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月に君臨するモノ

脳髄から神経が脊髄に走るように、そこから手足を伝って濃厚な魔力が体外から超高密度で覆い尽くしてる。まるでたっぷり疲れた後に入浴剤たっぷりのひたひたお風呂でどっぷりやってるみたいだ。気分も、丁度そんな感じ。全身の毛穴という毛穴から20万を超える魔力が循環するオーラを突き抜けて世界を覆い尽くす。人生を歩いてく日常を進めるのは、まずなによりも先に意志がくるものだと思ってたのだけれども、どうやら意志の裏側には無意識の部分も大きく占めるらしく、僕の魂は、僕の望みを叶えるために動き出そうとしていた。


「…」


僕は何が望みなのかが分からない。結局のところ何がしたいのか。夥しい巨人の兵器を殲滅して、今の僕は間違いなくこれ以上無く、ハイになっている。脳髄の構造が変貌し、それはやっぱり心にも影響してるし、だからといって。わけがわからない動き方をしてる僕自身の行動が不思議に思えた。月の内部を丸ごと造り替えようとしている。これは本能か。性教育を受けてない人間が子孫を作るような。脳髄の構造を理解してないのに勝手に機能を果たしてくれてたりだとか、頼んでも無いのにちゃんと律儀に動き続けてくれる心臓とか。それと同じような事なのだろうか。王国。永遠の夢。永遠の夢想。


「…そうじゃないだろ」


人間の幸せは、そういうものだけじゃない。何かしてあげようという気持ちだって十分大切だ。そこには計算も打算も無い、純粋な奉仕の精神。そう。僕にまるで欠けてた感情が沸き起こった。お父さんとお母さんは僕を残して仕事や趣味に走ってる。きっと、そうだ。キャッチボールとかやってみたかったし、もっと、家族の時間を作れれば良かったなと思う。


「…」


全てが出来る状態で、どんな願いでも果たせる瞬間で、結局のところ、父親の肩ぐらい揉んであげたいなぁとか考えてる僕は、やっぱり、ぶっ壊れてるのだろう。


「このままの勢いで、相手の次元に乗り込んで根絶やしにするのは…。…止めておこうか」


続きはまた今度あったらその時やればいい。


「…」


暗黒の世界になっていた。光源の無い、何もない、大体何もない空間だ。この地下には息づく脈動するマナを感じるけど、煤だらけになった、真っ黒な灰で覆われた何もかもが焼けて燃えた世界はもうどこにも無くなった。強いて言うなら僕の中か。暗闇の世界で、一見虚無で怖い何もない世界に見えるけども、実際はちゃんと月面内部としての空間がある事は認識できてる。視覚に頼らない空間認識能力は機能している。完璧に、把握出来ている。


「残党狩りでもやるか…」


月面内部の地表の部位、どれぐらいの層があるのか分からないけど、全部消滅させれば、話は分かり易くなってくるかな。そんな事を考えてると、地表から飛行船のようなものが浮かんで出てきた。周囲の空間に亀裂が出来てる。空間を破って出てきたのか。話が早くて助かるけど、こういう時ビッキーの支配する能力があれば、もっと効率よく浄化の手助けが出来るんだと思う。


「ビッキー見てる?」


一瞬、青ざめた。頭が動いた。もし今この状況でビッキーの応答が無ければ、最悪地獄の王様がビッキーを殺してる可能性がある。一人にさせたのはまずかったか。


「ご苦労様」


僕の横に口だけ出てきてそう言われた。


「横着せずに出てきて手伝って」


「私は指針は出すけど直接の手助けはやらない主義なの。だって神様が誰かに何かしてあげたら、それってとっても神様らしくないじゃない。それなら何もすべきじゃない」


なるほどと思った。ちょっといらっときたけど。


「そっちは平気?地獄王は?」


「地獄にとざされている魂を解放するために戻りました。永遠の浄化、巡らせるために忘却の海へと還すんだって」


意味が分かるようで分からない。ノリと勢いで納得していい問題じゃないんだけど。仕事は山積みだ。なんだかんだいって、結局のところ僕はビッキーを信用してんだなぁって思う。


「了承したらそれでいいさ」


そして避けた空間は閉じていってそこから見えてたであろう口はもうなくなった。


「まぁ…神様がやたらめったらに活躍しまくるギリシャ神話とかなら、それはそれでもう、混沌だからね…。それぐらいで丁度良いのかも」


標準を合わせられた。また血と肉だけになるのはもうこりごりなので、大きく避ける。


「今の僕を、核や超電磁砲なんかで殺せるつもりになってる相手に…。なんか悪いな」


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