22、公爵領
夜会
デート?
何と到着早々、夜会が開かれた。
公爵領の貴族や公爵領を拠点とする商人など有力者が集まってきていた。
このアクア王国では国が公爵・侯爵・辺境伯・伯爵といった上位貴族に領地を与える。
上位貴族はその領地内の街や村を子爵や男爵や騎士爵などの貴族に任せるという構図になっている。
国の運営を行う領地を持たない上位貴族もいる。
国の直轄地を代官として任せられている上位貴族もいる。
国の様々な役所や軍に勤めている貴族もいるが子爵や男爵の中には無役の者もいる。
特に無役の者は上位貴族に取り入ったり商売で何とかしたりするために必死だ。
夜会のような顔を繋げられる場は彼らにとって大事な場になっている。
だから有力貴族は夜会を開かないといけない。
辺境伯とはなかなか会うことができないので多くの貴族が集まってきた。
私は辺境伯家の友人の魔法使いとして紹介された。
「タカシ様は独身ですか?婚約者はいますか?」
すごい勢いて私の個人情報を詮索してくる。
「その辺は秘密です」
「秘密がある男性って素敵ですわ」
「そうね、こんな優良物件は久しぶりだわ」
そんなことまで口に出すものではありません。
様々な人たちから縁談を紹介され、独身女性からはアタックされてしまった。
シズクさんとエアルさんの視線が怖いのですが。
「「ギルティ」」
何か言っているよ。
聴覚はいいからね。
『異議あり』と言いたいよ。
フレイア王女は今回の夜会には出席しなかった。
夜会に混乱が生じる心配があったための配慮だ。
彼女の旅は一部の人たちしか知らないことだ。
早めに彼女の立ち位置をアクア国王やミリア国王と話し合わないといけないな。
到着早々に夜会が開かれたのは到着が1日遅れたことと滞在が2泊だという事が影響している。
忙しいが仕方はない。
順番が逆になってしまったが夜会を中座して別室で公爵に挨拶をすることになった。
現公爵はメイル辺境伯の兄である。
前公爵はメイル辺境伯の父親だ。
当然王国の中でもトップクラスの有力者だ。
これからの事も考えて有力者を味方につけておくことは大事だと思う。
うまく協力関係を築きたい。
地球ではその点を失敗したように感じている。
またフレイア王女が同行している事情も直接伝えておきたい。
応接室に行くと現公爵と前公爵が待っていた。
私はフレイア王女とともにこの会談に臨んでいる。
前公爵は王弟でもある。
私も少し緊張している。
メイル辺境伯の一家は今日の夜会の主役なので抜けてくることは出来ない。
メイル辺境伯とも相談して私の事情をできるだけ説明することにしている。
簡単な話はメイル辺境伯が現公爵にしてくれているはずだ。
「お会いいただきありがとうございます」
「いやこちらこそタカシ殿に会ってもらってありがたく思っています。それから公爵領での一件ありがとうございました」
「いえ、できることをしたまでです」
侯爵は現公爵の弟で前公爵の息子だからね。
お礼を言われるのは当たり前か。
「私たちはタカシ殿がその力を世のために活かしてくれることを期待しています。それはミリア王国も一緒ですよね」
「はい、先日お会いした時もお伝えしたようにミリア王国もそう考えています」
フレイア王女は私に会う前に公爵たちと会って旅をしている理由を話していたようだ。
私の知らないことって結構あるようだ。
その後、辺境伯から伝えてある内容を補足説明してこの世界で私が生活していく上での協力を取り付けた。
こちらも色々と協力しなければいけないようだけど。
14日目
折角この街に滞在するのだから街の様子を見て来たい。
公爵領の領都という事もあって活気がある街だ。
農業生産が盛んで王都の食糧庫の役割を担っているだけではなく交易の中継点としても栄えている。
魔道具の工房も多くあるが今日はパスだ。
何故なら麗しい女性が3名同行しているからだ。
シズク、エアル、フレイア。
昨日機嫌が悪かったシズクとエアルも一緒に街に出かけようと誘ったら機嫌を直してくれた。
実はフレイアからの助言に従っただけなのだけど・・・。
「まずは服を見たいです。今の流行をチェックしないと。メイルシティーに最新の流行の情報が入るのは少し遅いから」
「そうね。ここの街は最新モードの発信地だから今日のミッションは重要よ」
「それでは行きましょう。服の後はスイーツだから急がないと」
女三人寄れば姦しい。
私は今日生きて公爵邸に戻れるのだろうか?
服屋7軒、カフェ3軒をはしごして公爵邸に帰り着いたのは夕方でした。
まだまだ女三人は元気です。
今日の買い物はすごい量になっています。
全て服ですけど。
支払いは私のポケットマネーです。
白金貨50枚は使いましたね。
この前の報酬もあるからいいですけど・・・・。
「タカシ殿すまないね」
辺境伯に謝られた。
「大丈夫です。気にしないでください」
三人とも元気になってよかった。
フレイアも今日は生き生きとしている。
でも心の奥はわからないけど。
でも疲れたよ。
生命力が大きく削れられたようだ。
今日は早く休ませてもらおう。
お休みなさい。
15日目
疲れている。
昨日の疲れが抜けない。
せめての救いは今日の旅が公爵領内にある温泉地までだということかな。
温泉が楽しみだ。
疲れに効く温泉だというので期待ができる。
領都からは休憩も含めて五時間で着いた。
・・・・・・温泉地だ。
風景が修善寺温泉に似ているのは気のせいだろうか。
川沿いに温泉宿が立ち並び、川べりに「どんどこの湯」という昔の偉い人が掘り当てたというありがたい露天風呂がある。
ここは「ハコネ」というらしい。
宿もほとんどが和風だ。
今日も高級旅館が貸し切りになっていた。
で・・・・・・。
メイル辺境伯と一緒に男湯に入っている。
「いい湯だね」
「ええ、そうですね」
「本当はここで数日滞在したいのだが一泊しかできない。申しわけない」
「いいえ、気にしないでください。今回は早く王都に行った方がいいのですよね」
「そういう事だ。ここが気に入ったならまたここへ招待するよ」
「ありがとうございます」
「ところでうちの娘たちとはどうなんだ」
「はあ」
「二人は君に惚れている。父親としては娘が離れてしまうのは残念だけど幸せになってもらいたい。娘をもらってくれないかね」
「考えさせていただきます」
「それからフレイア王女との結婚も考えなくてはならないと思う。そうなればアクア王国の王女も娶らないとバランスが悪くなるだろう」
「そうなのですか?」
「そういうものなのだよ。王都に着いたらすぐにその話があると思った方がいいだろう」
「よく考えさせていただきます」
王都に向かうのが嫌になりそうだ。
夕食のは和食だった。
少し前まで憂鬱な気分が美味しい和食で払拭された。
私って結構単純なのかな?
16日目
朝普通に朝食を済ませ、普通に出発する。
のどかな風景の中を王都に向かって進む。
そして公爵領最後の街。
明日からは王国の直轄地に入る。
今日はずーっと昨日辺境伯に言われたことを考えていた。
こちらでの安定を求めるのか、それとも地球に帰るのか。
地球の情報も毎日得ている。
地球のサオリさんとも頻繁に連絡を取り合っている。
まだ帰れる段階だということも判っている。
この世界にしろ地球にしろ権力に守られていた方が安全だ。
しかし権力に利用されるのは嫌だ。
幸運にもこちらで会った人たちは権力を持っていても私は嫌がることを強いて来ない。
その点は感謝している。
しかし王族から妻を娶ったりしたらその後どうなるか心配だ。
辺境伯は私のような絶対強者なら世界を支配しようと考えてもおかしくないと言っていた。
そのような面倒は嫌だよ。
すぐには結論が出てこないが仕方はないだろう。
正直言って魔法の研究や武術の訓練より厄介だな。
17日目
国の直轄地に入った。
監視されているのを感じる。
国として私を見定めようという事か。
何事もなく今日の宿泊地に到着した。
街には代官がいるらしいが私との接触は禁止されているようだ。
18日目
昨日と同じだ。
王都が近づいて街と街との間隔が近くなってきた。
街によって役割が違うようだ。
分業させているのかな?
軍事都市、工業都市、商業都市、鉱山都市、居住都市・・・ベットタウンか?
街道の交通量も増え、車線も片側四車線になってきた。
今日宿泊する町は街道を往来する旅人に宿を提供することに特化した街だった。
19日目
さあ、今日は王都到着だ。
今日は時間に余裕がある。
六時に出発して十二時に王都に到着した。
王都に入る門は東西南北に存在する。
それぞれに一般門、貴族門、上位貴族門がある。
貴族門は許可書があれば平民でも利用可能だ。
上位貴族門を通り、メイル辺境伯の王都邸に到着した。
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