表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

俺が本当にゴミでクズでただのビビりなだけの話

作者: 鏡 色蓮

初投稿作品です。

プロットも構想もなにも用意せず勢いとノリだけで書き上げた自己満足オ○ニー短編小説です。


生暖かい目で見守ってください。

金曜日、それは世間において花金やプレミアムフライデーなどと呼ばれ世のサラリーマンたちが一週間の終わり祝し早く帰宅したり、同僚と酒の席を設けたりする雀の涙ほどに特別な日である。


俺もサラリーマンの一人として、待ち望んだ今日が訪れることを素直に喜んでいる。


ただそれだけではない。


今日は高校時代に所属していた部活のメンバーとの久々の飲み会なのである。


懐かしい面子に会えることは嬉しいことであるし、お酒を飲むことも好きだ。


そのために今日は気合で仕事を終わらせ定時退社を決め込み、そのままコンビニへ直行。


おにぎりをひとつ購入し即座に口に含むとウコン入りの飲料で流し込む。


味は最悪だがこれは空腹時の飲酒による悪酔い防止のためだ。


お酒は飲んでも飲まれるな、これは上司から頂いた数少ない教訓のひとつである。




それから電車で2駅移動し地元の市でもっとも有名な繁華街へやってきた。


老若男女構わず人が集まって何かするといえばここしかない。


むしろここ以外に飲んだり遊んだりできるところが無いというのが実情ではあるが。


まぁそれはどうでもいいことで、今は先に到着していると連絡のあった友人を探すことが先決だ。


あらかじめ伝えられていた集合場所でその友人を探していると不意に肩をたたかれた。


「よう、久しぶり」


突然声をかけられ内心では超びっくりしたが見知った顔であったことに安堵し、返事をした。


「久しぶりだな、怜二」


返事を受けニカっと笑う男は小学校から付き合いのある悪友だった。


「もう待ち合わせの15分前だってのに誰も来なくて不安だったぜ」


「まだ15分前だろ。いつからいるんだよ」


「1時‬間前からだ!」


「馬鹿なの?」


昔からなので気にしないが。


「馬鹿で結構、遅刻するよかマシだ」


「一理あるような気もする」


「だろ?遅刻していいのはパンを咥えて走る美少女女子高生だけだ」


「一理ありすぎる」


「それで街角でぶつかってだな、「ちょっと!このパンどうしてくれんのよ!今すぐ這い蹲って口で拾いなさい!そうしたら踏んであげる!」って言われんだよ。最高だろ?」


「お前の性癖は業が深いな」


などと、その後もたわいない話をしているうちにちらほらと懐かしい顔が現れ、全員揃ったようなので声をかけた。


「じゃあ行くか」


「いや待ってくれ、もうひとり来るはずなんだ」


誰かを探すように怜二は辺りを見回している。


「もうひとりって誰だ?」


「あ、いたいた。こっちだー!」


もう一人なんていたかと俺が訝しんでいる間、怜二が呼んでいるであろう人物に身振り手振りで存在をアピールしている。


身なりからして女性のようだが、なんだかあの後ろ姿には見覚えがあるような気がする。


そしてようやく気付いたか、その女性が振り向いた瞬間に俺は戦慄した。


なぜ、彼女がここに来ている。

確かに俺たちの部活の関係者で間違いはないが、あれ以来飲み会に顔を出すことはなかったはずだ。


そうやって思考がショートしている間に彼女がこちらへやってきてしまっていた。


「久しぶり、怜二くん。それと…幸次くん」


幸次と呼ばれ、反射的に顔を背けてしまっていた俺に対し麻衣も気まずそうに目を逸らす。

そんな様子を気にするそぶりもなく怜二は声を張る。


「久しぶりだな麻衣ちゃん!とりあえず予約の時間も迫ってるし、店に行こうぜ」


「うん」


怜二の一声でぞろぞろを動き出す。

突然のショックに俺は動けずにいた。


「ほら幸次、行くぞ」


怜二はさも当然かのように俺の腕を引く。


「おい怜二、麻衣が来るだなんて聞いてないぞ」


「言ってないからな」


「なんで言わねえんだよ」


「言ったら幸次来ないだろ」


「当たり前だ、いまさらどの面さげて会おうっていうんだ」


「そんなことだろうと思った」


「何が言いたい」


「まぁ、とりあえず店着いてからな?」


「帰る」


そう言って踵を返す。

すると怜二が立ちふさがった。


「ダメだダメだ。今帰られたら今日集まった意味がなくなる」


「うるせぇ、帰るったら帰る」


怜二を押しのけて駅へ向かおうとすると、部活の仲間たちに囲まれた。


「お前ら、全員グルか」


「逃がすわけにはいかない。非常に不本意ではあるが、これは我らが天使のご意向である」


「何言ってんだ」


「この野郎!我らが天使をその魔手にかけておきながら俺たちが放っておくと思っているのか!」


天使とはおそらく麻衣のことだろう。

筋肉畑に咲いた一輪の天使だとか、まるで神でも崇めるかのように訳のわからないことをこいつらは当時から言っていた。


だから俺は麻衣との関係を怜二にしか話していなかった。


「怜二、喋りやがったな」


「協力者が多いにこしたことはないだろう?」


にやりと笑った怜二を横目に俺は居酒屋に連行されていった。

抵抗しようとも拘束された腕はびくともしない。


それもそのはず、そもそも俺たちはアーチェリー部で見た目や競技の印象とは裏腹にひたすら筋肉を鍛えているスポーツだ。


弓を引いて矢を放つより身体づくりのために筋トレをしている時間のほうが遙かに多い。


そんなわけで、為すすべなく連行されるしかなかった。


ところで俺と麻衣の関係だが、彼女は俺の元カノ…いや元婚約者というべきだろう。


これである程度の事情は察してくれたかもしれないが、包み隠さず白状するならば、その彼女とは俺のほうからプロポーズし婚約に至るも俺から婚約破棄したのだ。

つまりはただひたすらに顔を合わせづらいのだ。


今までこういった部活のメンバーとの飲み会の席は何度か設けられてきたが彼女は俺と別れて以降一度も顔を出さなかったのだ。


なぜ、いきなり来るのだろうか。

いや違う。さっき筋肉どもは道を阻んだときに天使のご意向だと言っていた。


つまり今回の飲み会は麻衣によって企画されたものだということか?

なんのために?復讐するためか?


ピンとこないまま引きずられているとどうやら店についたようだ。


店員に案内されそれぞれ席に着く。


「おい」


怜二を睨みつける。


「なんだよ」


「なんだよじゃねぇ、なんだこの席の配置は」


俺が座っているのはいわゆるお誕生日席だ。

その両隣に怜二と麻衣が向い合せ、そのまま並びで筋肉たちだ。


「なんかおかしいか?」


「まるで俺が被告人として証言台にでも立っているかのようだ」


「当たらずも遠からずってところじゃねぇか?知らんけど」


勘弁してくれ。


「とりあえず乾杯だ。さぁお前ら、今日は大罪人を裁くための宴会だ。飲んで飲ませて洗いざらい吐かせるぞ!乾杯!」


「「「「乾杯ィィィィィ!!!」」」」


怜二の言葉にツッコミを入れる間もなく、号令とともに筋肉どもが割れんばかりの声を上げ騒ぎ始める。


その様子に店員さんも思わず怯えてしまっていた。


無理もない。筋肉の集団が己が本能のままに叫んでいる様はさながら猛獣のようである。


怖い、とても怖い。

最早見慣れた光景ではあるのだが、今回に限っては俺も怖い。


何が怖いって、奴らの視線が常に俺と麻衣に向いており、まるで親の仇でも見ているかのような眼光が常に向けられているからだ。


そのまましばらく飲み会は続き、その間は絶え間なく筋肉どもの視線に晒され続けていた。


かといって筋肉どもには何をされるでもなく、隣に座る怜二は何も不自然なことなど無いと言わんばかりに黙々とつまみを食らっているし、ちびちびと酒を飲む麻衣には気まずさを感じるばかりだ。


なんだ、なんなんだこの状況は。

お前らはいったい何がしたい。


あんな物騒な音頭をとっておきながらこの仕打ち、ある意味一番堪えるわ。


「なぁ怜二、この状況いったい何なの?怖いんだけど」


そう尋ねると怜二は料理から麻衣に一瞬視線を向けたかと思うとこう言った。


「まぁ俺らから言えることは何もないから、もうちょっと待ってな」


「意味わかんねぇ」


ここまでくればなんとなく予想はつく。

今日のこの会は麻衣と俺のために企画され、


怜二が麻衣の出方を窺っているということはそもそも今回は麻衣から何かのアクションがあって集められたものであり、


大体の目的は察していても詳しいところまでは怜二自身知らないのかもしれない。


正直付き合っていられない。

今すぐにでも帰りたいが退路は筋肉どもが塞いでいるし、トイレを装って帰宅を試みようにも俺が席を立つと必ず誰かがついてくる。


こうも徹底して帰らせない姿勢をとられると堪ったもんじゃない。


「ねぇ、幸次くん…」


声の主は麻衣だった。

ついにきたか。


「…なんだよ」


「あのね、話したいことがあるの」


「…俺にはねぇよ」


「それでも、聞いてもらうよ。そのために今日集まってもらったんだから」


どうやらこの強行策は麻衣によって望まれたものらしい。

筋肉たちが必死になるわけだ。


「私ね、幸次くんと結婚したいの」


…俺は幻聴が聞こえるくらい追い詰められているらしい。


「ごめん、よく聞き取れなかったみたいだ」


「私ね、幸次くんと結婚したいの」


幻聴ではなかったようだ。


「冗談にしてはタチが悪いな」


「冗談なんかじゃないよ、私は幸次くんと結婚するの」


願望がひとつステップアップして決定事項化してしまっている。


「本気ならなおさらだ。お前は俺に何をされたか忘れたのか?」


そうだ、俺は麻衣にひどいことをしたのだ。

理由を話さずに一方的に婚約を破棄したんだぞ。


「忘れてない。でも私は婚約破棄を了承した覚えはないよ」


そういって麻衣はおもむろに自分の左手を掲げた。

その薬指には指輪がその存在をアピールしていた。


「なんでまだつけてるんだよ」


「さっきも言ったよ。私には、幸次くんとの婚約を破棄した覚えはないって」


「いやそうは言ってもあのとき電話で…」


言いかけてから気付いた。

そうだ、あのときの電話で麻衣はずっと泣いていて一言も発してはいなかったのではないか?


「この半年ずっと考えてたんだよ?どうして私は幸次くんに振られちゃったのかなって」


「喧嘩すらしたことなかったのになにがいけなかったんだろうとか。

なにか気に障ることしちゃったんじゃないかなとか。

私の知らないところでずっと我慢してくれてたことがあったんじゃないかとか!」


「……」


言えない。彼女に悪いところなどひとつもなかったのだとか。


「もしかしたら浮気してて私にはもう飽きちゃったのかなとか…」


「…それだけはねぇよ」


「うん、知ってるよ。怜二くんに聞いたから」


怜二の口に門は立てられないようだ。


「だからね、やっぱり私に理由があるんだと思った。でも理由もわからないまま幸次くんを諦めるのは私には無理だった」


「だから…教えろと?」


「教えてくれないならそれでもいい。けど教えてくれないならこの婚約指輪は一生外さない」


なんて脅迫だ。こんなの一生付きまといますと言われているようなものだ。


「教えたら外すのか?」


「納得できたらね」


なるほど、つまりは納得できるような理由をでっち上げればいいわけだ。


「あぁ、嘘ついたら一生外さないから」


…退路は断たれたようである。

ちなみに麻衣に俺の嘘は通じない。

どうやら俺に嘘をつくときにしてしまう仕草があるらしく、麻衣はそれを見逃さない。


「…ここで話さないといけないのか」


周りには怜二も筋肉たちもいる。

特に筋肉どもはさっきから麻衣がひとこと話すたびに顔が修羅のごとき様相になっていっている。


これ以上麻衣に爆弾を落とさせるわけにはいかない。

しかも嘘がつけないとなると俺の情けない理由をこいつらに聞かれることになる。


それもいただけない。

この場で烈火のごとく怒られるだろうし、この先そのネタでイジリ続けられるに違いない。


「ここ以外なら…そうだね、ラ○ホならいいよ」


それはあれだ、落としてはいけない核ミサイルだ。

見ろ、筋肉どもが修羅の顔のまま固まっちゃって仁王像みたいになっている。

怜二は腹抱えて転げまわってるし。


「・・・馬鹿なの?死ぬの?」


そう言うと麻衣は頬をふくらませた。


「他だと逃げられそうだし、既成事実作っちゃえばこっちのもんだし」


とんでもないこと言ってるよ?女の子がそういうこと言っていいのは漫画やアニメの世界だけなんだよ?

あまりにも突飛なこと言うもんだからこっちのキャラが崩壊してきちゃってるよ。


返答に困っているうちに麻衣は筋肉どもに指示を出して俺を拘束させていた。


「じゃあ、行こうか」


え、嘘だろ?

お前がパパになるんだよ的な展開なの!?


そういうのは漫画やアニメから出てきたらダメなんだよ!?


そこからズルズルと引きずられながら店外へ連れて行かれ、

麻衣率いる百鬼夜行軍の生贄となっていったのだ。


ちなみに会計は怜二がきちんと済ませていた。







悟りを啓いて現実から逃避していると、いつのまにかホテルの一室にまで連れてこられていた。


直後筋肉どもに両手足を縛り上げられた俺は、さながらまな板の上の魚のように、

部屋の中央に配置されたダブルベッドの中央に放置された。


怜二や筋肉どもには麻衣が礼を言い、丁重にお帰り頂いていた。


筋肉どもには妬み嫉みの視線が向けられると思っていたが、奴らは無表情だった。


すごいな、人間って感情の限界を超えると表情を失うんだな。


怜二は終始ニヤケ顔で物事の行く末を楽しんでいるようだった。

クソ野郎め。


麻衣と俺の二人きりになったこの空間には、えもいわれぬ気まずさが漂っていた。


「シャワー・・・浴びてくるね」


頬を赤らめた麻衣はそう言ってバスルームへと消えた。


漏れ聞こえる水音を聞きながら思った。

…ここまできたらもう正直に白状するしかないのだろうか。


俺だって鬼や悪魔の類ではない。

女の子にここまでさせておいてチキンを発揮させるほど無神経でもない。


じゃあなぜ婚約破棄したのかと言われれば専ら謝ることしかできないが・・・



覚悟を決めよう。

麻衣にすべて打ち明けて、それから謝ろう。

それで麻衣には次の出会いに向かってもらうのだ。


麻衣を待つ間、俺は考えをまとめることにした。



シャワーを済ませ戻ってきた麻衣に話があると言って、とりあえず座ってもらった。


そこで俺は全てを曝け出した。


まず婚約までしたにも関わらず大手企業の社長令嬢との結婚に怖気づいてしまったということ。


それに麻衣のお父さん滅茶苦茶怖い人だし、今更ごめんなさいやっぱり娘さんと結婚させてくださいだなんて口が裂けても言えないと思っていること。


誤解をしてほしくないのだが、俺は別に麻衣と結婚したくないわけではないこと。


半年たってから何言ってんだと思うかも知れないけれど、本心だ。


かわいくて器量も良く、特に欠点など見つからないが強いて言うなら胸が少し小さいことくらいか、

そんな彼女のことは今でも好きだし、俺にはもったいないとさえ思っていること。


だからこそ、一度過ちを犯した俺は彼女に寄り添っていい資格などとうに失っているのだ。


見た目も能力も並でチキンで初めて会った人に第一印象で何考えてるかわからないとか言われる俺なんぞより、

イケメンで人望もあってそれこそ物語の主人公みたいなやつと結ばれるべきなのだ。


これ以上彼女の人生に俺という路傍の石が立ちふさがってはいけない。

だから婚約破棄した。


そう思っていることを、麻衣にありのまま伝えた。


その後微動だにしない麻衣に不安を覚えた。


「ま、麻衣?」


麻衣は一瞬ピクついたかと思うとおもむろに俺に覆いかぶさってきた。


「ま、まままま麻衣サン!」


その状態で麻衣は身に纏ったバスローブがするりとはだけさせていく。


し!静まれマイサン!


そのまま言葉も無いままに唇を塞がれた俺は、彼女を拒むこともできずに為されるがままに夜を過ごしたのだった。


どうせなら、恥ずかしいのでいたす前にシャワーを浴びさせて欲しかった。








翌朝‬


カーテンから差し込む光が目に刺さった。


いつの間に眠っていたのだろうか、昨夜の記憶があまり無い。

縛られていたはずの身体は自由になっており、傍らには麻衣が眠っていた。


俺はいまだ眠る麻衣をそのままに、お金だけ置いてその場を去った。


彼女にどんな顔を向ければいいのか、わからなかったのだ。





それから一ヵ月後、俺は怜二と居酒屋に来ていた。


「あれからどうなってんだ?ヤったんだろ?」


「―っ!!」


口に含んだ酒を吹いてしまった。

ド直球な質問にもほどがある。


「キタネェな」


「オメーのせいだよこの野郎」


デリカシーってものが欠如していやがる。

零れた酒を拭きながらも話を続けた。


「麻衣とはどうにもなっていない。というかあの日以来連絡すら取っていない」


「んだそりゃ」


そう、飲み会の日以降麻衣からはなんの音沙汰もない。

一度婚約破棄したんだ、こちらからする義理も無い。


「しょっぱいなぁ、なんかよ」


「なんかってなんだよ」


「いや俺にもわかんねぇけどよ、折角あそこまでお膳立てしたのにさぁ?ヤるだけヤってハイ終わりなんてよ」


「うるせぇ俺が遊び人みたいな言い方するんじゃねぇ」


「結果だけ見りゃそうだろうがよぉ」


「やめろ、今の俺に正論は刺さりすぎる」


正直あの日のことはあまり覚えていないのだが、朝起きたときの状況でなんとなく、やっちまったなこれと色々察するしかなかった。


俺だって何にも思うところが無いわけでもない。


関係を断ったとはいえ、曲がりなりにも好きな人と一夜を過ごしたのだ。


その後のことも気にならないわけは無い。


そんな風に思っていると、机においていたスマホが震えた。


「でなくていいのか?」


怜二がそう言うので誰からの着信かだけ確認しようと画面を確認するとそこには、

『麻衣』の二文字があった。


俺は当然、恐怖していた。

なんの、なんの連絡も無かったのだ。


あの日から俺は数日の間ずっとやきもきしていたというのに、彼女にとってあの日は何も無かったのだと言わんばかりに連絡もしてこなかったのだ。


きっと最後のアレはお別れの儀式みたいなものだったのだと、そう俺は結論付けたばかりだというのに。


「出てやれよ」


怜二がそう促しているので応答ボタンに指をやる。


「・・・もしもし」


『あ、幸次くん久しぶり』


麻衣の声は明るかった。

それはもう、不気味なほどに。


「ひ、久しぶり」


『今日はね、伝えたいことがあって電話したの』


「伝えたいこと・・・?」


『うん、あのね、私・・・』


やばい、冷や汗が止まらない。


『妊娠しちゃった』


頭が真っ白になった。


『もちろん私と幸次くんの子供だよ?浮気なんてしてないから』


追い討ちをかけるように麻衣は言葉を続ける。


『それでね、ここからが本題なんだけど』


「な、なに?」





『私ね、幸次くんと結婚したいの』



「」





本当にお前がパパになるんだよと言われてしまった気分だった。








おしまい

最後まで読んで頂きありがとうございます。


反響次第で続きを書くかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あっ好きです、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ