1、プロローグ
新しく書いてみました。
よろしくお願いします。
1、プロローグ
白い空、青い雲。
いや違った。
青い空、白い空。
草原に吹く心地よい風。。。。。
・・・・・・・・・・・・はあ~。
状況が今の状況でなければ素晴らしいシチュエーションのだが。
私、酢厨気タカシはこれからの事を考えて頭を悩ましている。
突然の逃走。予定外の逃走。
計画のない逃走。
それが今の状況だ。
こんな状況になったのは何故なのか?
改めて考えてみた。
ーーーーーーーーーーーーーー
喫茶店のマスターで科学者でもあるタカシは知る人ぞ知る魔術研究者という顔も持つ。
タカシは科学者であるが科学で説明できないことを否定するようなことしなかった。
実際に目の前で起きた現象は多くの人たちがファンタジーとして信じない魔術というものであっても現実として受け止めていた。
そして魔術の仕組みについてもコツコツと研究した。
お陰で多くの発見をすることができた。
その一方で魔術には未知の部分も多くあることを理解している。
よく考えると魔術と科学は似ていると思うのだが。
発達した科学と魔術は区別できない。
そんな中、ひょんなことから未知の素粒子を発見することができた。
タカシは魔術の研究中に見つけたその粒子に魔法粒子という名前を付けた。
魔法粒子はそれまで見つかっているどの粒子よりも質量が小さい。
そして魔術師や陰陽師や妖術師はこの魔法粒子を操ることによって事象の改変を行っていることまでも見出すことができた。
これは画期的な発見だった。
普通だったら鼻高々に世間に発表するだろう。
タカシはそのような事はしなかった。
今、魔法粒子の発見を発表すれば大騒ぎになったりタカシ自身に危害が加えられる可能性がある。
この地球は魔術や魔法は否定されている世界だ。
異端的なものは拒否される。
それだけではない。
この研究成果は魔術を使える人間を増やせる可能性があるとともに悪用する人間を増やす可能性もある。
受け皿は揃っていない。
実際にタカシも魔術を使えるようになった。
タカシと魔術は相性がよかった。
タカシは新しい魔術を生み出すこともできた。
社会の混乱を恐れたタカシは発見を発表することなく研究を続けた。
この世界においては魔術は今まで通り、ごく一部の人間が使えるものでよいと考えた。
さて、魔術を使える人間は使えない人間とどこが違うのか?
それも研究によって判ってきた。
魔術を使える人間は細胞中に魔法粒子をコントロールする物質を持つ。
これが魔術を使える人間になれる第一関門だ。
これは遺伝的に発現する形質と言える。
しかし、魔術を使える人たちに提供してもらったDNAのどの塩基配列が魔法粒子をコントロールする物質のものかは特定できなかった。
魔法粒子をコントロールする物質自体は単離することができなかった。
コントロールする物質をタカシは魔法物質と名付けた。
そして精神活動がこの細胞中の魔法物質を支配できると魔術を発動することができることも判った。
精神活動による魔法物質の支配は覚醒とその後の訓練によるようだ。
残念ながら覚醒の条件はよくわからなかった。
だがこれが魔術を使える人間になれる第2関門と言える。
この部分はいまだに研究中だ。
全く科学的に解明できなかった。
だからこれは科学でなく魔術なのだろう。
さらに魔術の発動にはコンピュータプログラムのような命令式が必要なことも判った。
これらの研究のお陰でタカシは様々な新しい魔術を開発することができた。
特に重要な研究はエネルギーの支配だろう。
この分野の事象の変更は魔術の得意とする分野だった。
エネルギー変換を支配することによって簡単に光を生み出したり物質を合成・分解したりできた。
また支配したエネルギーで物質を構成する粒子の運動をコントロールすることによって温度を支配することもできる。
便利な事に物体の運動エネルギーを変化させることもできてしまった。
次に増殖や分化を含めた細胞の活動を支配・操作することで治癒魔術や身体強化も使えるようになった。
これは大変に役に立つ。
次元を支配して空間魔術も開発した。
ある地点とある地点を繋ぐ転移門を作れるようになった。
空間魔術を応用して次元収納魔術も使えるようになった。
欲しかったんだこのような能力!
生物や物品の持つ魔法粒子やエネルギーなどの観測から鑑定魔術も編み出した。
身体強化やエネルギー支配の複合応用技と言える。
更に物品に魔術発動を付与した様々な魔術道具も作りだした。
何でもありの魔術師が誕生していたのだがタカシ自身はその時にその事に気がついていなかった。
実はタカシにとって魔術の研究は趣味の一つに過ぎなかったのだ。
タカシはその日も美味しいコーヒーを喫茶店の常連さんに淹れていた。
一日4時間のみ開店している喫茶店で。
しかし、タカシの能力や研究を利用したい者やタカシを邪魔と考える者がいた。
彼らが暗躍したために対処が必要になった。
のんびりしていたために気づくのが遅れ、対処が限られてしまった。
タカシの周囲へ被害が及ぶのを避けるためにはタカシがいなくなるしかない。
結果として次元を繋げた異世界へと逃走することになってしまった。
お読みいただきありがとうございました。
評価や感想をいただけると幸いです。