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始まりの学園

なぜ彼女は自分を庇ったのだろうか?

最初は何が起きたのか理解できなかったが

次第に意識は現実へ引き戻される


血を流し横たわる彼女はか細い声で囁く


「・・・ね・・・ぇ・・・クロ。最後の・・・お願い聞いて・・・くれる?」


冷めていく彼女の体に気づき少年の心は遅れて気づいてしまった。この世で最も失いたくない物を

自分は失ってしまったのだと。


「ァああああああぁッアアアアァァァァァァ!!!!」


少年は少女との約束を決して忘れないと誓った、そしてどんな事をしてもこの約束を守ってみせると…




















〜五年後〜


「はぁ………」


西諸国連合国立メルシーティル学園所属二年生シーナ・アゥリビーラは

ため息を吐いていた、新学期が始まり、学園生活がスタートするからだ。


彼女の所属するメルシーティル学園は複数の国が同盟を結んでいる西諸国連合でも最上位の学園で各国から優秀な人々や亜人が集まる。

彼女も魔術師として隣国ラーゼルスから留学し、勉学では上位の成績を収めている。


だが彼女には魔術師として致命的な欠点を抱えていた。

それは攻撃魔術が当てられないこと。


優秀な成績とは別に実技は全然ダメということでクラスでは少し浮いた存在になっている。

最近では『頭だけはいい魔術師』『落ちた天才』など陰口を言われる始末だ。


だがそれだけなら学園に向かう足どりはここまで重くは無らなかった。

彼女が頭を悩ませている原因は今年から就任する新学園長のことだ。


何でも新しい学園長は実力主義者で講義の内容を実技中心の物へ大きく変更するとの噂が立っている。

元々メルシーティル学園は優秀な若い人材を各国から集め教育し、西諸国連合の戦力強化を目的として創立された。その為思考や宗教、人種、種族など様々な人材が集まるため、元々の国の身分が通用せず自分の価値を証明するのは実力しかないという実力差別の激しい学風だ。


そんな中、学園のトップが実力主義主張の激しい人物と聞けば実力のないシーナからすれば、これからの学園生活が肩身が狭くなるのは必然だった。


「今日の始業式どうなるんだろう…」


そんなことを考えながら不安を抱え迎えた始業式はシーナにとって最悪の結果を生んだ。


「どうも皆さんはじめまして、この度、学園長に就任しましたオリアナスです」


最初は軽い自己紹介だったその後、特別クラスの発足、設備の強化、教師の派遣など、これかの学園生活での方針を演説して挨拶は終りを迎えた。以外に教育熱心な人だなぁという印象だったここまでは……


「最後に転入生を紹介します。」


会場がざわつく、メルシーティル学園は入学するのも難しいが転入するのはさらに難しい、何せ西諸国連合の最新技術がこの学園には集結しているのだ。この学園に一年過ごすだけで、元の国教育三年分は受けられるという話だ。その為転入するのはかなり困難で転入試験の合格率は一割以下だと聞く。

つまり転入出来たと言う事はその人物はかなりの実力者だと言うことになる。


壇上に一人の男が上がる。黒髪で深い紅い瞳はどこか遠くを見ている一見一般の青年と変わらないように見えるがどこか独特の雰囲気がある


「彼はクロ、私の知人でこの学院の教育改革の一環として転入をお願いしました」


その一言で今度は会場に静寂が広がる。それも当然だ知人などとわざわざ言えばコネで転入させたのではないかと生徒全員が疑ったからだ。

かなり実力主義者だと噂されていた新学園長からは信じられない発言だった。

その様子をオリアナスは生徒全体を品定めするように見回し、クロという青年の紹介する


「彼はこの国誰よりも強い人物です皆さんは彼からよく学ぶように………」


そう言ってオリアナスはクロの紹介を終えた。


衝撃的な始業式を終え、掲示板の仮クラス表を見てシーナは教室へ移動する。

新学園長のオリアナスの発言のせいで学園内の空気がピリピリしている。


シーナはクラス中から威嚇するようなまたはこちらを敵視した視線を浴びていた。

正確に言えばシーナの隣に座っているクロという青年が浴びているのだが、

元々人付き合いが得意なわけではない、自分が注目されてなくてもこれだけの視線に晒されれば緊張してしまう。


どうか無事に今日が終わりますように………


シーナはそう祈ったが神には聞き届けてもらえなかった

学園の今後流れや変更になった校則の説明など午前中に終え午後は講義もなく帰宅となった。新しく学園長になったオリアナスの改革の対応に学園側が追いついていないらしいと、説明していた先生が言っていた。


早く帰ろうそう思っていたシーナに突然大きな声で呼び止められる。



「シーナ・アゥリビーラ!!!」



まさかの事態に体が硬直した、新学園長の件や一年間割と平穏に過ごせていたせいでこの子存在を忘れていた。

教室の入り口から緑のロングウェーブの背低い少女がこちらに向かってきている。



「勝負しろ!!」



マヤ・ライゼンス私より一つ年下の天才魔術師と呼ばれている少女。

彼女はなぜか昔から私に魔術決闘を仕掛けてくる。昔は上手に避けいたが、今年は彼女が入学してくる可能性をすっかり失念していた。



「マヤちゃん何度も言ってるけどあなたと私じゃ勝負にならないでしょ」



なにせ私は攻撃魔法が当てられない、成績だけ良い子なんて呼ばれてるのだから



「私の入学式の成績は序列五位だぞ!!相手にとっては不足はないだろ」



この子私の話聞いてるの?毎回の事だけどイマイチ話が噛み合ってない気がする、何だかんだ勝負することになるんだろうなぁ……

しかも、序列五位って確か新入生は毎年二百人くらい入学するはず、その中で五番目なんて実力だけは確かだ。


一応マヤには自分が攻撃魔法が苦手なことで勝負は意味がないこを説明した、というか仮クラスとはいえ、周囲に見られなが自分の欠点を説明するのはかなり恥ずかしい。マヤはそんなこと気にもせず



「なら二対二(ダブルス)にすればいいだろ」



二対二(ダブルス)とは魔術決闘をチーム形式で行う団体戦のことだ。この場合各チーム二人ずつ別れて対決する。確かにそれなら攻撃魔法が苦手な私でも、防御や支援に集中して攻撃は味方に任せればいい、私と組んでくれる相手がいる前提の話だけど………


マヤはマヤでこれ以上は譲らないぞ、と嫌々な顔をしてる。そんなんに嫌なら勝負自体をやめればいいのに、かと言って組む相手がいないと言ってもマヤは納得しないし、下手をしたら周りを巻き込みそう。

マヤならそこら辺の人にこいつと組めとか言って勝負仕掛けて来そうだし。

それに今この場で友達いない宣言をするのは、恥ずかしすぎるから何として避けたい、どうしよう…


「そこまでにしたらどうだ」


私を庇うようにマヤとの間に立った人物、クロと呼ばれた転入生だ。


「彼女が困っているだろう」

「……誰だお前」


マヤはいっそう不機嫌な顔になった。

当然だろうマヤは貴族でいえば上流階級の人間で他人から指摘を受けることは少ない。貴族院の頃も魔術師として周りからちやほやされている。


「他人にそう無理強いするものではない」

「関係ないやつは黙ってろ」


マヤが段々イラついているのが分かる。クロの方は無表情で受け答えしているので何を考えているのかわからない。でも私を庇ってくれて、とても優しい人なのではないかという印象は持てた。


「じゃあなにかテメェがシーナの変わりにこの私と勝負でもしてくれるのか?」

「……それで気がすむなら」


このままじゃまずい!

シーナは慌てて二人の仲裁に入る。


「マヤちゃん知らない人を巻き込むのはダメだって……えっとクロさんその庇ってくれてありがとうございます。でも知らない人を巻き込むのは申し訳ないので、あの私が勝負を受ければいい話ですから……」


緊張からか言葉がぎこちなくなってしまった。結局勝負を受ける流れになってしまうが他人を巻き込んでしまうのは良くない。他人に押し付けるより苦手分野でも自分でやった方が後悔が少ないと思った。


「クロ?あぁお前新しい学園長が言ってたこの国で一番強いとかぬかしてたヤツか」


思い出したかのようにマヤが発言した後、不機嫌な顔からものすごい機嫌のいい顔になった、ものすごい嫌な予感がする。


「それだったら話が早いおまえとシーナでチームを組め、二人共叩き潰してやる」


嫌な予感は的中した、他人を巻き込まない様にしたはずなのに、なぜかクロも一緒に、マヤのターゲットにされてしまった。原因はオリアナスの国で一番強い宣言だ。


だからマヤちゃん他人を巻き込むのはダメだって」


私は必死に止めようとするも、マヤは一度決めたら頑として譲らない性格だ、しっかり否定しないとこのまま流されて勝負することになるだろ。


「君は勝負はしたくないんじゃないのか?」


クロと呼ばれた青年に声をかけらたとき、シーナは心臓の鼓動が高鳴った、この人に自分の本心を見抜かれているような気がしたからだ。


「わ、私は昔から何回もされていることですから、マヤがこのクラスに来たときからこうなる予感はしてました。でもクロさんを巻き込むのは申し訳ないのでマヤは私が説得しますからどうぞ気にしないで下さい」


クロが言った様に本当は勝負なんてしたくない、でもマヤは絶対譲らないことは昔からの付き合いでなんとなく分かる。ならばせめて個人戦になるよう誘導する私を庇ってくれたクロをどうにか巻き込ないようにしたい


クロはしばらく考え混むよう床に視線を落とし、マヤの前に立つ


「こちらの条件を飲むなら勝負してもいい」


クロさん!?クロの発言でシーナの考えとは全く別の方向で話が進んでいくマヤはマヤで聞こうという姿勢でクロの言葉に耳を傾ける。


「俺たちのチームが君を倒せば、アゥリビーラさんには今後一切勝負を申し出ない」

「逆に俺たちのチームを君が倒せば、俺が何でも言うことを聞こう」


マヤは不適な笑みを浮かべ


「私が勝ったら三年間パシりな」


私が唖然としている間に勝負することが決まってしまった。















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