルド立ち上げたとして、フレンドを作ったとして、彼女を作ったとして、今後の普通じゃないRealライフに巻き込んでしまうんだよ。どういう飛び火をするかは分からないけど」


「…目から鱗だ。考えも及んでなかった」


「女子高生はね。いろいろ考えるとこがあるんだ。実際、ギャル子なんて一歩手前だから。東雲君はギャル子と付き合うのがいいよ。マジで人生勉強になると思う。アハ!」


「怖い顔して笑うなぁ…。小林さんならどうするのが一番だと思う?」


「最初に言った通り、最大手のギルドに所属するのがベストだよ。そうすると、ブレーキが掛かるし。それなりの大人とも付き合える。最大手っていうのは、ギルドがたくさんいるなかで上から数えて何番目かってこと。資金力もあってコネクションもあって影響力があるところ。そんな傘下なら、東雲君は守られるし、それなりのRealで遊べるんじゃないかな」


「…」


上から数えたトップのギルド。影響力のあるスゴイギルド。


「…」


そーいや僕。今。なんちゃって加入してるんだったな。トワイライト。意図せず。


「…そうかぁ。なるほどぉ……」


「そうしないと、殺されちゃうかも…。アハ!なんちゃって…」


それ本気で思ってんだろ…。


「メッチャ参考になったよ…」


確かに。小林さんの道筋は正しいかもしれない。僕が独立するよりも…。いや。独立は早いと考えるべきか。


「しがらみが多いとは思うけどね。そんな時こそ、ノーと言える東雲君になるんだよ。カワイイ女の子にもノーと言えたんだから、東雲君なら東雲君らしいRealライフを送れるはずなんじゃないかな?」


「…うん。そうかも。そうしようかな…」


「でさ。動画配信が役に立つわけよ!」


「ええ!?」


「最有力ギルドで東雲君がどどんと加入しちゃってね。そんでもって、ヴァミリオンドラゴンという最強カードをお披露目するわけよ」


「えええ!?」


「そんでもって、動画でどかーんっと!これまではそっくりさんのなんちゃっての同姓同名みたいなのでしたけど、実はシノノメ・マツキその人なんだ!!どんっ!みたいな!!!」


「ええええーーーー!?」


「そうすりゃ動画再生爆上り。その日のユーチューブ再生数ランキング一位は堅い。なんならそのまま首位を目指す!ユーチューブのランキング一位になれば動画を出しまくってあの手この手を使って稼ぎまくる!日本一位が一日100万の売り上げだとしたら世界一位だとその十倍は堅い!一日1000万の売り上げ!!月3億円!!!月3億円!そう!東雲君!月3億円の男になるのよ!」


「…」


「月3億だよ東雲君!月3億!さぁ自分で言って!月3億!」


「ええ!?…月3億」


「声が小さいよ!月3億!」


「つ、月3億!」


「そう!その意気だよ!月3億!」


「月3億!」


「月3億!」


「月3億!!!」


なんか知らないけどテンションが上がってきた。そっかぁ。僕月3億の男だったぁ。そっかぁ~。月3億かぁ~~!


「月3億………まぁ。僕なら妥当な数字だろうね」


よし。なんか。すっごい元気出てきたな。一応指針は出来た。勉強や修行という名の元でギルド加入を許してもらえればいいんだけど。よし。頑張ろう!月3億だ!!

チョロイなぁ…。東雲君…。そんなところも大好きだよ…。

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