エピローグ だらだらの夫婦
妻と一緒にUFOの特番を見ていると、とんでもないオカルトにSF混じりの都市伝説が流れていた。僕達は本当にだらだらと一日中映画観たりアニメ観たりして過ごしていた。そんな中で刺激的な煽り文句の中、人工知能が人間を支配するという説が取り上げられていた。
「ターミネーターの世界だね」
「現在のスパコンの並列化だと人間の脳を丸ごとスキャン出来たり、人間の知能を上回る知性があったりするらしいからね」
僕達はだらだらとポテトチップスをバリバリ食べて、飲み物はトマトジュースやオレンジジュース。コンビニで適当に買いまくったスイーツの食べかけでいっぱい。ダブルソファの前の背の低いテーブルの惨状といったらなかった。まさに、ローマの貴族も驚くぐらいの贅沢である。ぶっちゃけ、もう僕は人間の生きる一生分の仕事をやってのけた気もするのでもう国民の三大義務である労働はもう免除されてるかなとも思ってる。もう、命のかかる仕事はやりたくない。税金も結構納めてるし。少なくとも、今は妻のお腹の中にいる子供が生まれてくるまでは二人っきりの時間をゆっくりと過ごしたい。子供が出来ると一人目、二人目、三人目ってなると生活はもう二人だけのものではなく家族のために過ごす事になる。二人だけの時間というのは、今後の一生の中で考えると、案外とても短いものなのである。だから、これぐらいののんべんだらりんは許されるのである。
「怖いね」
「あんまり心配はしてないよ。人間ってなんだかんだで偉いからね。頑張って何とかしてくれる」
そう言ってバリバリとポテチを食べて、オレンジジュースを飲む。
「そいえば部屋の内装どうする?」
食卓用のテーブルには昨日買ったセーラームーンのフィギュアが四体並べられてる。四つで十二万しました。
「見せて貰えそうな人がいたんだけど」
「うん」
「いろいろあってなんかキャンセルになったよ」
諸事情の都合によるヤバイのでカットである。
「そうなんだ」
「また見せて貰わないとね」
「そうだね。佐藤さんの家はユニークだった」
「うちのサークルあんなんばっかりだからね。オタクが金を持ったら注ぎこむのは一直線だからね」
「悪くないよ」
「まぁね」
そう言って二人してUFO特番を見続ける。
「宇宙人かぁ」
「僕達はもうRealを通じて他の宇宙や他の文明、他のヒト種族を知っちゃってるからね」
そう言って再び湖池屋のポテチの封を切る。一応健康のために100%国産のジャガイモを使ってるやつである。妻はプリングルスのオニオン味が大好物らしいが、アレは輸入物で添加物に何が使われているか分からないので購入を辞退してもらった。少しむっとなった後に山のようなコンビニスイーツをかごの中に突っ込まれたけど。
「そうだね」
ちなみに妻の手料理はもう一か月は食べてない。お味噌汁もである。今度スーパーに行って一緒に玉ねぎとジャガイモと人参と牛肉、ちょっと高めのカレーフレークを買うべきかもしれない。やっぱり家族といったら自炊である。いくら僕の口座に貯金があったとしても、大切な家族のためには料理が何よりも必要だと思う。だとしたら、いっその事僕が手料理を積極的にやるべきなのか。それも悪くないかもしれない。でもそれだと、妻の手料理が食べたいという心の欲求が満たされないではないかと思う。
「なんか、こんなに世界は回ってるのに。私達は並んでだらだらしてるだけ。ちょっと贅沢だね」
「一生分働いたと思うし。僕みたいなヤツが活躍しない世界の方が立派な世界なんだよ」
そう言って、僕もまたコンビニの高いスイーツに手を伸ばす。