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禁術

学園の西練は医療設備になっている。激しい実戦訓練で怪我人が続出する場合もあるからだ。西練二階長い廊下奥から二番目の個室に二人の姿があった。ベッドに横たわり、全身を包帯巻きにされているクロ、それを看病しているシーナだ。結論からいえば、勝負の結末は引き分けだったクロの斬撃はマヤに致命的な、ダメージを与えることができなかった。


しかも、逆上したマヤは溶岩巨人(ラブァゴーラム)による最大攻撃魔術灼熱の咆哮(ラブァルウォー)を放ち、訓練施設は炎の海とかし、見学者に怪我人が出る始末だ。私はなんとか防御魔術を使い防いだが、至近距離にいたクロは完全に防ぐことが出来なかった。大火傷を重症を負ったクロは先ほど治療が終わったところだ。


「でも、なんで訓練施設の魔術陣が発動しなかったんだろう?」


通常、傷を負えば魔力を使い魔術陣が自動的に発動し傷を治す、魔力が低下し過ぎると場外へ強制転移するが、クロ場合そのどちらも起こらなかった。教師も異常事態と思ったのか、試合続行不可と判断し、最後に残ったマヤと私がいることで勝敗は引き分けとなった。


「………ここは?」

「クロさん良かったです、目が覚めて」


クロは意識を取り戻したことにシーナは安堵する


「ここは保険室の個室です、クロさんはマヤの魔術を受けて大怪我をしたんです。覚えてますか?」


クロは意識がハッキリしてきたのか、ゆっくりと上体を起こし何かを思い出すように頭を抱える。


「勝負の結果はどうなった」


私は今までの経緯と試合の結果をクロに話した。


「すまなかったな勝手に勝負を引き受けのに、こんな結果になってしまって」


不思議と不満はなかった、結果的には引き分けになってしまったが、あそこまでマヤを追い詰められたことは今まで無かった。それに一緒チームを組んでクロと絆のようなものが出来た気がした。


「シーナとお呼び下さいクロさん、気にしないでください元々は巻き込んでしまったこちらが悪いのです。」

「そうか」


クロは無表情で何を考えているか良くわからないが喜んでいるように見えた。


「それでお前は何か用があるのか」


クロは個室の扉の方を睨み付ける、私には意味が分からなかったが、しばらくすると扉が開きマヤが堂々と部屋に入ってきた。


「お前国で一番強いって言ってた割には弱かったなぁ」


別にクロ自身が言った訳でなく、学園長が言ったのだけどそんな事マヤは気にしない。


「まぁ、あんたのおかげでシーナと勝負出来たし、不慮の事故とは言っても、少しやり過ぎたからな様子を見に来てやった。」


どうやらマヤは心配になって様子を見に来たらしい、偉そうでメチャクチャな事をする子だけど、決して悪い子ではない。


「そうか」


クロは勝負の事も学園長の言った事も全く気にしていない様子だった。


「マヤ……さんだったか、一つだけ聞いていいか?」

「んっなんだ」

「どうしてシーナとの勝負にそんな固執してるんだ」


それは私も気になっていた事だ、貴族院にいた頃も何度も何度も、勝負を挑まれた。向こうは天才魔術師で私は攻撃を当てられない欠陥魔術師なのに……


「そ、そんな事お前に教える必要はない」


逆切れした口調でマヤは答えるが、表情はまるで恋する乙女の様に恥ずかしがっている様だった。この数年間で初めて見る表情だった。


「答えたくないなら無理に答えなくていい、禁術を使用してまで勝負に勝ちたい理由が気になっただけだ」

空気が凍りつく、先程までと違いマヤが激情に顔を歪めていく。私も状況が分からなくて頭の中が真っ白になる。


「テメィっ、今何て言った」

「何故怒っている?」


クロは何故マヤが怒っているのか、理解できない様子だった。だがその様子はマヤの火に油を注いだ。


「この!」


マヤはクロに攻撃魔術を使用しようとする、その事に気がついた私は咄嗟に鎮静魔術を使用する。


「ミューレ」


青色の光が降り注ぎ、マヤに冷静さを取り戻させる。少し落ち着いたのか、マヤはこちらを睨みつける。

こんなところで攻撃魔術を使えば、大問題だ。止めてあげたのにそんな睨まないで欲しいものである。


「落ち着いてマヤちゃん」

「っ……でもよ」


マヤが納得できないのも分かる、クロはそれだけのことを言った。だがクロはそんなこと分からないとでも言うように無言でこちらを見詰めている。


「クロさん、マヤちゃんが禁術を使っているとはどういうことですか?」


禁術、各国で禁止された魔術。中には危険な物や非人道的な手段を用いる物もあるといわれている。使用者は罪に問われ最悪の場合死刑もあり得る。そんなものさも、当然に使っていると言われれば、いい気分もしない。


「あの溶岩巨人(ラブァゴーラム)という魔術には、禁術を組み込んでいるだろう?」

クロの発言に対してマヤはまた激情に駆り立てられる。

「そんなわけ……!!」


マヤの周りを青い光が降り注ぐシーナが沈静魔術をもう一度使用したのだ、しかしこのままでは話が進まない、クロはこちらの様子を見てようやく何かを悟ったようだ。


「もしかして、無自覚で使用しているのか?」


ここまで本気で言われると、マヤも冗談では無いこと察したらしい、シーナもクロから真面目な話を聞かざるを得ない。


「意図して使っていないのなら、早めに魔術の改変を行った方が良い」



後日、改めて私達は集まることになった、魔術の改善はそうそう出来るものではない基本的な下級魔術や中級魔術程度なら講義で教えてもらったことがあるので出来ないこともないが、今回は特級魔術だ、学生が手がつけられる案件出はない。クロさんは魔術に詳しい知り合いを訪ると言っていたが、特級魔術を改変できる魔術師など聞いたことがない。


「おい、シーナ」

「あっ、マヤちゃん」


待ち合わせの場所にマヤがやって来た。向かえに行かなければならないと悩んだがそんな必要はなかった。


「あのクロとか言うヤツはどこだ」


来て早々にイライラしている、無理もない昨日あんな事を言われたばかりだまだ、心の整理がついてないのだろう。


「少し遅れてるみたい」


気を張りつめてるマヤと少し気まずい空気の中クロを待つ。しばらくすると、クロが息を切らして待ち合わせの場所にたどり着いた。


「すまない、オリアナスの確認に手間取った。」


どうやら学園長と何かやり取りをしていたらしい。私に少し不安がよぎる、どうもあの学園長に苦手意識を持ってしまったらしい。


「ふん、さっさといくぞこっちも暇じゃないんだ」


マヤは学園長の名前が出ても特に気にしない様子だ、羨ましい。

私達は、クロに付いていく、マヤは終始不満を言っていたが、無事目的地にたどり着く。そこは上位成績優秀者のみが使用できる特別修練室だった。クロとマヤは知らない、ここは怪物級の力を持つ生徒のみ使用できる訓練施設だと。クロは両開きの扉を開く、そこにいたのは、この学園で最強と言われる魔術師だった。

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