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エピローグ 独身さよならパーティ③

目隠しをされて解かれた場所は学校の体育館だった。照明は薄暗く加工され端っこにはバスケットのゴールポストが設置されてる。下半身やら上半身をガチ縛りされていたせいか、椅子から立ち上がってのろのろとしか移動できない。きょろきょろと辺りを見回すと、お香のような変な匂いの他はフツーであった。こちとら地獄までいったり初見未予習で月まで吹っ飛ばされたりしてきたんだ。今更こんな雰囲気でびびったりはしないのである。


「誰かいますかー?」


僕の声だけが薄闇の体育館に響き渡った。


「雰囲気さいこーかよ…」


そんな中、カタカタとする音が聞こえて目線を上げると体育館ステージ側に夥しい人形が不気味に置かれているのが目に入った。


「…うわぁ」


流石に肝が冷える。


「…」


そしてカタカタと肩を震わせながら、でっかいハサミを持ったテディベアが僕に襲い掛かってきた。


「マジかよ」


冗談ではなく、体内にマナを込めてオーラだして殴って消滅させる。


「…」


一体やっつけた直後に再びカタカタとする音が響き渡り、ステージいっぱいの人形たちが躍り出して襲い掛かってきた。


「やってやるかんな」


近づいたところからぶっ壊してゆくと、最後におおきな人形が僕と向かい合った。が。


「佐藤さん?」


佐藤さんの姉である。吸血種の食糧問題を解決した佐藤家の一族で最も力を持ってるヤバイご老体である。若々しい肉体を持ってるが不老不死で半世紀以上生きてるご老体だ。一度の睡眠で一週間の三分の二を過ごすという不老不死というものに対して考えさせられるリアルケースの当事者である。


「マッキー君、ちょっとええとこみてみたい~」


「…え?っていうかヒマだなぁ~」


そんな事を言ってるととびかかってきた。真面目に殴ったり蹴ったりしてる。いわゆるフィジカルでの、人間でいうところの、フツーのケンカ、徒手格闘。ただ、相手はちゃんと魔力を込めて一撃一撃に願いを込めて打ってるのでマジで効く。


「初っ端からっすか!?」


連打。連打連打。あなた何してるんですか?多国籍企業の役員ですよね?こんなところで油売ってないで豪華リゾートでのんびりバカンスでもやってりゃいいのに。


「こんな時でもないとドラゴンとはやれないからね」


「それって性的指向の話!?」


「趣味よ趣味。けど、体動かすのって、体に良いからね。それに、ちゃんと全力出してもいい場合なんて、滅多にないから」


更に速度をあげてく。


「そうですか」


凄まじい戦闘応酬にも僕の身体はついてってる。今僕がやってるのは、戦闘ではない。介護である。


「…」


ご老人を労わるって、こういうこと。


「ぁぁぁああああアアアア!!」


全ていなして、さけて撃ち落とす。


「ドラゴン変化もしない?」


「ボクシングのスパーリングでヘッドギア外してやらないですよ」


長く生きてれば、ずっと抱え込んでしまう心の問題もあるかもしれない。気の遠くなるような時間で得たものを、おもいきりぶつける存在になれるのはある種とっても栄誉なことでもある。


「もうちょいギアを上げるよ」


「…どうぞ」


闘ってる最中、汗が飛び散るワンシーンにおいて、相手を笑顔にできること。幸せを感じとっていただくこと。それに自分自身が携われる喜び。


「…」


「はああアア」


存分に力を出してみるといい。全てを出し尽くして欲しい。今しかできないことをやってほしい。それは老若男女問わずに生きてる証明なのだから。戦う喜びを。その原始的な欲求を、残虐な欲望も、破滅的な自滅衝動も。全てを出し切って欲しい。今この瞬間のために、許されざる技術を体得したのだから。


「…」


これ僕が泡吹いて気絶するまで止まらない感じか?ちらりと二階の席を見るとギャラリーで埋まってた。それとも、僕はこれ全部相手しなくちゃいけないのか?僕の闘いたいのか?お化け屋敷とかこつけて限定環境でおいても。僕とやりたいのか。


「えっくすたすぃぃ……ハハハハハハ!」


楽しんでもらえてなにより。あなたが楽しいと、僕も楽しいですよ。

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