表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/198

家族を作ったヒト

完全な身内だけの結婚式が終わって、夜が来ると、やっぱり結婚初夜がやってくるわけだ。梅田家の離れである妻の部屋で過ごす結婚初夜。結果として二時間ぐらいで終わった。その時間が多いのか少ないのかって判断は出来ないけどいくつかのちょっとしたトラブルが出てたりした。そのトラブルはいろいろである。いろいろではあるけど、次の日に起きた僕はまるでプールに浮かぶように白い液体にぷかぷかに浸っていた。人間ではなくなったせいか、精液の量がまるでエロゲーのようなぶっ飛んだ量になっていたのだ。妻に対してちょっと頑張ればとてつもない幸福感でいっぱいいっぱいになるだろうと思ってたけど、実際には達成感や幸福感はあったのだけれども、全然気持ち良くないと言われた。結婚初夜に対して相当リサーチをかけていた僕としては、それが思いのほかショックでたまらなかったのだ。夫婦間の間柄において夫だけめぐるめく天にも昇る絶頂感を体感しているだけでは、夫としてダメだなのである。どうにかこうにかして妻に対してもそういう気持ちを抱いてもらいたくべく、生まれてきてから培った猥雑マンガ、どすけべゲームを駆使してどうにかこうにか満足していただいた。先にぐでっと横になって寝息を立てるのを確認すると、僕も隣で寝入った。そして僕はこんこんと24時間以上眠っていたらしい。体液やら血液やらでぐっちゃぐちゃになった新品のダブルベッド。妻と相談してその日のうちに焼却処分した。思い出の品としてとっておきたいと思ったけど、さすがに洗えない。キスしてる時に僕の舌の端っこを噛み切られたり、背中を爪でひっかかれたり、僕も多くの血を流した。結婚式には多くの人が参加したがったけど、本当に大勢来られるのも逆に集中できないので、身内だけにしたのは正解だったと思う。もっとも式の内容はユーチューブで生放送されていたらしいのだけれども。もちろん結婚式は佐賀県で挙げた。来客分の交通もホテルも全て手配し、全員に佐賀県の最強さを存分に舌で味わってもらった。佐賀市の名産伊万里牛と呼子のイカのフルコースである。ちなみに大きな声では言えないが最近の佐賀県の呼子ではあまりにも多くの観光客が来るのでイカの需要が供給に追い付かず、山口県からイカを仕入れてきたりもしてる。少し厚めのフグ刺しも忘れてない。二人で親族の好き嫌いも考慮しながら頑張って考えた。泊ってもらうホテルも知る人ぞ知る名旅館。まぁ僕達は結婚初夜の件で抜け出したのだけれども。結婚式にはちゃんとうちの両親も来てくれた。二人は世界を股にかけるコミュ力お化けなのでなんとか二つの家族が一緒になるってことを話合う機会が持てて良かった。意外にも妻のお父さん、義理の父はロックは好きなようで意外と気が合ってた。後半ラりったりだとかトリップみたいな話をしてたような気がするけど聞かなかったことにした。一応マスターだけは呼んで、彼もちゃんとサークルを代表して来てくれた。いつもの萌えんちゅTシャツではなくアルマーニのスーツで来てくれて事に内心ほっとした。ビッキーはモニターの遠隔出演でサプライズだった。っていうか完全に身内だけって本人に言ってたんだけど。彼女が僕達にプレゼントしてくれたのは死神が使うようなノートで書けば死ぬらしい。試しに僕基準の性犯罪者って言ってみて書いてくれたけど、今のところそれが本当かどうかはわからない。非人道的な大学生のサークルとかがバタバタ死んでいったり、刑務所が空になったら本当だと思うけど。僕と妻は手を叩いて笑ってたけど、他の大人はそのヤバさに笑ってなくて気まずかった。僕はもうあのノリには慣れたけど。世界は彼女の手の中だ。


「これからは、子作りしたいなって思ったらちゃんとしてくれないと違法なんだよ」


「えっ。そうなんだ」


僕達の間柄だと、そういうルールになるんだろう。


「私には分かる。受精してる」


一瞬言葉が出なかった。


「ええ?分かるモノなの!?」


「私には分かる」


「名前も考えてあげなきゃ…。男の子?女の子?」


「それはまだ分からない」


後日超音波検査で診断してもらうと立派な男の子だと判明した。そのことが改めて僕を泣かせた。万が一、ヒトじゃないモノだった場合の事も二人でちゃんと相談していたせいもあって、本当に安心できる事だった。


「うん。男の子だ」


これまでの人生で感じた事が無い幸せな感じが心から沸々と湧いてきた。男になるのは誰でもできるけど、父親になるのは誰でもできるわけじゃない。ちゃんと、これからは父親なのだと。脳の回路がどこかで切り替わった。家族を持つって、どんだけ偉いのだろうか。あらゆる可能性とあらゆる危険が目の前に無数に広がってる。世のお父さんは、こんな父親という存在で、こんなにもちゃんとやれてる頑張ってるのだと改めて感じた。僕もそんなお父さんの一員になれた。頑張ろうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ