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ロズフェード王立騎士団 ~ 従騎士候補生たちの受難 ~  作者: 千東風子


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01


東の国の騎士団に入団した従騎士候補生のお話です。


よろしくお願いいたします。


 

 シュリ・マイヤー、十五歳。

 彼の朝は早い。


 今週は洗濯当番である。

 朝の鶏が鳴く前に起床し、身支度をして自室の掃除を終わらせ、それから班の皆と当番に取りかかる。

 男臭い寝間着と寝具を回収し、昨日出された衣類なども洗濯して干す。百十人分の洗濯量はとてつもない量なので、そこは魔術で時短する。


 洗濯当番二班の他に、寄宿舎の清掃当番と外周部の清掃当番が各二班、馬当番が三班、朝昼夕食当番が各一班、それぞれが週ごとに職務を分担している。

 朝に仕事がない班は、体力錬成などの鍛錬をする事になっている。


 時刻を知らせる王城の鐘が七つ鳴るまでに、各班は仕事を終わらせて食堂の席に着き、皆で朝食となる。


 今日もどこの班も遅れることなく席に着き、一斉に朝食となった。

 遅れる班があると、連帯責任で全員に罰が科される。


 入団当初は鐘までに揃うことがなかった団員たちも、入団して一ヶ月も経てば、遅れる班がある時は手が回せる班が補助に回るなど連携が取れるようになり、入団から五ヶ月が経つ現在では遅れることはなくなった。


 私語もせず食べ終わった食器は各自で洗い、鐘八つの朝の集合に備える。


 こうして、従騎士候補生たちの一日が今日も始まる。





 ここは東の国。


 王都にある王立騎士団の敷地の外れには、従騎士候補生の寄宿舎がある。


 この国の騎士団は、貴族、平民、そして性別を問わず十五歳から入団可能である。


 春と秋の年に二回入団式があり、半年間寄宿舎に住み込み、候補生として従騎士に教えを請い、正式に従騎士となった者が騎士に付き従うことになる。


 従騎士が騎士に叙任されるには最低三年の経験が必要となり、皆が騎士を目指して訓練や職務に励む。


 入団時の年齢は人それぞれで、十五歳で入団した者は、最も早く十八歳のうちに騎士となれる道がある。

 しかしながら、全員が順番に騎士になれる訳でもなく、従騎士のまま退団する者も珍しくはない。


 この秋、入団した従騎士候補生は百二十名。


 十五歳から二十九歳までと年齢も幅広く、侯爵家子息という上位貴族から、平民や外国からの入団者もおり、女性も十名という、例年にない「ごちゃまぜ」の期生と言われている。


 女性といえども男性と同じ扱いを受け、寄宿舎の部屋こそ女性部屋があるが、班は混成で、訓練内容も男女に隔てはなく、貴族と平民も当然に隔てなく扱われる。

 ただし、女性部屋の掃除や洗濯は、女性同士で当番を回しているため、多少は考慮されている。


 一班十名で組まれ、基本的に班替えは行われず、従騎士になるまで団体行動となる。


 通常、従騎士候補生は入団すると、三ヶ月は清掃や食事当番などの雑務を徹底して叩き込まれ、並行して、倒れる者が続出する鬼の体力錬成が行われ、従騎士としての基礎体力をつける。


 次の一ヶ月で従騎士としての仕事を習い、次の一ヶ月で騎士と従騎士と行動を共にし、側で任務を見て仕事を覚えるのである。


 そして最後の一ヶ月は、候補生だけで野営に放り込まれる。


 魔物が蔓延(はびこ)る黒の森の近くに放置され、自分たちだけで一ヶ月生き延びなければならない。


 各班がそれぞれ行動するもよし。班同士が連携するもよし。班の中の役割分担、班同士の連携、指揮を執る者、指揮下に入る者。今ある資器材と人材をもって物事に当たる力を付けさせ、どんな状況でも生き残る意識を持たせるのである。


 この大陸のほぼ中央には、「黒の森」と呼ばれる森がある。


 鬱蒼(うっそう)と木々が生い茂るその森は、人間の常識も力も通用しない何かの力がはたらく不思議の森。


 見たことのない植物、見たことのない動物、そして、人間から「魔物」と呼ばれる生き物が住む森。


 魔物は時折森の外に出てきては人間と戦いになるが、人間も負けてはおらず、森と接した地でも(たくま)しく生きてきた。


 そんな黒の森の周りには七つの国が接している。

 大陸の主要なこの七国は、正式名称はあるものの、森を中心に見た方角にある国、森の東の国と呼ばれ、今ではただ「東の国」と呼ばれるようになっていた。


 この東の国は、その名の通り、黒の森の東に位置する国である。


 大陸でも騎士団がその強さで名を馳せる一方、薔薇の産地としても有名な国でもある。


 剛胆にして優雅。


 様々な分野で秀でた騎士を擁するこの騎士団に憧れ、自国のみならず外国からも一旗揚げようと入団者が集まってくる。


 人が集まれば、当然色々な思惑を持った者が入り込み易くなる。


 騎士団は広く門戸を開くと同時に、間諜(スパイ)対策を徹底して行っていた。


 自国民だからといって対策の手は緩めない。ましてや外国人に対する対策は更に厳しいものであった。



読んでくださり、ありがとうございました。


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