エピローグ 再燃者
「…うーん」
眠れない。ギャンブルで負けて追い剥ぎにあったかのようなボロ負けをしたせいだろうか。それともパチンコで負けたせいだろうか。確かに負けてる時、自分の体がどこか銀玉と一緒に溶けて流れ出てるような感覚を味わっていた。それともパチスロで勝ったせいだろうか。脳内麻薬が確かにギンギンにぶっちぎって多少アヘってた感覚は拭えない。
「…」
妻のいつものぐーぐーガーガーといういびきの音が聞こえない。起きてるのだろうか。時刻は既に夜の十二時を回ってる。僕は正直本当のところは睡眠を取らなくて生きていけるけど、妻と一緒になって横で眠ると生きてて良かったと思えるぐらいの目覚めの感覚を味わえる。そのためにちゃんと毎日人間らしく睡眠をとっている。だから、毎日の妻の寝息はもう鈴虫と同じぐらいにもう慣れていたのである。つまり、起きてるのだ。
「起きてる?」
「起きてる」
「眠れない?」
「眠れない」
「昨日色々あったもんね」
「Realで効きの強い薬を使った後みたいな感じがする。体がグデっとしてる」
「何か飲む?」
「いい、大丈夫。これは妊婦にはキツいね。悪影響だからもうやらない」
その言葉を聞いて、僕の悩みが一つ減った。妻がパチンコにハマってしまうのではないかと、これが実は一番眠れない原因だったかもしれない。
「なんか映画でも観る?」
「いいね」
そして深夜十二時を回ったところでホラームービーを再生した。
「うわ。こわっ!」
「…」
実録ドキュメントお前ら行くなを観始めると、本当にマジで怖くなってきたので再生を止めた。隣を見るとスヤスヤと妻は普通に眠っていたので、そのまま布団へ運ぶ。
「んー。これフツーに怖いわ。観るのやめよ」
寒気がする。幽霊とかフツーに怖い。
「…」
ますます目も冴えてしまった。
「…どうしようかな」
八木に電流走る。
「せや、流石に妻は起きないだろうしシコって寝よっと」
「…」
そしてティッシュに手を伸ばしたその時である。
「…あひゃひゃひゃひゃあひょあ」
テレビのモニターから巨大な手が出てきて、僕の足を掴むとそのまま引っ張っていった。