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ふと

 旅行に行こうと思った。



 行き先を決めず、何をするかも決めず、行き当たりばったりの旅行に行こうと。



 理由は特にない。

 強いて言うなら、ふと昔のことを思い出したのだ。


 特段仲が良かった訳でもない、昔一度だけ同じクラスになったことがあるという、ただそれだけの関係の元同級生に突然誘われて、気分次第な旅行に出かけた時のことを。


 あの時は長野だった。

 確か、一泊二日の旅行だったと思う。

 二日目に飽きたというだけの理由で私は帰ったけれど、私を旅行に誘った張本人は私が帰った後も旅行を続けていた筈だ。


 何日ほど旅行を続け、どれだけの場所へ行ったのかは分からない。

 自分を好きなうちに死にたいと言っていた元同級生の、死ぬ前の思い出作りの旅。


 あの旅行ったきり、私を旅行に誘った元同級生と連絡は取り合っていないから、あの元同級生がどうなったのかは分からない。

 噂話すら聞かないのだから、案外普通に生きているのかもしれない。

 正直、私はあの元同級生に微塵も興味がないから、あの元同級生が今どうなっていようと、どうでも良い。


 ただ、あの旅行のことを稀にふと思い出すことがある。

 良い意味でも悪い意味でもなく、本当にただ、あんなことがあったなぁって程度に。


 いつもなら思い出して直ぐに忘れるのだけれど、今回は違った。

 ふと。本当にふと、旅行に行こうと思ったのだ。


「財布よし。着替えよし。本もよし。充電器も入れたし、イヤホンも歯ブラシも化粧ポーチも入れた。あぁ……いや、荷物は少ない方が良いから本は要らないや」


 リュックサックの中身を確認して、準備を進める。


 あれもよし、これもよし。あ、モバイルバッテリーを忘れていた。

 着替えは三日分入れていたけれど、初日に着ていく服以外に一日分があればなんとかなるだろう。

 季節は春だし、汗もかかないだろうし、上手く回せるだろう。


 旅行は良いものだ。

 旅行をしている時間だけでなく、旅行の準備をしているも特別に感じられるから。

 旅行が終わった後の時間は何とも言えないけれど、取り巻く時間の多くが素敵になる。


 だから、私は旅行が好きか嫌いかで言えば、好きな方だ。


「まぁ……いっか」


 ある程度の準備が整い、自分に言い聞かせるように独り言ちる。

 旅行の準備はどこかで妥協が必要だ。

 時間制限なり飽きなり、準備を強制終了させる要因がなければ、いつまで経っても準備は終わらない。


 私の妥協点は、リュックサックに必要と思えるもの全てを詰め込んで、やっぱり要らないかもと思うもの全てを抜き取ったその地点だった。


 普段使いするモノではない大きめのリュックサックは、背負ってみると案外軽かった。

 それほどまでにリュックサックの大きさに不釣り合いなほど少量の荷物しか詰め込んでいないのだが、あまり重くても歩いていて肩が痛くなるだけだし、軽いくらいがちょうど良い。


 何より、私はAmazonで買ったこの黒いリュックサック以外に、旅行用に使える鞄を持っていないのだから仕方がない。


「じゃあ、行きますか」


 自分ひとりしかいない部屋で自分に向けてそういうと、私は冷蔵庫の上に置いていた部屋の鍵を手に取り、部屋の明かりを消した。

 


大垣駅周辺、散策小旅行編の開始です。

大垣駅周辺をぶらぶらしたり、旧友と遊んだりするお話です。

少し長めのお話で、このお話までが文学フリマで頒布する第一巻の収録内容になります。


文学フリマで買えるものには、このお話でちらりと触れている、元同級生との長野旅行のお話が収録されています。

令和6年のゴールデンウィークの文学フリマから販売開始しますので、良ければ探しに来てください。

※余った分は何かしらの手段で通販するかもしれないです。

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