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二十四 ホテル駐車場②

「いいから立てよ。みっともねぇな。」


「うるせぇよ。俺も落ち込んでいるんだよ。俺は何をやっても駄目だねって。野良猫が子供産んだからって助けようとしたら、子猫は俺に脅えた母猫に噛み殺されちゃうし、ちびを守ろうと俺の家に引き込んだら、俺の身代わりに殺されかけたでしょう。」


「あのトラックはクロを狙ったものじゃないのか?」


「うん。違う。鑑識の宮辺主任様が刑事顔負けの報告書を出してくれたよ。ちびが葉山に言った通りにさ、ちびのIPと署のパソコンを使って田口がやったのは、ちびの写真を不特定多数が見る大型掲示板に張っただけ。そのIPアドレスと画像を使ってブログを作ったのが、稲垣組。山中は仮想通貨で稼げるようなITヤクザがいたでしょう。そいつの仕業だってさ。借金のある奴を金村殺しの犯人に仕立てる手際の良さは、やっぱりヤクザだねって。そんで林葉はね、ちびでなく俺を殺そうとしていたの。」


「林葉はクロを名指ししていなかったか?」


「うん。ちびの偽ブログを知っていた彼はね、実際にゲームショウでちびに会って、ちびとブログ主は違うだろうって愛するブルーローズ様の為に警告しただけ。」


「で、お前にどうつながるんだ。」


「田口が今田という男と付き合っていたでしょう。今田の本業は風俗スカウト。林葉の姪がスカウトされて、残念な目に遭って自殺している。覚えている?高校の同級生だったって言うんだけど。」


「ぜんぜん。」


「そう。俺も同級生だと聞いてアルバム開いて、いたなぁって感じだからいいんだけどさ。何度か整形して俺の顔になっていたらしい。田口は今田と一緒にいたから巻き込まれて殺されたのだろうね。そして、テレビで流された数年前の今田の写真を見た林葉は、自分が復讐どころかただの人殺しでしかないと思い込んだ。では、俺がまだ殺せていなかったと気付いた林葉はどうするか。現場にいた俺の後を付け、俺の家を特定し、そして、憎き俺に向かって一直線にダイブ、だ。」


 楊は再び大きなため息を長々と出すと、しゃがんだ股ぐらを覗き込む勢いで頭をがくりと下げてしまった。


「すごいな。鑑識の解析だけでそこまでわかるなんてさ。――嘘だろ。」


「嘘じゃないよ。宮っちは林葉の尋問までしちゃったって話だよ。髙が本部から引き抜くだけあるよ。ちょー有能。俺は本当にお飾りのいらない奴じゃん。」


「それでいじけて署にも帰らずにこんな所でふらふらしていたのか。」


「え、違うって。言ったじゃん。警護しているって。東署の俺達は完全に本部と本庁の合同班に今回の仕事を取られちゃってね。それなのに、ホテルの室内やら現場検証しているからって、本部の人達に仕事させるためにここらを警戒しろって命令なの。そんで有能な部下に代わって、無能な俺が警備監督責任者という貧乏くじ引いているだけなの。」


「警察車両が見えないぞ。」


 楊は今度はため息ではなく、よっこらしょと掛け声を上げながら老人のように立ち上がった。しゃがみすぎて足が痺れて痛くなっただけだろう。


「ホテルの地下駐車場に隠すように置いてある。指名手配があの橋場家の四男だろ。」


「飛び降りたのは、やっぱり峰雄じゃないのか。」


「やっぱりって、お前が知っていることを教えてもらいたいね。俺達は死体が見つからないからさ、消えたホテルオーナーを被疑者に見立てているだけだよ。三か所連続放火の際に死んだ緑丘フジが峰雄の実母でしょう。十年以上前に起きた子供取り換え事件の被害者の一人が峰雄らしいんだけどさ、彼はもともと橋場家の養子なんだよ。」

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