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97 女子会


 フェリシアとマルディダは近衛騎士団との面会のあと、少し冷えた体を温泉で温めて、客室に戻って来た。



「温泉って気持ちいいものなのね。」


「そう、私も初めてなの。母上達はこの前、引っ越し祝いに来た時に入って気持ち良かった言っていたけどね。なんか、体がまだほかほかしているし、肌がつるつるしてる。」


「いいわね。王宮のお風呂も温泉にしてくれればいいのに。」


「太郎様だって、王宮のお風呂を毎日温泉にするほど温泉の素は持っていないと思うよ。屋敷に初めて来た時は温泉にしなくて普通のお風呂だったし。」


「そうなんだ。私は寮じゃなくて別棟だから王宮に居るときと一緒で、いつもはメイドがお風呂のこと全部やってくれるから、ただ座ってなされるままでいるだけだけど、今日は自分で洗ったしフェシリアの背中も流せたし、いつもと違って楽しい。」


「偶には自分で体を洗うっていうのもいいでしょ。髪なんか明日さらさらでもっと気持ちいいよ。本当は太郎様に魔法で乾かしてもらうのがいいんだけど。今日は忙しいからよく拭いてから寝ようね。 太郎様が、ちゃんと乾かさないとぐしゅぐしゅになっちゃうからって言ってたから。」


「じゃあ、乾くまで話そうか。」


「太郎様から頂いたお菓子とジュースがあるから、ゆっくりしよう。でも、髪の事がなくても、何もなければ朝まで喋っていそうだけど・・・。」


「そうよね・・・。お菓子ってなに? やっぱりグンマーのお菓子なのかな。」


「これ、ラスクだって。あと、氷魔法で氷らせてあるけど、溶けるとぷにゅぷにゅする「みょうなんとか」っていうの。それからぱりぱりして甘い薄いクッキーみたいのが「いそべなんとか」って言うらしいよ。」


「面白そうね。飲み物は? これが薄いヨーグルトみたいな「カルなんとか」と「うめ?」のジュースらしい。」


「みんな始めて聞く名前なのね。フェリシアも初めて?」


「そう。だから太郎様は、王女様が初めてのものがダメなら、お茶も用意してあるからそっちにしてね。って言われてる。どう、大丈夫そう?」


「ダメって、言ったらいつものお茶になっちゃうんでしょ。それは嫌だな。」


「じゃあ、好きなの選んで。」








「ねえ、フェリシア、さっきの略奪の話を聞かせてくれるかしら。」


「え、言うの? 恥ずかしいな。」


「当然でしょ。主人が使用人の思い人を横取りするなんて話、聞かずにおくべきか! でしょ。」


「まあ、そうよね。 終業式の後、用事があってスヴァールバリ叔父様の所にお使いに行き、その帰り道に盗賊に襲われていた所を太郎様が助けてくださったの。」


「盗賊って何人くらいだったの。」


「スヴェアの報告だと20人だったらしい。私は馬車の中から出てないし、カーテンも閉め切りなので外の様子は全然わからなかったけど。ちょっと大変だったみたい。」


「大変って?」


「丸太で馬車が足止めされて直ぐに、御者のミミリィが矢傷を負って馬車操作ができなくなっちゃって、その直ぐ後にベルタの騎馬が射られベルタは落馬して体を強く打って死んじゃったらしいの。

 護衛3人で20人をどうしようか、どうやって逃げようかと焦っている所に、太郎様が颯爽と現れて、ベルタを生き返らせてミミリィの傷を治した後、盗賊を全滅させたらしい。」


「凄いわね。」


「全部終わった後、スヴェアから太郎様を紹介されて、『やった。私の王子様がやっと来た。』って思ったのに、一緒に馬車に乗ってくれなくて、お話もして貰えなかったの。

 私は父上から『フェリシアの夫となる者は、儂に手合わせして勝たなくてはいけない。』と言われているし、父も公言しているから全然いい話が来ないの。でも「私がピンチの時に颯爽と現れ、鎧袖一触という感じで盗賊退治して、私の手を取ってくれる王子様」の筈なのに、宿に着いたときにはもうミミリィと同室で寝ることになっていて、悔しい思いをしたの。」


「え、会った当日に同室で一夜を過ごすって何考えているの貴方の使用人達。」


「ミミリィが護衛の報酬として「処女童貞交換契約」をしたらしい。」


「それ、太郎様は酷い人なのではないかしら。どっちかというと足下を見てるゲス野郎、というより変態よね。」


「でも、最初太郎様、お礼は何も要らないって言ってたんだって。自分の矜持の問題だからみたいなこと言ってたらしい。でも、ミミリィがどうしてもって言ったので「じゃ、処女童貞交換契約」を考えておいてって笑いながら盗賊退治に行っちゃったらしい。」


「それも、笑いながら言われる内容じゃ無いわよ。」


「そうよね。でも一瞬で盗賊退治したあとは、ミミリィに何の要求もしなかった。」


「え、言いっ放し?」


「そう、宿に着くまでミミリィに近づこうともしなかった。」


「下卑た男なら、嫌らしくしつこい位に契約履行を求めるわよね。それ本当に契約しているの。」


「私も全然気づかなかった。”護衛をしてくれるいい人”と思っていただけだった。ミミリィとの契約の話は宿に着いてからスヴェアから聞いたの。」


「で、その日に同室となったと。でも、やっぱり変態よそれ。ミミリィさん可哀想。」


「でも、お風呂もお世話もしたけど恐縮するだけで嫌らしいことは一切しないで、逆に髪を綺麗にしてもらったりして紳士対応されて、二人だけになった夜も何もされなかったんだって。

 無防備の女と同衾してて、何もしないなんて信じられる?

 そんな太郎さんに逆にミミリィが一目惚れしちゃったの。次の日は太郎様と御者席に二人で並んでなんかとってもいい感じだった。私は馬車の中で一人ぼっちなのに。」


「まあ、確かに焼けるわよね。」


「太郎様がヴィエールへの途中、お昼ご飯を太郎様が作ってくれたの。それが”つみっこ”だったんだけど、なんか、太郎様みたいなほっこりする感じで美味しかったの。」


「”つみっこ”って何? 知らないわよ。」


「具だくさんの汁で、小麦粉を練った団子みたいのが入っているやつ。なんだけど、美味しくってこれもっと食べたい。って思ったの。」


「食べ物に釣られたのね。」


「それで、太郎様に「お友達になって下さいね。また作って下さいね。」ってお願いしたら、太郎様は「いいよ」って言ってくれたの。だから、「では夕食とか、朝食もお願いします。」って、言質を取ったの。」


「鬼ね。でも、それ危なくないの?貴族令嬢なんだから、少しは身の危険を感じた方がいいんじゃないかしら。何処の馬の骨かも分からない男の家に泊まろうなんて・・・・。」


「いいの、私がいいと思うのだから。その夜、太郎様が優良物件だと気づいたスヴェアがちょっかいだして、ミミリィと太郎様の関係がちょっとギクシャクしたのが分かったので、無事屋敷に着いた後太郎様が帰ろうとするのを母上からのお礼だと言って、有無を言わさず引き留めて、母上がいる前で正夫人になるって宣言したの。」


「ミミリィさんはどうしたの。」


「『一時でも手放すのが悪いのだから第二夫人で我慢しなさい。』って言ってやったわ。」


「それで、略奪。確かに略奪ね。フェリシアもやるわね。だから、正夫人が複数いるのね。太郎様が望んで、何人も正夫人を増やしているのではないのね。」


「太郎様は自分は一人いれば十分なんだって何時も言っているけど、優しいから誰も棄てることはしないの。そんなところも好き。大好き。だから正夫人が増えてもかまわないの。」


「それはそれで淋しいかとも思うのだけど・・・。」


「だって、太郎様は私を大事にしてくれるし、ほらこのパジャマだって太郎様がくれたの。下着もそうよ。」


「そうなんだ。あと、ずっと気になっていたのよね。フェリシアの下着が私達のとちょっと違うところも。胸に着けるの私も欲しいなと思うし。」


「これ?、これはダメよ。今は太郎様しかサイズを測れないから、太郎様に裸を見られても大丈夫な者達だけ。特権なんだからね。太郎様に愛されているものの特権よ。」


「奴隷メイドさん達も?」


「そう、今は彼女達の方が太郎様と一緒にいる時間が長くって、美味しいものを食べたりして大事にされていると思うのが、ちょっと悔しいけど。

 それでもね、ミミリィから聞いたんだけど、美味しい食材は”これはフェリシアの分だから”ってちゃんと残してくれているんだって。」


「愛されているのね。羨ましいわ。だけどなんかちょっとイラっとする。と、いうか凄くイラッとする。」


「へへ、いいでしょ。」


「そういえば、彼女達とっても肌が綺麗だった。まるで赤ちゃんみたいだったよね。化粧は全くしていなかったし、どうするとあんな風に保てるのかしら。」


「うん、私は聞いてないけど、多分、太郎様が何かしたんだと思う。」


「そうなんだ、太郎様って何でも出来ちゃうのね。」


「そうよ、私の旦那様なんだから。当然でしょ。」


「はいはい。ご馳走さまでした。 そうなんだ、ここにいると安全・安心・美味しいご飯付きなんだ・・・。」


女子の会話は難しいです。


ちなみに、み○うちくりんは伊勢崎銘菓の生クリーム大福(冷凍)と、磯部せ○べいは、元祖温泉マークの○部温泉(鉱泉水)を使ったサクサクの甘いせんべい、というかクレープ生地みたいなものです。


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