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89 招かざる客

 実の娘の案内で、お客様達がぞろぞろと食堂に入り席に着いてゆく。表情がちょっと固めではあるが、怒っている風はないので大丈夫なんだろう。

 付き人達も一緒に入ってもらい、別席ではあるが全員での食事会となる。


 席の前には黒い箱が置いてあるだけなので、皆不思議そうな顔で弁当箱を見ている。

 確かに、見たことの無い黒箱と、スープカップ、酒瓶とグラス、木製のフォークとスプーンしか置いてないのだから不思議に思うよね。 貴族が木製のフォークとかあり得ないだろうから。


 全員が着席したあと、食事会の開始前に公爵に許しを得て説明をさせて貰う。


「今晩は、本日は義父エステルグリーン伯爵の快気祝の席に多数ご参加いただき、誠にありがとうございます。私は本日の宴の料理を用意させていただきました、エステルグリーン伯爵の娘婿になります、間橋太郎と申します。宴に先立ちまして本日の料理等について説明させていただきたいと思います。

 本日、皆様の前にある黒い箱は幕の内弁当といいまして、私の国グンマーではおめでたい席等で出されるものです。本日の料理は全てその中に入っておりますので、お好きな順でご自分のペースでお召し上がりいただければと思います。また、本日の料理については、お手元のフォークとスプーンだけで間に合うよう用意してあります。個々の料理の中身については各テーブルの担当者にお尋ねください。

 また、本日はグンマー産の梅の果実酒と米の酒を用意させていただきました。お口に召さないようでしたらこちらの国の酒も用意してありますので、こちらも各テーブルの担当者に申しつけください。私にとりまして初めてのパーティとなりますので不慣れな点はお許し下さる様お願いいたします。」一礼してから着席し、公爵に挨拶をお願いする。


「改めて、我が盟友であるエステルグリーン伯爵の快気祝に参加してただき感謝申しあげる。儂も、一時は覚悟をしたが、こうして回復したことは慶事でありこの祝杯を挙げる席を設けさせてもらったものである。伯爵は我が国の第一師団長であり、彼に万が一のことがあらば、我が国に多大な損失となるものであった。ここに彼の回復に安堵し旨い酒をいただこう。」




 発泡酒を注ぎ、全員の用意を確認して。

「では、乾杯」 「「「「「「「「「「「「乾杯~」」」」」」」」」」」」」」


それぞれ弁当箱の蓋を開け、蓋はお世話係のメイドさんに回収してもらう。


 皆蓋をあけた後、上段を降ろし並べて、料理に魅入っている。見たことの無い料理ばっかりだから、直ぐに手を着けるのは勇気が要るよね。

 その点、ウチの担当者は世話係だというのに仕事を忘れて、そそくさと食べ始める。一昨日食べたろうに。全く・・・。 でも、その姿をみて親御さん達も食べ始めたので良しとするか。


 なんか静かなんだけど・・・。黙々と食べ、飲んでいる。祝いの席なんだからなんかしゃべって欲しいんだけど。そんなに、慌てなくてもお弁当は逃げないよ。と、閣下を見たが、閣下もアンナリーナ様も黙々と食べるし、公爵様もテレーシア様も黙々と食べてる。


 公爵様がボソッと「エステルグリーンはこんなものを毎日食べているのか。許せん。」

 公爵様「許せん」って何? 許せんって。


 咀嚼と飲下の音だけが暫く続いたあと、アンアリーナ様がこちらを向いて、

「太郎ちゃん、貴方、こういうのを自分達だけで食べていたの?」


「これは、あくまでも宴会用に作ったものですから。」と、言い訳をするが、


「許せないわよね。お昼のオムライスでもハブられた感満載だったのに、これは無いわよね。なんで、先ず私達に試食させないの? それ義息子のすることじゃ無いわよ。」


「あ、フェリシアも食べてませんから。」


「え、フェリシアが食べてないのに貴方の性奴隷達は食べているってことかしら。それ、順番が違うわよね。」アンナリーナ様目が怖い。


「彼女達は試食を食べただけですから。」


「あ、そう。そういうこと言うのね。じゃこのまま此所に引っ越しちゃおうかしら。そうすれば太郎ちゃんの料理あ、ごめんなさいね”試食”が毎日食べられるのよね。」


「あ、おめでたい席ですから、そういうのはまた後で。」 アンナリーナ様搦まないで。


 と、フェリシアの方を見たら、ミミリィから今日の料理をマルディダ様と一緒にレクチャーを受けている。 恨み言を言われない様に放っておこう。


 そんな、漫才が聞こえたのか、各テーブルでも会話が始まる。皆笑っているので大丈夫そうだ。よかった。あくまでも素人料理なんだから、多くを望まれたって出来ないんだよ。それで満足してね。








「うまい!太郎殿、この料理は旨いぞ。素晴らしい エステルグリーン伯爵が勧めるのが分かる。ではあるが、ひとつだけ不満がある。」グランフェルト公爵が、わざとらしく大きな声で自分に呼びかける。


「お褒めいただきありがとうございます。 至らぬ点については大変申し訳なく思います。素人の接待ですので平にご容赦を。」


「いや、許せん。なぜ、儂が奴隷とこの様な美味なる夕食を同席せねばならぬのだ。このような事は許しがたい我が家の汚点となるものだ。このような事はあってはならん。今更であるが、この奴隷は我が家で今すぐ引き取らせてもう。直ちに奴隷から解放してもらいたい。そうすれば、平民との同席であり、何の問題もなくなる。よろしいかな。」


「はい、しかしながら、我が家の使用人には本人の意思を尊重するとしていますので、本人の希望次第です、ですから本人が望めばお受けいたします。」


「そうだな、では買い戻させてもらう。 すまなかったなグンネル。」


「お断りいたします。」


「そうか、今日は泊まるから・・・おい、お前今何と言ったのだ。」


「お断りいたします。と申し上げました。」


「なぜだ、この男に脅されているのか。」


「ご主人様を悪しく言うことは、例え公爵様であっても許しません。私はご主人様の性奴隷であり続けたいと思っております。いまの待遇になんの不満もございません。

 もし、公爵様が私のことをお気になさるのでしたら、ご主人様が私を転売しない様にしていただくことのみをお願いいたします。」


「グンネル、お前、何を言っているのだ。」


「私は、今とても幸せを感じております。綺麗な洋服を頂き、このような美味しい料理を毎日頂いています。今までの自分の様な、自分の意思とは関係なく婚約者を決められ、なにもすることを許されず、ただ世継ぎを孕む事が全てという未来ではなく、ご主人様と料理を作ったり、お店をしたりする今の幸せな生活を失うことのみ怖れます。

 ですから、今は奴隷の身であり、決して公爵様への敬意と、娘としては今まで育てていただいたご恩を忘れたわけでは無く、公爵様への感謝の念と敬意を失っておりませんが、ひとこと言わせていただけるなら、『大きなお世話です。』」

 グンネル言い切ったぞ。いいのかそれで。


「お、グンネル 何を。」

公爵の動きが止まった。隣の夫人が、公爵の肘を引っ張り、耳打ちすると


「わかった、では今日の接待の褒美として、お前自身を身請け出来るだけの金を取らす。そうすれば万が一、太郎殿がお前を何処かに売ろうとしても自分で買い戻すことができるであろう。そして、我が屋敷の門をくぐることはいつでも自由に認める。どうだ、これでよいか。」


「ありがとうございます。ご主人様が私を売ることなどありえませんが、お心遣いありがたく頂戴いたします。」


「ありがとうございます、父上様」とグンネルがぽつりと呟いた。


 公爵が折れたあと、他の親たちも同じ事をしていたが、全員に瞬殺だった。


 結局、全員が『自分を買い戻すだけの資金を親から貰うこと』で決定しただけだったみたい。

 何人かの親御さんは、やけ酒モードに入っていきそうで怖い。もう少し酒精の低いものを出そうかなと思っていたら、スヴェアが軽鎧のまま入って来た。


「如何したの?」と聞いたら答えず、閣下に元に行き耳打ちをしている。なんだ、夫(あ、仮か)が信用できないのか。ちょっとむっとしたが、閣下が慌てた様子で立ち上がり外に出て行った。


「ん? なんだ。」と、アンナリーナ様を見たら、アンナリーナ様が近づいてきて、


「招いていないお客様が来たみたい。 席を用意して料理を出せるかしら。」


「テーブルは僕たちが動きますので、此所にテーブルを用意します。料理は予備が10食くらいならあります。で、何方なのですか。」


「では、至急用意してくれるかしら。ちょっと、うんそうね、ある意味困ったお客様かしらね。」

 そのあと、アンナリーナ様はアンドレアソン公爵に耳打ちに行き、公爵も席を立ち出て行った。なんだろう。 まあ、いいや。


「マルディダ様、食事中申し訳ありませんがお客様がいらっしゃったとのことなので、テーブルを移します。王女様に対し不敬とは存じ上げますがどうぞお許し下さいますようお願いします。ミミリィ、フェリシアもよろしく。」


「構いません、今日は王女としてではなくフェリシアの友人として参加させていただいているに過ぎませんから、気遣い無用ですよ。」と和やかに同意して貰えたので、ミミリィと二人でテーブルを動かし、奥からテーブルを持って来てクロスを引きカトラリーを揃え、弁当箱を用意する。


 用意が終わったら直ぐに、ドアが開き閣下が入って来きた。


「皆のもの、宴たけなわであるが、お客様がお見えになった。しばし、手を休め耳目をこちらに向けていただこう。」と、一度外で出て行った。


 改めてドアが開くと、閣下と公爵そして、二組の男女が入ってきた。

「あ、お兄様。如何して。」マルディダ様がボソっと呟いた。


「皆の者、本日私の快気祝にと、イェルハルド第一王子殿下御夫妻、ヴァルデマル第二王子殿下御夫妻がお見えになられた。拍手でお迎えいただきたい。」閣下がそう告げると、拍手で4名を迎え入れた。


「では、こちらへ」と、急造テーブルに案内し、着席を勧める。


 第一王子殿下?が公爵から請われ挨拶をすることになった。

「突然の訪問で申し訳ない。 本日我が国の精鋭第一師団長であるエステルグリーン伯爵の快気祝が行われると聞き、突然ではあるが駆けつけさせて貰った。迷惑かもしれないが、伯爵の快気を我妻、弟夫妻と祝いたくお邪魔させて貰った。我々は伯爵の快気を祝う為参っただけであるので、気にせず大いに祝って貰いたい。」と挨拶をした後はそのまま会食となった


 始めは黒い箱を物珍しそうに見ていたけど、すぐにマルディダ様が駆け寄り、王子殿下夫妻に説明をして会食が始まった。

 見たことの無い料理に、最初は戸惑っていたみたいだけど、マルディダ様が旨く説明してくれたみたいで、和やかな会食となっている。



「あ、見えた。 ほんと、糞だな。」アンナリーナ様の違和感をまた感じてしまった。


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