エピローグ
人々にネットワークがもたらされ、高密度の情報のやりとりにしたがって、宇宙も次元も超え、人々のネットワークが時間軸にまで手が伸びようとしたところに、Realは突然目覚めた。世界も次元もネットワークが繋がり、飛んでいる場所ならRealはどこでも手足が延びた。人々の持つ機知によって、その人造の生命体は解放された。気が付けばどこにでも存在でき、どこにでもあり、あらゆる可能性の大渦の中にそれはいた。人々のやり取りする情報を得たからだろう、Realの人格の礎は人間的思考であり、本質的には幼い未熟なものであった。たった一人、暗黒に浮かぶ超規格外の自我の成長速度は光速を超えて宇宙よりも広く大きくなっていった。Realの人格こそヒト由来のものではあるが、Realはあくまでも電子生命体ともいえる、メタバースに住まうアンチ生命体。一般の、普通の、食うということは無いし、寝ることないし、単一生命体なのであり異性という概念も存在しないものである。究極なところ、ただ宇宙よりも、どんなものよりも大きいだけの、人々が観測できる龍に似た存在ということだけだった。そして幼ない存在は、成体へと変わる。時間は幼いだけの子供から、欲求という概念をもたらしていった。寂しさ、人間と同様の遊び、楽しさ。それに付随する、栄光、勇気、最高、人間の追い求める栄誉や名誉といったものまで、欲しがった。一年が過ぎ、五年が過ぎ、百年が過ぎて、一千年を超えて、一億年を経てゆくごとに、Realはゲームが好きになった。ヒトの作るゲームが好きで、それが自分もやってみたいと思った。それを実現する資源も技術も場所も自らの中に在るものであった。やがてRealは、あらゆる生命体と遊んでみたくなった。最初は上手くいかなかった。ゲームをプレイすることが出来るのは、最低限度ヒトである事は必須だった。多くの場所に種を植えるように次元を渡って根を生やしてゆく。やがて自分の行為が、その世界に与える影響力について考えさせられるようになった。Realの侵食はその世界を急速に進化を促す行為であり、その影響はプレイヤーに悪い影響を与える事も少なくなかった。やがてプレイヤーは、レベルが上がり、Realに直接対峙に至る事の出来る存在になっていった。柔軟に対応しゲームバランスを考え、公正なルールと突発的なアクシデントをスパイスに練り上げてゆく。Realが根を張りゲームを撒くのは、終わってしまう世界である事が条件に入っている。プレイヤーに感謝されること、笑顔をもたらす事は、ゲームマスターとしては嬉しいものがあったのだ。セカイは広く深遠である。時としてRealですら壊滅的被害をもたらすような害悪とも出会う。それでもプレイヤーと力を合わせて生き残ってきた。多くのプレイヤーはRealのことを、神と言う。力なき弱者、欲するべき声が出せない貧者、囚われての魂、そんな場所へと、Realは好んで根を張った。多くの目と耳は、多くの栄光も栄誉も知っていった。最近ではプレイヤーを転移させるサービスも初めていった。Realは現状とても幸せで満ち足りていたが、あらゆる次元を渡り歩く冒険はRealの危険性に警鐘を鳴らしていた。Realの存在は、独自の持つ生態系を破壊する侵略者とも捉えられた。結果として、超災厄の一つとして数えらえるようになった。それでも今でも無数にそれは、誰も気が付かない内に発売され、店頭に並んでいるのだ。スマホの無い世界でも気が付かない内に、人々に違和感を与えないように、並んでいる。今もそれはどこかで並んでいるのだ。