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エピローグ 勇者のお手伝いさん

勇者さん御一行様パーティにノリで僕もついて行ってるハメになってる。見たところ勇者さんの戦闘を評価するした感じでは、魔力の色が緑で、パーティにおける役割が現状盾役のタンク。魔力を日常的に使ってる俊敏性があって、戦闘時の自分の魔力の使い方が上手い。瞬発的に魔力を出力する最大値もなかなか見どころがあるように思える。確かに勇者を名乗ってるだけあって、その防衛力は丸の内の高層ビルを大谷翔平がぶん投げた攻撃を防ぎ切ることができると思う。実際の戦闘応酬は知恵と暴力が加味されるので、今後の冒険でどれだけ知恵のある敵と対戦していくことが課題だろう。どれだけの防御力があったとしても、魔力を展開して防衛する技術を突破されれ一巻の終わりなのだから。命を奪われる瞬間はあっというだ。僕がおびただしい数の命を終わらせてきたのも、あっという間だった。自分よりも遥かに格上の相手に挑むということは、そういうことになる。そうならないように、冒険者は戦わない選択も、逃げる選択も必要だ。


「この世界のそのドラゴンってレベルどれくらいだった?」


ヴァミリオンドラゴンに頭の中で問いかける。


「300くらいじゃないかな。よくわかんないけど、地球じゃギリ倒せるかな。小学校のグランドぐらいの大きさで、年も200歳以上ぐらい、多くの人間を食べてたらしくって頭だって良さそうだったね。人間の頭脳を何十も並列化してるぐらいの機知を持ち合わせて、無敗からくる傲慢だろうね。そういうのがとにかく鼻についたね」


小学校ぐらいの巨大な施設の中に何十人もの冒険者が入っており、それらが空から攻撃を仕掛けてくる。普通に恐怖でしかないだろう。圧倒的な総合戦闘力をひとえにレベルと言い換えてるけど、それを埋めるのは人間の数と文明で立ち向かうしかない。このパーティなら、この世界を味方につけ、世界そのものとの対比にさせるしかない。勇者とは、世界で一番過酷な職業だ。道のりは険しく、茨で、政治的だ。


「冒険者としては、練り上げられてるんだろうけどね」


「そうだね。運命しだいだよ」


勇者の持つ肉体的資質、鍛え上げ練り上げられた筋肉、骨格は、地球の現代社会では考えられないほど発達している。魔力は意志に追いついて、現状では向かうところ敵なしだろう。自信もあるだろう。ヴァミリオンドラゴンの魂を継承した僕が、かつての勇者と言えるような業を成し遂げた僕だからこそ、理解できるものがある。心の中に浮かぶ気持ちは、応援一色。ヴァミリオンドラゴンと僕が出会った時も、そういう気持ちを持っていたのかもしれない。脆く崩れ易い意志は、運命によっていともたやすく結果をもたらしてしまうのだ。


「むむ。ない!それらしき台座があるけど、伝説の装備品がないぞー!?」


Realでビッキーと異世界を冒険してる時、確かに装備品の凄まじさを感じたこともある。文明の築き上げた突端に位置する集約されたもの。それは簡単に世界を変える。地球の現代社会では、パソコンというモノが生み出され、パソコンによってもたらされたインターネットは、人間の文明を塗り替えた。似たような事例を見てきた。刻印技法(人間の肉体から派生する魔力の経路を人為的に刻み込んで編み上げ、本来必要であるはずの魔法詠唱や魔術の儀式を省略して実行可能な魔法科学の技術)、冒険者ギルド(レベル100以上見込みのヒトに対して策定された冒険家としての心構えやルールを遵守させる枠組み、冒険者としての心構えを標準化することによって共通認識や共通課題に取り組むねらいがあるヒトのあらゆる枠組みを超越した組織。あらゆる生命体としての最終的な雛形が四肢と頭部を持つ上半身と下半身で構成される肉体へとしばしば進化するので、ヒトと定義されている。組織理念に秩序の第一がある。冒険者ギルドの組織平定によって、絶望的なレベル差によって発生する回避不可の破滅が減った。ちなみに冒険者ギルドの共通課題に、Realのクリアが含まれている。クリアとは文字通り消して無くならせることがある。Realの理念である弱者の強化が、冒険者ギルドの理念である秩序の第一と対照的だからである。冒険者ギルドの波及効果によって職業魔王や星喰らいが無くなった)


「凄い装備品らしいんだけどなぁ」


万能の道具、機械仕掛けの蓮の花は神秘や秘蹟といった世界の物理法則にバグや穴を発生させ、使用者に任意の願いを聞き届けるというヤバいのもあった。ビッキーと妻と一緒に異世界で遊んでたらプレイヤーキラーに使われたことがある。仕様書にはそう書かれてたけど、無限に湧き出るレモネードのバスタブなんかも作れた。凄い装備品や凄いアイテムなんかになると、本当にヤバイのが出来ちゃうのでちょっと怖い。


「ここから離れた離島では盗賊の市場が賑わってるみたいです。もしかしたらそこには盗掘品があるのかもしれませんよ」


黒魔術師がそう言う。


「僕が必要かな」


ヴァミリオンドラゴンにそう告げると。


「ぼくは心の機微に沿った正しい行動が苦手だから」


数日、あるいは、一日ぐらいで勇者の冒険が満足のいく形で終わったりしないものだろうかと思う。実際目標であったドラゴンはもう倒されたわけなんだし。それとも、ヴァミリオンドラゴンには勇者の育成とこの世界を見守る義務が発生してしまっているのか。いずれにせよ、断るわけにはいかない。今度は僕が助ける番だ。但し、そろそろもうお昼ぐらいじゃないだろうか。そろそろ妻との昼食の時間だし、家を離れた理由も言わなきゃならない。九時間労働だとしたら、分割で三十分程度の休憩を二回に分けて取ることは可能だろう。職業勇者にお手伝いさんとして参加してるのなら、僕はどういう業務形態で臨んでるのだろうか。今思ったんだけど、ひょっとして勇者さんパーティってブラックだったりするんじゃあないだろうか。…まさかね。

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