表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/198

凱旋のパーティ

相思相愛でご両親のお許しも頂けて、僕達はもう問題を直視する準備が整ったところだった。今度どうするのか。結婚はどうするのか。僕の仕事はどうするのか。結婚式はいつやるのか。どこに住むのか。子供は何人欲しいのか。お互いが好き同士で一つ屋根の下、今後のお互いの生活に対しても細部に至って話し合う必要だってあるわけだ。僕としては、さっさと子供が作れる準備も環境も整えて、結婚できる十八歳になったらその日の内に婚姻届けを出して式まであげてしまいたいのだけれども。ツキコモリさんに対して、今のところはそれほど性欲は感じてないのは救いだ。強く感じてしまったのならば、僕は日本政府に対して結婚年齢の引き下げを求めていたことだろう。それとも佐賀県の田舎の方の市役所にお願いして、僕とツキコモリさんの年齢を引き上げるという手段も考えられる。こっちは違法で倫理的にもアウトかもしれないが、婚前交渉よりも遥かにマシだろう。そうなったとしたらと仮定すると、明日にでも結婚できるということで、結婚できるということはその日の内に結婚式を挙げてしまえるわけで、そうなってくるとやがて時間が過ぎて行って夜にもなっていき、段々と夜も更けると、そうなると夫婦なのだから一緒のベッドか布団で寝るのは当然であり、そうなってくるとやっぱり種の繁栄や子孫繁栄なわけだから、死と生を垣間見えるわけで、つまり僕の冒険が終わり、次世代の新しい子供に気持ちや想いや考え方や遺産だって受け継いでももらうわけで、そうなってくると、子供が毎年ぽこぽこと出てくるわけで、子供が結婚するまでは手一杯に僕の時間は使われてしまう。やがてお爺ちゃんになって、孫が出来て、そこでようやく、良い人生だったなって思えるわけなのだ。死がなければ出会えない、生まれてくる命を僕はこの手で抱きしめるのだろう。幸せな家族計画は完璧であって、不慣れなりに精一杯頑張って二人三脚で人生を切り開いていくのだ。それが人生であり、僕の目標で、夢なのだ。


「…」


夢には障害がつきもので、邪魔するヤツもでてくるわけで、ひょんな偶然が重なると大けがをしてしまうような事故にも繋がる。大切なのはちょっと考えて目の前の落とし穴を踏み込まない事なのである。そして男にとって落とし穴は、女性関係、アルコール、ギャンブル。この三つである。男はこのいずれかで破滅し死んで、命を落とす。幸福の絶頂から雪だるまのように転落していく人生が後を絶たないのは、この落とし穴を軽んじたり舐めてかかったり無視したりする結果である。特に女性関係。こればっかりは当人の倫理観に委ねられている部分が多く、死刑や懲役といった刑事罰にも問われることはない。罰則が無いからといって、自由にしていいわけではないのだ。幸福の絶頂に至りながらも自由の価値を知るモノは少ない。僕は当然理解している。自由になるまでの道程は遠く険しいものであった。死にそうになったり、死にかけたり、地獄に行ったり、天界に行っちゃったり、月面内部にも飛ばされた。そうしてようやく手に入れた、自分の夢。大切なもの。幸福の絶頂。故に、目の前にポッカリ開いた落とし穴に落ちるバカではないのである。


「サプライズはいいから帰って欲しいです」


ドアにチェーンロックをしてからホラー映画チックに顔だけ少し出してから玄関口で小林さん達に言った。二人だけの時間に水を差さないで頂きたいのだ。


「えー!?ほらほら救急車で運ばれたヤツもうビリオン突破だよ?」


「今将来を誓い合った人と一緒にいるんだよ。明日撮影に協力したげるから今日は帰って」


小声で言う。相手のメリットを最大限度まで引き上げた交渉術。これでもう帰ってくれるだろう。


「えー!!?きこえな~~い!!」


逆効果だった。


「どうしたのマッキー」


「え。えっと。お手伝いしてる友達が押しかけてきてさ」


「東雲君のお嫁さん候補一目見たいなぁ~?」


ドアを閉めようとするが、凄い勢いで阻止してくるし、わけわかんないこと叫ばれてるし。


「あがってもらったら」


「ダメでしょ!二人の時間だし!」


「それに、私も動画の続き見たいし」


ツキコモリさんそこでリスナーアピールしちゃう?もしかしてガッツリ見てらしたのかな?あんなことやこんなこともバッチリ?…ゲロ吐きそう。


「おじゃましまーっす」


お互いの自己紹介が終わり、僕とツキコモリさんの馴れ初めを語って、配達した京都王将の大盛天津炒飯が届いて、それからインタビューを受けてた。最初から語ってゆくと夜も更けて、寿司やピザやドーナツやら京都王将が再び配達される事になった。地獄に落ちたくだりを語るところまでやってくると。玄関のチャイムが鳴った。僕が玄関を出ると。


「呼びましたぁ?」


ビッキーがいた。無駄にひらひらの超高そうなドレスを着込んでる。


「遅いって」


軽口を叩かれたので軽口で叩き返す。下手にどうこう取りつくろうよりも、全部ちゃんと説明した方が良さそうだし。メッチャ笑顔で手を振りながら入ってくる。僕もメッチャ笑顔で対応した。ファーストキスをするならば今日だろうと思ってた。幸せ家族計画の第一歩が海の藻屑と化した。


「…死傷者が発生するようなことは自重してね」


「それマッキー次第じゃないですかぁ」


「それだと僕が傷つくんですけど」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ