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溶岩巨人 後編

シーナ・アゥリビーラは状況に思考が追いついて来た、試合開始の合図直後クロは構えていた剣をベルクリフトの胸に目掛けて投擲したのだ。普通相手の攻撃を防ぎながら距離を積めるのがセオリーだが、その行程を飛ばし不意打ちに近い形で、直接攻撃したのだ。そしてパートナーを失ったことにより、マヤに一瞬隙が生まれその間に距離を積め一撃を与える。おそらくマヤが反撃して私がそれを防ぐことも考慮にいれて………


超短期戦、相手の力量がわからない上でクロが立てた計画だろう、実際マヤをあと一歩のところまで追い詰めた。しかしだてに天才魔術師と呼ばれていない。目の前にあるのは土で出来た半球体のドーム、マヤが最後に放った魔法は土属性の上級魔術、全方位型の完全防御の魔術だ。しかもマヤの魔力で強化されている、生半可な攻撃では破壊できない。クロの拳も土の壁に阻まれている。


「我が身は太陽の炎を宿し、我が身はマロン山の如く気高い、その炎はドルテシア加護を受け、その山はホルシィンの祝福を授からん、我が身を削りしその真名は全ての敵を薙ぎ払わん」


土のドームからマヤが呪文を暗唱している声が聞こえる

まずい!

「クロさん離れて下さい!!」

クロも何かを悟ったのか土のドームから距離をとる。マヤが天才魔術師と呼ばれているのは、高い魔力や高度な技術を持っているからだ。魔術は本来、適切な属性と必要な魔力量、行使するイメージ力、魔力を制御する技術があれば、誰でも行使することが可能だ。だが魔術の段階よってその難易度は跳ね上がる下級魔術は個人に傷を与える程度の魔術、中級魔術は個人に与える影響は下級魔術の比ではなく複数人に影響を与える魔術、上級魔術は集団戦に影響与えることが出来る魔術、さらにその上は一つの都市を破壊可能にする魔術、特級魔術と言われている魔術だ

マヤが天才魔術師と呼ばれているのは、この年で特級魔術を使えるからである。


溶岩巨人(ラブァゴーラム)

地面が揺れ、土のドームが弾け飛ぶ、施設内は、蒸し暑くなり目の前には炎を纏った全長十メートルの岩巨人が現れる。巨人の中心部にマヤが一体化していた。


「こんなに早く切り札を使うとは思わなかったぜ」


この状況は非常にまずい、マヤの特級魔術溶岩巨人(ラブァゴーラム)は攻撃と防御に特化した魔術、攻撃は私の魔術でかろうじて防ぐことが出来る。しかし、防御を突破する方法が今のところないクロの剣もベルクリフトを倒すために、使った為、今手元に無く遠くの地面に突き刺さっている。


「ベルクリフトのバカが瞬殺されたのは予想外だったが、戦いの本番はこれからだ」


巨人の左腕を上げ、クロに向かって振りかざす。


「まずはお前から!!」


ドンォンと巨人の腕が地面に突き刺さっり、砂煙が広がる。あの一撃を食らって無事なものはいないだろう。しかし砂煙の中から人影が飛び出す。シーナはクロがマヤの攻撃を避けたのだと認識した、クロはそのまま巨人の左腕を駆け上りマヤの元へ向かう


「ちっ身体強化魔術か」


マヤはクロが使う魔法が身体能力を強化する身体魔術系だと予測した。ベルクリフトに剣を投擲した時も、今巨人の攻撃を避けた時もクロは普通の人間ではできない動きをしている。だがその行動はあまりに無謀すぎた。


「クロさん無茶です」


マヤと何度も戦っているシーナは溶岩巨人(ラブァゴーラム)の特性よく理解している。


「舐めんなよ」


岩の巨人が纏っていた炎の火力が増し、表面の熱量が爆発的に上がる。シーナは慌ててクロに防御魔術を掛け、クロはシーナの元まで吹き飛ばされる。防御魔術が間に合わ無かったのか服が少し焦げている。


「物理攻撃でマヤの溶岩巨人(ラブァゴーラム)を突破するのは無理です。ここは持久戦に持ち込んで相手のスタミナ切れを待ちましょう」


これまで何人もの魔術師がマヤに挑んだが、誰も溶岩巨人(ラブァゴーラム)にまともな傷を負わせることは出来なっかた。


「このっ」


巨人の拳がシーナとクロに襲いかかる


「ハーリフ」「リーフア」


シーナは二つの魔術を重ねがけし、拳を防ぐ。


「!!」


マヤは表情を焦せらせる、シーナも攻撃を防いで一息つくが、状況だけ見ればマヤの優勢は変わらない。


「緩和魔術と防御魔術を使えるということはアゥリビーラ、君が持っている属性は風と水か?」


魔術は属性によって別々の効果をもたらす、マヤが使っている溶岩巨人(ラブァゴーラム)は火の強化、土の硬質、形成効果が働いている。私が掛けた防御魔術は水の調和と風の抵抗の効果が働いている。


「はいそうです……一応土の属性もありますけど……」


だが、私の使える魔術では、マヤの防御力を越えられない。そもそも攻撃魔術を当てられない。


「なら、あの巨人の表面温度を下げたり、俺を吹き飛ばすことは可能か」


クロには何か考えがあるようだか、シーナは現状であれに対抗出来る方法があるとは思えない


「可能ですけど……今は長期戦に持ち込んでスタミナ切れを待った方が……」

「いや、それはやめた方がいいだろう」


クロは長期戦に持ち込むのは、否定的なようだ、確かに過去マヤと勝負した時、長期戦で挑んだ結果、何度も時間切れで決着がつかなかった。


「わかりました、少しだけ時間を下さい」


悩んだ結果、クロの意見を取り入れる。マヤとの勝負に決着を付けなければならない、そう感じたからだ。クロは防御魔術の範囲から離れ、私から距離を取る。その瞬間を見逃さない、マヤは攻撃の対象をクロに切り替えた。


「何を考えてるのか知らねぇがお前じゃ私を倒せねぇよ」


巨人の腕がクロを叩き潰そうと何度も何度も振りかざす。クロもそれをひたすら避け続ける、マヤの注意が私に向かないのは、私が攻撃魔術を当てられないことを知っているのと、クロが隙ができれば、地面に落ちている石をマヤへ投擲しているからだ、マヤの元に届く前に熱気で石は溶けているが、マヤからすれば鬱陶しいだろう。


「んっなんだ?」


攻撃に夢中になっていたからなのか巨人の周りに一メートルほどの水球が複数浮かんでいることにマヤは今さら気がついた。


「マヤちゃんはたぶん勘違いしてるかもしれないけど、私攻撃魔術が当てられないだけで、使うことは出来るんだよ」

「リベルク」


複数の水球が同時に破裂し、大量の水蒸気を浴びた巨人は纏っていた炎が沈静化され急激に表面温度が低下した。


「今ですクロさん、コウォガ」


シーナが放った攻撃魔術にクロはタイミングを合わせて飛び出す、本来相手を吹き飛ばす為の突風を起こす攻撃魔術だがクロは突風に乗り自身の移動速度を加速させ、自ら弾丸となる。


「なめんなぁ」


マヤは溶岩巨人(ラブァゴーラム)の僅かに残った炎を自身の周りに集め、防御する姿勢を見せる、このまま突っ込んでも素手ではダメージは与えられない。するとどうしたことか、遥か遠くの地面刺さっていた剣がクロの手元に引き寄せられる。もっとも近くにいた、マヤだけは気がつく、クロの手に細い糸のような物が握られていることに……


クロは空中で剣を掴み取り、マヤへ振り下ろした。


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