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天界の玉座に座るモノ

誰も居ない巨大な宮殿の内部へと進入する。


「大理石で作られた台座に据えられた彫刻なんて見ると、ギリシャを思い出しますねぇ」


「宮殿の外観や内装は幾度か替えられたのではないかな」


「どうしてです?」


「神の人格は幾度か無造作に変更されていた。ある時は、癇癪持ちで、時折慈悲深く。酷い時になると、洪水で人類を滅亡させたりもしてたな」


ビッキーと地獄王はそう言って笑って談笑してる。


「ぜんっぜん笑えないんだけど」


僕だけガチの真顔である。こいつらぶっ壊れてるんじゃないか。まぁまともでいられるはずもないし、僕の人格もきっとのんびりできる環境にあったことも関係あるだろう。ビッキーは大空に住まう超貴族だし、地獄王はやっぱり天使であり悪魔なのだから。


「…」


よく考えると、これまで僕も結構やれた方だよねって思う。


「ここか」


突き当りの大きな扉を開く。


「…」


深海に居るような、青と薄紫が混ざったような不思議な空間が広がっていた。


「なんだここ…」


「…」


「ほう」


段差があって、玉座がある。すぐ終わる事を、すぐに済まそうと思う。そう時間をかけるべき事じゃない。


「ラスボス前ってのに、妙に落ち着くような…」


微かに踏切のかんかんという音が聞こえた気がした。懐かしさが込み上げてきた。


「なんだこれ…」


深海の底、微かに届く何かの光を目指して歩くと、そこには。


「…」


「…」


玉座で、赤ん坊が寝息を立てて眠っていた。


「赤ん坊の見た、瞼も無いような、目玉も無いような、それで見たぼんやりとした、人類全てが見てきたはずの光景で、誰もが忘れてしまった光景…」


「なるほど。そういうことか。赤ん坊をどかして、誰かがそこに座ればいい。それで主人核は変更される」


「空席にしたり、破壊すれば?」


「君は全知全能が誰かの手に委ねられる危険性を考えられないのか?」


「じゃあ黙示録の六回目でしたか。人類滅亡の終止符はこの子が打ったと?」


「おそらく前任者のシナリオ通りに動いてるのかもしれない。現在の月の惨事は知ってるか?」


「知ってます…」


「最悪だろう?一つの世界の終幕なんて、むごたらしいものなんだよ」


「赤ん坊が神様って…」


ありえないし、そもそもシステムにしろ、こういう事態は避けるべきではないのか?


「あくまでも、主人格に過ぎない。そもそも人間自体、人間にとって都合の良い人間であるべきとされるだけなのだから。もっと違っていたら、人類の発展はもっと混沌としていただろうね」


「とりあえずっと」


ビッキーは赤子を玉座から拾い上げると、そこに座った。


「あ」


「えっ」


そうすると赤ん坊は勢い良く泣き出した。


「おーよちよち…」


玉座の間が、深海の底のような風景から、ぼろぼろと崩れていき、やがては宮殿自体が消えてなくなって玉座だけが残った。



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