94 近衛騎士団
第三師団の処から200m位離れてた□のところまで歩き同じ様に声を掛ける。
「今晩は~。寒い中ご苦労さまです。責任者の方いらっしゃいますか。」
近衛騎士団だけあって、鎧が金ぴかに光っている。
「なんだお前等は。邪魔だ、すぐさま帰れ。」
「あ、あの屋敷の主です。いまパーティ中なんですけどご来訪頂いたのに、外でお待ちなので本日の招待したお客様が連絡不備で入場できないのかと思いまして、参上いたしたのですが。お呼びではありませんでしたか。」
「呼んではおらん。早々と立ち去れ。」と、けんもほろろに追い返されそうになる。
「いや、そんなこと仰らずに責任者の方にお会いしたいのですが。」
「うるさい、怪我をしないうちに立ち去れ・・・。 お前、屋敷の主人と言ったな。ちょっと待て。」と、言い奥に走って行った。
暫くして、上役らしき人と戻ってきた。
「あの屋敷の主と言うのはお前か。」
「はい、間橋太郎と申します。」
「そうか、よしこの者達を引っ立てろ。このまま捕縛する。」
「ちょっと待って下さい。なぜ捕縛されなくてはいけないのですか。」
「シラを切るか。謀反を企む逆賊が。」
「謀反ですか。第一師団長エステルグリーン伯爵の快気祝の宴が何故謀反の密談になるのでしょうか。」
「なにを言うか。第一師団長エステルグリーン伯爵が王族を拉致し、人質として反乱を企てているのを隠しおおせると思っているのか。」
「第一師団長が王族を拉致ですか?してませんよそんな事。義父は国家に忠誠を尽くしていますから、王子様をお守りすることはあっても人質にするなんてことはないですよ。
それに、私達を捕縛するっていいますが近衛騎士団がそんな事しても大丈夫なんですか?」
「お前等が、第一王子、第二王子夫妻を拉致し、謀反を企てているのは明白。制圧し王子を解放するのが我々の使命。何の憂いがあろうか。」
「いや、捕縛って言ってもね・・・。王族まで捕縛するのかな?近衛騎士団は。」
「五月蠅い、つべこべ言わずに大人しくしろ。」と、捕縛を部下に命じる。
「だ・か・ら。 近衛騎士団が王族の顔も分からないの? あんたさ~本当に近衛騎士団なの?」
「何を言う・・・。マルディダ様。 は? 何故このような処に。」
「ここまで私に気づかないとは近衛騎士団はどの様な教育をしているのでしょうね。」
「は、は~。」 はい、土下座モード。だったら最初からやらなきゃいいのに。
「今日は、私の友フェリシアのお父上の快気祝のパーティに参加しているだけです。兄上達もパーティに参加しているだけで、拉致され人質にされている訳ではありません。
近衛騎士団ともあろう者が、誣告を信じ、真偽も確かめずに考えも無く行動するなど信じられません。如何したのですか、クリンゲンバリ第三分団長」
「面目次第もありません。しかしながら王都を守るのが近衛騎士団の任。真偽にかかわらず調査し未然に食い止めることもお役目と心得ております。王命とあらば任務を遂行するまで。平に御容赦を。」
「マルディダ様如何いたしましょうか。実害は無いのでお帰りいただくので良いと思うのですが。無為に優秀な人材を罰するのはこの国の為にならないと思いますが。」
「そうですか、太郎殿がそう仰るのであれば仕方ありません。今日の事は『見回り中の第三分団を確認した。』ということにします。よろしいですか。」
「感謝の至り。」
「太郎殿これで宜しいでしょうか。」
「御意。付け加えるとすれば、裏手にいるご友人達もお持ち帰りいただくと嬉しいですね。」
「お友達ですか?」と、マルディダ様が首をかしげる。
「クリンゲンバリ卿がよくご存じですよ。 そうですよね、クリンゲンバリ卿」
クリンゲンバリ分隊長は眉毛をぴくぴくさせながら
「なんのことやら分かりませんが。周囲を巡回してから王宮に戻ります。 それでは、私どもは此所で失礼いたします。」と、号令をかけ近衛騎士団は帰って行った。
逃げ帰るように帰路を急ぐ近衛騎士団を見送り
「さて、マルディダ様お手数をお掛けしました。それでは屋敷に戻りましょう。」
「太郎様。お友達とは何ですか。」歩きながらフェリシアが尋ねる。
「あ、あれね。お友達って暗殺者だよ。王子夫妻を狙ってたから。」
「え、それどう言うことですか。」
「多分、寝静まったころ屋敷を襲撃する予定だったんだよ。第三師団は、謀反人の制圧、近衛騎士団は人質となっている王族の保護が王命みたいだからね。
近衛騎士団は王子様達の顔を知っているから害することはないのだけど、それだと企んだ者の意図とは違うのさ。だから、近衛騎士団が王子様達を見つける前に殺害する必要があるんだよ。「謀反人は壊滅したが、賊の手により王子達は弑された。」として、第三王子の王位継承権を確実なものにしたいのさ。
第三分団長の感じだと、知っているのは分団長のみかな。流石に王家に忠誠をつくしている近衛騎士団の騎士達は命に代えても王族を守ろうとするから、彼らに気づかれない様に刺客を放ったのだと思うよ。」
「私も対象だったのでしょうか。」
「順位は低いけど多分そうですね。」
「太郎様、ありがとうございます。」
「まあ、気にしないで下さい。彼らは今日のところは帰ったし、屋敷には結界が張ってあるから戻って来ても入れませんよ。」
「分かりました。では、これから親友と温泉を楽しんできます。」
「ごゆっくりどうぞ。 多分大丈夫だと思いますが、余り長湯ですと我が家に使用人達が行きますが、ご寛恕ください。」
「問題ありませんよ。 何でしたら太郎様も一緒にどうですか。」
「お心づかいありがたくいただきますが、命が惜しいので、ご辞退申しあげます。」
「え、如何してですか。ピチピチの乙女と混浴ですよ。次は無いですよ。」
「そのような邪な考えをいたすことはありません。フェリシアに怒られますから。」
と、フェリシアをチラっと見ると
「そうですよ。太郎様は自制心がある方ですから、心配はしてませんよ。」と、とても意味ありげな表情で和やかに答える。
「そうですか、では親友と温泉を楽しませて頂きます。」とマルディダ様が微笑むと、フェリシアが近くに寄ってきて
「後でお話があります。」と一言告げ、マルディダ様と一緒に本館に向かっていった。
「やれやれ。」と、マップを確認すると赤点は全て屋敷の周りから無くなり、あとは詰め所の赤青点滅と、旧本館の一カ所にまとまった数点を残すだけになった。
「じゃ、二次会を始めますかね。」と食堂に戻る。




