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月の救世主

巨大な広場に隣接する女王は高らかに勝利を宣言し、広場の民衆は彼女に呼応して叫ぶ。幾憶もの生命がモニターから見て取れた。月の深層世界は、一つの世界を確立させていた。彼らは天を仰いでいる。僕の名前を知らないはずなのに、呼ばれている気がする。彼らの熱狂の大渦は僕。何億もの生命の歓声が、僕の心に響いていた。


「ちょっと考えるからさっきみたいに穴を作って繋げないでね」


「はぁい」


何て言おうか。救世主っぽい事を言って…。バットマン。そう。バットマン。でもバットマンは超能力を持ってないのだ。どっちかって言うとスーパーマンなんだけど、スーパーマンのああいう、ザ・ハリウッド!みたいなアメリカです!みたいな勢いはちょっと…。


「…」


「マジ絶対止めてよ…」


ビッキーの目つきが変わったので一応言っておく。決して押すなよ押すなよ!みたいな事じゃあない。


「…」


「絶対だからね…」


瞬時に僕の真下に穴が見えた。


「じゃあレディゴ」


突然大広場に落とされた。真下には…。モニターには映ってなかった場所にも、広がるように人、ヒト、ひとがいた。


「…」


大聖堂なのかお城なのかは分からない。山ほど大きな大聖堂には、統一された服を着た人々が部屋から僕を見つめている。巨大な深層世界は、途方も無く広げれられた空間だった。コロニーのような巨大なマンションみたいな建物群も遥か遠くに見える。クーロン城は今はもうないけど、そういう場所から命の匂いがしている。


「皆さん」


拡声器の音が想像の七倍ぐらいの大きさに驚いた。誰もが顔をあげ、僕を見ている。


「危機は去りまりました」


栄光と勝利を誰もが見つめるような顔をしている。


「終末の黙示録は、未来永劫訪れる事はありません!」


あれ?ひょっとしてさっき僕噛みました?ヤバイ。さっそく馬脚を現わしてしまったぞ…。でも大丈夫。こういうのは勢いでどうとでもなんとかなる。なんとかしてみせる。


「天界の侵攻者を侵食した異世界の文明も、未来永劫も訪れる事は無いでしょう。約束します。私が…。彼らに証明してあげたのです。人間の強さを」


世界が大きく息吹を取り戻した感覚がしてる。長い夜が今、終わり告げたのだ。


「安心と安全の世界がやってきたのです。…私からは以上です」


カッコよくマントを翻したところで。


「…」


喜びの声が僕の身体を突き抜けてった。何百万、何億かもしれない。彼らの心の中にある僕を想う気持ちで、不思議な気持ちになった。全身に鳥肌が立ち、生えている翼の神経すらもびりびりと感じて凍り付くような心持。これが、かつてないほどの感謝というものなのか。魂に刻みつけられたような、永遠の刻印が僕の心に刻まれた。これ以上ない、かつてないほどのピークを感じた。前人未踏の場所に立っていた。なっていた。


「…」


思ってる以上に、感じた以上に、僕は、とてつもないものになってしまったのだと。改めて感じた。








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