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起きたら24時を越えていた。
周りを見回してみると当然暗くて部屋の中は見えづらい。
「でも、そこにいるのは分かるよ、香子ちゃん」
ベッドに突っ伏すようにして寝ている彼女。
風邪を引かれても嫌だけど、さすがにこの布団をかけるのは申し訳ない。寝汗だって相当かいたし臭いだろうし。
起こさないようにしてとりあえず1階へ。
「あ、もう大丈夫なの?」
「うん、お姉ちゃんたちのおかげ。お姉ちゃんはなにしてたの?」
「深夜のバラエティ番組を見ていたのよ」
「おぉ――あ、香子ちゃんを運んであげてくれないかな? あのままだと風邪を引いちゃうから」
本当はもう2度と離れたくないくらいだけど、それとこれとは話が別だ。風邪を引かれたらそれこそ一緒にいられなくなる。もう嫌なんだ、ほぼまる1日一緒にいられないとかそういう状況に陥ってしまうことが。
「『今日は絶対に離れないわよ』って言っていたから恐らく無理よ。そんなに寝かせたいなら敷布団でも敷いてあげなさい」
「あ、そうだね、そうしてくる」
部屋に戻り押入れからお客さん用(ほぼ香子ちゃん用)を引き出し敷いてから彼女を起こす。
「香子ちゃん、そっちで寝ましょうねー」
「んー……」
眠気が勝っているのかいつもみたいに怒ることはせず大人しく彼女は寝転がってくれた。お布団をちゃんとかけてあげて、私はその横に寝転ぶ。
「いつもありがとう」
お母さんがしてくれたみたいにお腹を優しくトントントン。彼女も心なしか安心したような笑みを浮かべているような気がする。
「好きだよ」
寝ようとして、でも寝られなくて色々とごちゃごちゃ考えていた時に分かった。会いたすぎて一緒にいたすぎて、もうこれは友達としての領域を越えていると。
「このまま起きなかったらキスしちゃおうかな」
顔に顔を近づける。口を開くとちょっと乱暴な感じになっちゃう香子ちゃんだけど、寝ている時の彼女は本当に整った顔で同性でも美しいと感じてしまう。単純に私が好きすぎるというのもあるのかもしれないけど。
近づけ近づけ近づけて、もう触れる――となっても彼女は起きない。怒られてもいいやということでその唇を奪ってしまった。
「――っ!? あ、あんたなにしてっ……」
そりゃあ驚くだろう。気づいたら目の前に他人の顔があるんだから。しかも真夜中にだ、幽霊さんより質が悪いかもしれない。
「ごめんね、寝顔が可愛くてキスしちゃった」
「はぁ!? え、あんたってそういう人間だったっけ?」
「うーん、悪いのは香子ちゃんかな。だって無防備に寝てるんだもん」
今度はきちんと自分も布団に入って寝転ぶ。
「ほら寝よ?」
「え? ああうん……」
彼女も大人しく寝転んでくれたけど、逆の方を向かれてしまってちょっと悲しい気持ちに。
「あんたどういうつもり? 本当に寝顔がその、か、可愛かったからってだけの理由でしたわけ?」
「そんなわけないじゃん。香子ちゃんが変に勘違いして距離を作ったからだよ」
「当てつけってこと?」
「そうじゃなくてっ、寂しかったの! 保健室に行った後泣いたんだから! あっという間に帰っちゃうしさ!」
「……それだけ?」
これだけ聞いてくるということは残念ながら聞いてくれてはいなかったということだ。それは凄い寂しいことだし、このまま終わらせたら自己満足になってしまう。
「好きだからに決まってるでしょ! 私がいつでもこんなことをすると思う!?」
「……ほんと?」
「当たり前だよっ、こういう嘘はつかな――ごほっごほっ、も゛う゛……うぇぇ……喉が痛い」
彼女はそこでこちらを向いて――目から零れた水滴を拭っていた。だけど拭いきれないのも当然あって、月の明かりに照らされた涙がキラキラ輝いて美しいとすら思った。
「……ごめんいちごぉ……」
「ああもう……泣き虫なんだから」
「あ、あんただってそうじゃんか~……」
この通り泣くと昔の香子ちゃんみたいになる。
このままにしておくとあれだから頭を撫でておいた。
「もうばか……元はと言えば苺があんなことをするからぁ……」
「勝手に勘違いしたのは香子でしょ~」
「勘違いしてしまうような状況を作り出した苺が悪いっ」
「とりあえず寝て、続きは明日――起きてから話そ?」
「うん……手、繋いでて」
「分かったから。おやすみ」
「うん……」
あぁもう、普段だったら私が彼女に甘える立場なのに。甘やかす方は似合わないのに。
それでも彼女の温もりに触れられているだけで安心できる。
だから、あれだけ寝ていたというのに完全に寝られるまでに時間はかからなかった。
「(なーにやってんのよあたしはぁ!?)」
起きてから30分、あたしはずっと頭を抱えていた。
昨日、あたしは彼女の前で相当恥ずかしいところを晒してしまったことを後悔している。
幸いだったのはまだ体調が治りきったわけではなかったのか彼女がスースー寝ていること。
美紀は仕事ということでもう出ていることはスマホで確認済みだ。
「つかこいつもこいつよ、なにも寝ている時にしなくてもいいじゃない……」
普通に言ってくれればあたしの方からしてあげたというのに……好きだって言葉もあたしから言おうと思っていたのに。色々な意味で彼女のせいで台無しだった。
「仕返してやろうかしら……」
「んん……はれ、香子起きたんだ」
「まあね、30分前には起きたわ」
「お姉ちゃんは……あ、お仕事に行ってるよねもう」
「そうね」
良かった、起きた瞬間に顔が赤くなったりなんかしなくて。
目の前で恥ずかしがられたらもっとぐちゃぐちゃにしてあげたくなるから。
「体調は?」
「大丈夫! 香子は大丈夫?」
「当たり前じゃない、あんたと違って弱くな――」
「それならこうしてもいいよね、えいっ!」
膨らみはないけど柔らかい感触があたしに伝わる。
あ、だけどいい匂いというわけではなく、ちょっと汗の匂いが強くなっている気がする。
しかし、それはそれでいい匂いで……なんとなく強く嗅いでしまったのが悪かった。
「ちょっ、ひゃっ!? な、なにしてるのっ」
汗を拭うかのように首筋を舐めていた。
「あっ、なにしてんのあたしは……」
自分でも驚いた、ガッツリ変態すぎてやばい。
「ほ、本当だよっ、そういえば臭くない?」
「だ、大丈夫よ」
「えぇ……その言い方だと絶対に臭いじゃん……」
「大丈夫、思わず舐めたくなるくらい魅力的な匂いだわ」
「や、やめてぇ……って、そうじゃなくてさ、まだ答え、聞かせてもらってないんだけど」
そういえばそうだ、あたしは改めて考えてみなくても告白されたんだった。
「好きに決まってるじゃない、嫉妬した時点で分かっているでしょ?」
「そうだけど、ちゃんと言って」
「好きよ、苺のことが」
「うんっ、私も香子のこと好き! ――だけどお風呂に行ってくるね」
「あたしも行くわ、昨日入ってないし」
側にいたってなにができるというわけではないけど少しでも離れたくなかったからああした。トイレはまあ漏らすわけにはいかないので仕方ない。
「え~……そういえば香子ちゃん……すんすん、うわくさっ!?」
「そういうあんたも匂い強いわよ。あたしはちょっとそれでイカれちゃったけど」
「は、入ろうか」
「そうね」
その後はふたりでお風呂に入ってのんびりした。
臭いと言われたことがとてもむかついたので真っ赤にさせておいた。
「うぅ……辱めを受けた」
「なに言ってんのよ、ちゃんと洗ってあげただけじゃない」
「そうだけどさあ、ほくろの場所とかいちいち言わなくていいんだよ!」
「ふふふ、あんたも案外気にするのね」
あたしより小さいけど、あたしよりよっぽど乙女らしい彼女に謝罪をしつつ、かわりとばかりにマッサージをしておいたのだった。
読んでくれてありがとう。




