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エピローグ 純白の魔道士

一旦落ち着いて喫茶店へ。お腹もパンパン。というより、僕の場合は人間の構造上とは濃さが違う。ご飯なんていくらでも食べれるだろうと思う。僕がお腹いっぱいになるという感覚は精神的な面からや気分的なものが大きい。今日は久しぶりにマスターと食事ができて良かったというのものかなり大きい。そして、多少のパチスロでの異常な機械音に激しい光量。僕ですら心拍数が上がるし手汗も出たのだ。あとはお家に帰ってのんびりしたい。今日はちょっとメチャクチャ変な気の使い方をした。


「あ。ちょっと待って」


後ろを歩いてるマスターがそう言って立ち止まった。繁華街で道を歩くときは横に並ばず縦に並ぶのが玄人ととしての裏ルールである。


「なんです?」


「臭いがする。死臭だね」


もう100メートル歩けば西武新宿駅ってとこで立ち止まられてそう言われた。


「警察呼びます?」


「いや。マッキーも奥さんも、食事後でそういうの平気?」


「問題ないよ」


妻がそう言うので。


「ですね」


そう言った。死臭?僕は全然わからない。元々雑多な新宿のそれも歌舞伎町だ。日本のみならず、海外からの観光客だって多いし、水商売の人間特有の強い香水の香りなんかも強い。これほど夥しい臭いの中から、死臭をかげるのか。


「じゃあ、ちょっと付き合って貰おうかな」


そう言ってマスターが先導して歩き出す。


「30分で済むから」


エレベーターすらない歌舞伎町の雑多ビルに足を突っこむ。ひんやり、どこか冷たい空気が流れてる。狭くて汚い階段を歩く。三階フロアで廊下へ向かって突き当たりの部屋のドアで足を止める。


「バトル展開?」


妻が尋ねると。


「バトルじゃないですね」


そういうものではないらしい。マスターはドアノブを回すが鍵がかかっていた。マスターの魔力が扉伝いに流れて重さを持って実体化して裏側から二重のドアロックを解除した。メチャクチャ早い。魔力というものを日常的に使ってるって感じがする。


「あ。人が一人死んでるね」


「その通りですね。血の臭いはしないから、薬物過剰摂取オーバードーズかな」


ドアを開けると変な臭いが増してきた。マスターが土足で上がり込んで行くから、僕達もそれにならう。どかどかと進み、ドアを開けてゆくと、リビングルームで男が死んでた。リビングルームにはバーナーやパイプタバコが置かれてる。死で満ちた部屋だ。気分のいいものではない。


「うっ」


「24時間経ってないぐらいかな」


マスターは膝をついて、遺体の胸に手を置くと。遺体が息を吹き返した。滅茶苦茶早い。一瞬で蘇生させた。


「うん?」


マスターは薬物の入った小包を手に取って眺めると、ケータイを取り出した。


「オレだ。今粗悪品を見つけた。位置を送ったからジャンキーに聞いて特定させてね。今蘇生させたから酔いが覚めるまで三時間ぐらいはかかると思う。うん。よろしく」


そして立ち上がると。


「最近また出回ってるんだよね。どこかの組織が手を伸ばしたみたいなんだよ」


「そうなんですか」


別に問題は無いだろう。うちのサークルは途轍もないヒトばかりだ。悪ければ悪いだけ美味い。人を食うのが趣味な人も業な人も、それは共通認識だ。どうせ彼らは食卓にあがることになるだろう。


「人を生き返らせる事ができるの?」


「古かったり、魂が変わってない限りはですね。オレみたいなのが人生を捨てて極めた特技かな」


「僕なんて生き返らせようなんて発想がそもそも思いつかないですけどね」


「新宿はオレ達のテリトリー。自社ビルから目と鼻の先でのルール違反は許さないよ。ごめんね。付き合わせちゃって。次はオレが裏メニュー紹介するから」


「裏メニュー?」


「1キロのパフェ」


「絶対食べたい」


さっきまで死んでた、ごふごふ咳き込んでる人間の近くでよくスイーツの話できるなぁ。まだ死臭も残ってるのに。



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