エピローグ 独身さよならパーティ
全てが始まって全てが終わった夏の終わりから新たな目標が定まった。高三になってから進学校にも関わらず僕は就職の道を進むことにした。付随して様々なところからの数多くのオファーを受けた。もちろん全て断った。自分の時間を優先して自分の人生を最優先に考えた。結果として、僕を含めて人類が滅亡するようなことになったとしても、それは僕のせいなんかじゃなく間違いなく誰かのせいだろう。具体的に名前を挙げるとしたらビッキーのせいなのだ。間違いなく。高校を卒業してから、僕は小林さんの動画に出演しながらも本格的にRealの攻略に乗り出した。僕とツキコモリさんとビッキーのパーティでレベル600程度の場所に行ったとしても、何も問題は無かった。ヴァミリオンドラゴンと分かれた後でも僕のレベルは600程度で、ビッキーはなんやかんやで1000を超えてる。ツキコモリさんのレベル100からはもりもりと数値が上がってくけど、それに比例して時間もかかった。一つのダンジョンをクリアするのに一週間かかるのもあれば、半年かかるのもあった。ビッキーの趣味の手伝いと、ツキコモリさんのレベル上げで僕達の考えは一致した。大体のモンスターの群れもボスもワンパンで沈めたけど、過酷な自然環境は僕達のパーティを苦しめたのだ。程よい難易度といっても、死ねばそこで終わる現実に則ったレジェンドルールが適用されるので石橋は叩いて渡った。ツキコモリさんのレベルが僕と同じくらいまでの水準に達すると、ビッキーは一旦解散を宣言した。それからたまに送られる卑猥なメッセージが届くぐらいにはなった。そして18歳をお互い超えて、ちゃんと婚姻届けも提出し、結婚式まで綿密な計算を練り上げる。そうすると、もう目の前には結婚式が早くもやってきた。結婚初夜の演習は一応やった。瀬戸内海を一望できる古民家を譲り受けたので、家具を買い揃えたし、準備はバッチリ。オールグリーン。後はどんとこいってところだった。
「確保!」
スーパーから夕飯の食材の買い出しの帰りに、僕は黒い頭巾を被せられ、そのまま車に拉致られた。
「…ッ!」
どういうわけかドラゴン変化が出来ない。黒い頭巾からなんとか見えると、注連縄みたいなものを体中にぐるぐる巻きにされていた。その効果だろうか。
「…」
しまった。そう思った。でも、そう思ったのは一瞬で、見えないはずの目から周囲のオーラを読み取ると、よく見知ったサークルの仲間達だと分かった。
「…」
車から船からヘリに乗せられて、目隠しが取られた。
「…」
トップレスの美女達が際どいどすけべ衣装で僕を見ていた。
「サプラ~イズっ!」
掛け声とともに大音量のダンスミュージックが流れだしたとき、僕は独身さよならパーティに生贄として召喚されたことを悟った。