75 彼女達の武器
ふと思い返し、「ねえ、エヴェリーナ。この辺で腕のいい鍛冶屋というか武器屋はないかな。」
「武器ですか。そうですね、私が今まで使っていた武器屋がありますが。」
「そこに連れていってくれるかな。」
「はい、喜んで。」エヴェリーナとっても嬉しそう。
「ねえ、エヴァリーナの他に剣を使えるのは、ソフィーアとグンネルだけかな。」
「そうですね、剣士とすれば私を含めて3人です。あと、エディット、テレーサ、アレクシスも魔術師ですが多少剣が使えます。」
「君達はどんな剣を使うの。」
「私達はやはり男性に比べて力が弱いので、ロングソードですが、男性用よりもちょっと軽めの剣ですね。槍も使えますよ。」
「では、3人には剣と槍を、魔術師の3人には短剣を買おう。」
「え、宜しいのですか。奴隷は主人に危害を加える可能性があるから、武器を戦場以外は持たせないのがこの国の常識ですよ。」
「君達が僕に危害を加える可能性なんてあるの?」
「それは絶対にあり得ません。ご主人様に皆絶対忠誠を誓っている筈です。」
「じゃあ、そういうことで問題無いでしょ。僕は君達が自分を守れる力があるのにその手段を与えないで、怪我をしたりするのは嫌だからね。」
そんなことを話しているうちに、10分程で武器屋についた。
「いらっしゃいませ。ヨーケダール商会にようこそ。本日はどの様な者をお探しですか。 あ、エヴァリーナ様、お久しぶりでございます。」
「こんにちは、アルビン様ご無沙汰しております。」
「本日はどの様なご用件でしょうか。」
「剣と槍、それに短剣を探しに来ました。それと、できれば特注品をお願いできればと思っているのですが。」
「そうですか、剣はどの様なものがよろしいでしょうか。」
「ロングソードが3本欲しいのです。エヴァリーナ達が使うのでエヴァリーナが使いやすそうなものを見せてください。」
「かしこまりました、持って参ります。槍は、そちらに飾ってあるものをご確認していただき、形・大きさ等決まりましたらご命じください。それから、短剣はご婦人方がお使いになるものでしょうか?「はい」では、剣と一緒に持って参ります。」
と、奥に入っていった。
壁に飾ってある槍を見ていると、ランス、パイク、グレイブ等があり、エヴァリーナにどれがいいか尋ねたら、やはりランスがいいという。そうだよね、何も無ければ第一師団のエリートだったんだものね。形大きさを詰めていると、アルビンさんが、ロングソードの箱を6個台車に載せて持って来た。
「お待たせしました。こちらがロングソードになります。女性でも扱える中程度の大きさですが、もっと大型をお望みでしたらそちらも持って参ります。」
「ありがとうございます。エヴァリーナどの位のがいいか持ってみて。」と、エヴァリーナに指示し、自分は鑑定発動してみる。全体に質が高い。ほとんどAでBが少し、Cは1本しか無かった。そして、何故かAAというものも5本紛れていた。この店主の目利きはしっかりしているみたい。
「ご主人様、これが良いです。」とエヴァリーナが選んだのはAA5本の内の1本だった。
エヴァリーナも目利きだね。エヴァリーナが決まったので他の者にも思い、ふと考えた。AA総取りしちゃえばいいんじゃなか。そうしよう。
一本一本確認する振りをして、AA4本をキープ。2本を選ぶ振りをして「すみません、判断が付きませんのでこの4本とエヴァリーナの1本計5本頂いてもよろしいでしょうか。」
アルビンさんは頬をピクピクさせながら、「了解いたしました。では、短剣は如何いたしましょうか。」と、ロングソードの箱を下に降ろし、短剣の箱を開けてくれた。
短剣がずらっと100本ほど並んでいて壮観。手に取って一本一本確認する振りをしながら鑑定する。こちらはAAが15本Aが20本Bが30本Cが35本という構成でだったが外見はC→B→A→AAの順で装飾が少なくなっていた。両手剣もそうだったんだけど、外見がいいやつは全部Cなんだよね。アルビンさん商売上手。
「僕は装飾は求めてないので、このシンプルなものを、うん、どれにしようどうしよう選べない・・・。じゃ、このシンプルなもの15本全部頂きます。」と、しれっと全部買っちゃった。
アルビンさん眉までピクピクしてるよ。
「では、槍は如何いたしますか。」アルビンさん冷静を装ってるけど、ピクピク止まらないよ。
「はい、ランスをお願いします。2m位のものをお願いします。」
「では、少々お待ちください。」と言い残し、剣と短剣の箱を台車に乗せ奥に戻って言った。カウンターに残る5本の剣と15本の短剣を再鑑定してみたがやっぱりAAと表示される。途中で買った刀でもAだったんだからAAって凄いんだろうな。
「お待たせしました。ランスをお持ちしました。」と、台車の上に30本ほどのランスが剣山の様に乗っていた。これは工業製品的なものなのか、大きさ形に変化がほとんど見られない均一品質で、Aが27本AAが3本だった。「じゃあ」といい当然AA3本を引き抜き、「これ頂きます」とアルビンさんに告げた。
途端に、アルビンさんが「バッ」と吹き出し、大笑いしだした。
「如何しましたか。」
「いや、エヴァリーナ様の旦那様には敵いませんな。ウチの名品全部持って行かれちゃいましたよ。信じられません。100点満点ですな。」
「え、そうなんですか。」と、白々しく言ってみる。
「ウチにも貴族様がよくお見えになって、武器をお買い上げ頂くのですが、大体の方が外見の美しさとかを重視し買われてゆきます。まあ、それで商売になってはいるのですけどね。
貴族のそれもご婦人方が自分で武器を手にする様な時には、もうどんな武器でも手遅れですからね、それは確かにそれでもいいのですが。一級品だけ、それも全て選ばれるとは素晴らしいですね。商売あがったりですよ。」なんかアルビンさん嬉しそう。
「私もこう言う商売していますから、飾りではなく自分の身をしっかり守れる物を提供したいとは考えているんです。しかしどうも質実剛健とは違い優美さや華麗さを求めるお客様が多く若干うんざりしてたとことでもあるのです。しかし、こういう方に巡り会えるなど天恵ですな。」
「もし、ご商売に差し障りがあるようでしたら、半分戻しますが。」
「いえいえ、商売人が一旦売り渡したものを買い戻させてもらいたいなど口が裂けても言えませんよ。」
「あ、ありがとうございます。で、お幾らになりますでしょうか。」
「一応、お出ししたのは汎用品の均一価格設定してあるものですから、剣金貨6枚、短剣金貨3枚、ランス金貨8枚ですから、計金貨114枚ですね。まとめてお買い上げで大金貨11枚で如何でしょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」とバックパックから大金貨11枚を出し手渡して購入した武器をアイテムボックスにしまう。
「はあ、収納ですか。素晴らしいですね。お申し付けいただければお届けに上がりましたのに。」
「いえ、多分エヴァリーナは戻ったら直ぐに試してみたいと思ってますから持ち帰ります。それと、僕も特注で作っていただきたいものがあるのですが可能でしょうか。
「はて、それはどのような。」
紙を出してもい、書きながら説明する。断面が3角形の槍の穂先で、穂を1m茎を50cm位で茎は断面を真円にしてもらう。御手杵のようなスマートな感じを伝えた。
「ほう、これは珍しい。パイクの穂先とは違うのですな。」
「柄は自分で用意して付けますから、僕には作れない穂先をお願いしたいのです。鞘も作っていただけるとありがたいです。」
「分かりました。5日ほどいただけますかな。そうですね、金貨10枚ではいかですか。」
「ではよろしくお願いします。」
後日取りに来ると伝え、商会を辞し帰路についた。
「ご主人様、あんな高価な物をいただいてよろしいのですか。」
「なにか問題でも? 君達の命の方が何万倍も大事だよ。なんか変かな。」
「いえ、ありがとうございます。」と、手を繋いだまま歩いているが、エヴァリーナとの距離が縮まった様な気がする。と、いうかピッタリと寄り添って来て腕を組んでいるのと距離変わらないんだけど。
屋敷に戻ると、ミミリィ達が昼食の用意をしていてくれたので、派遣メイドさんも一緒に食べた。
普通のサンドイッチと野菜スープだけど、イヴァンネが焼いてくれる白パンなので、何を挟んでも美味しい。
派遣メイドさん達も満足していたみたい。
御手杵は「西の日本号、東の御手杵」と謂われし、「天下三名槍」のひとつで、前橋東照宮にて常設展示(レプリカが、実物は空襲で燃えてしまいました)されているそうです。




