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02

 

 王宮の敷地の一画に騎士団本部がある。


 騎士団本部は、頑丈さを追求しながらも無骨にならないように計算され尽くした建物である。

 間取りや構造は一見だけでは把握できないように複雑であり、国防の重要機密を扱う部署であるため、区画ごとに役職で厳しい立ち入り制限がかけられている。

 建物全体を把握しているのは上層部の極一握りの者のみ。

 退団時は終生秘密を守るため、魔術を以て誓約させられる。


 そんな騎士団本部の最奥の一角に、騎士団の幹部が勢揃いしていた。

 普段は交替で職務に当たるため、幹部が一堂に集まることはない。書類や伝聞では済まされない重要な会議の時だけである。


 王立騎士団は、国王を総長として三名の副長、十二の師団で構成されている。副長は四の師団を束ね、以下師団長、隊長、班長が置かれ、日夜国内外の脅威から国を守る国防の要である。


 副長は、筆頭が国王の叔父、次いで公爵家当主、そして侯爵家子息であり王妃の兄が任命されている。


 一の師団には六の隊があり、隊には二十四の班がある。


 幹部と呼ばれるのは隊長からである。

 通常は隊長会議を行い、隊長が輪番で師団長会議に参加し、隊長会議の報告を行う。

 師団長会議の結果も同様に副長会議へ上げられ、重要案件は総長である国王へ奏上される。


 そこへ全員が参加しての会議である。

 国の猛者(もさ)が放つ殺気にも似たオーラが充満し、新米隊長なんかは気を失いそうなくらい緊張していた。


 総長である国王が口火を切る。


「我が国を守る茨の盾よ。諸君らの働きにより薔薇たる国民たちは、憂いなく美しく咲いていることを誇るが良い。西の国では黒の森が溢れる予言がなされ、魔物への対策が急ぎ取られている。我が国は物資を先行して送っているが、この大陸全体の危機として捉え、我が国から三個師団、魔物討伐に西の国へ出征させる。その間、国に仇なす輩を懐に入れないため、この度の会議となる。疑わしきは徹底した調査を。間諜や裏切りには制裁を」


 ザッ。


 全員が右手を左胸に掲げ、騎士の敬礼をする。


 国王が返礼し席に着いた後、全員着席した。


 幹部全員が参加しての議題。


 それは、裏切り者の炙り出しである。


 かと言っても既に調査はほぼ済んでおり、幹部は全員「白」。数名の騎士と従騎士候補生が調査対象に上がっており、筆頭師団長の第一師団長から報告が行われた。


「……では、以上の者は来週から始まる従騎士候補生の野営にて最終確認を行い、間諜であること、又は情報漏洩などの裏切りが確定した場合はその場で処分とします。異議のある者は沈黙を。賛同する者は敬礼を」


 副長以下全員が敬礼するのを確認した後、国王は一人の男を呼んだ。


「ジーク・ファーレンハイト」


「はっ、ここに」


 副長席から男が進み出た。


「第九師団、第十一師団、第十二師団を率いて西の国へ出征せよ。彼の国と共闘し、魔物たちを黒の森に追い返してくるが良い。出発は従騎士候補生の野営訓練後。副長間で人事を詰めておくように」


「御意」


 国王はジークの敬礼に返礼して退場した。


 師団ごとの連絡事項の後に解散となった場だが、副長三名は残って会議を続けた。


 王の叔父、バルツァー公爵家当主、エリック・バルツァー。


 クラウゼベルガー公爵家当主、オリヴァー・クラウゼベルガー。


 武の名門、ファーレンハイト侯爵家次男、ジーク・ファーレンハイト。


 オリヴァーの妻は先王の姫、エリックの妹で、二人は義兄弟である。ジークは王の義兄なので、姻族とはいえ、三人は近しい親戚でもある。


 王家に生まれ、謀略の中を生き抜き、酸いも甘いもバリバリに噛み砕いてきたエリックが率いるのは、第一師団から第四師団。主に王宮警備と外交警備を担当している。


 やりたい放題でやるだけのエリックの後始末を綺麗に行うオリヴァーが率いるのは、第五師団から第八師団。主に王都警備、犯罪捜査を担当している。


 余りある魔力と精度の高い魔術、剣も槍も使いこなし、敵を完膚なきまでに叩き潰す騎士団一の武力を誇るジークが率いるのは、第九師団から第十二師団。主に国境警備、魔物討伐を担当している。


 よく言えば「知略」「調整」「攻撃」のバランスの取れた副長三人。


 ……誰が言ったか「腹黒」「苦労性」「脳筋」三兄弟。


 類は友を呼びつけまくり、副長の特性を生き写したかのようなそれぞれの団員たちから、三人は非常に慕われていた。



読んでくださり、ありがとうございました。


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