74 8日目めんどくさい奴等
朝起きると、ミミリィはやはり腕を抱き枕にして寝息を立てていた。いつ見ても可愛い。
ミミリィを起こして「じゃ行って来るね」と言い、朝練に出かけようとしたら、ミミリィも今日は起きて朝食当番のエヴェリーナとマルティナ手伝うと言い、用意のため自室へ着替に戻って行った。
玄関ではいつも通りにスヴェアとグンネルが待っていた。今日はソフィーアも一緒だ。
ソフィーアだけが、赤備六文銭ぐんまちゃんウインドブレーカーを持っていないので、アイテムボックスから出し、朝練以外は使用禁止厳守を告げ着させる。
「じゃ、走ろうかね。」と、いつものコースを走り出す。ソフィーアもちゃんと鍛えている様で、スヴェアやグンネルと一緒に同じ速度で走っていた。敷地に戻り柔軟体操をして打ち合いをする。グンネルとソフィーア、自分とスヴェアの組み合わせは変わらない。
適当に汗をかいたら終わらせ、食堂に向かう。いつもと同じ朝の風景。
食堂に入ると、当番ではないがイヴァンネ、スサン組も配膳を手伝っていた。
『イヴァンネ様流石ですね。』
『ポイント稼いで、ミミリィ様の印象を良くしておかないとね。添い寝出来ないじゃない。ついでに様は不要よ。』
あ、下心満載なのね。ちょっと可愛い。
メニューは相変わらず、パンとサラダと茹でたソーセージと野菜スープだった。
全員で「いただきます。」をして食べ始める。メニューは変わり映えしないが、パンが美味しくなっているので、元世界との違和感がなくなって来ている。そのうち、白米と味噌汁、焼き魚、浅漬けも欲しいな。納豆なんて・・・しばらくは無理か。
朝食後、後片付けが終わる頃、本邸から派遣メイドさん5人が先遣隊として派遣されて来たのと入れ替わりにスヴェアが本館に戻って行った。
ミミリィに頼んで、会場等の説明と当日の進め方などをエイラさん達も含めて調整をして相談してもらうことにしたが、ウチの本館担当メイドには本館の業務を優先してもらった。
明日のパーティ用の食材を購入するため、午前中にエヴェリーナと買い物に出かける。
今日の朝食当番だったので、エヴェリーナに声を掛けたら「デートですね。」と和やかに答えて一緒に行くことになった。
門を出ると、エヴェリーナも寄り添い腕を絡めてきたので、「動きにくいからね。」と離して手繋ぎで、他愛ない会話をしながら商店街へ歩いていった。(コミュ障だって少しは会話が成り立つんだよ。)
商店街に入り、店を覗いたいたら突然、「その女、可愛がってやるからよこすウニ。」と、いかにも頭の悪そうな男がエヴェリーナの腕をとり、引きずって行こうとする。
「僕の女なんだけどね、手を離してくれるかな。」
「黙れ下郎、我々に逆らうウニか。我々を誰だと心得ているウニか。我々はやんごとなき高貴な大ウニ帝国の外交全権大使なるぞ。下賤の者が言葉を発するなどすら汚らわしいウニ。頭が高い、控えおろうウニ。」
「ご託はいいから手を離してくれるかな。」
「キィー。この下賤の者を殺せウニ。」わらわらと、色違いではあるが同じ様な服装をして同じ様な顔をした男達がどこからともなく沸いてくる。
「いや、無駄な殺生したくないからさ、とっとと離してくれるかな。」
「我々に刃向かう気かウニ。やんごとなき高貴な外交使節である我々に逆らうとは、なんとも身の程知らずかウニ。下賤の者が高貴な我々に逆らったらどうなるか知っているウニか。」
「いや、しらん。 ただ、この国では人攫いは重罪であること位は知ってるけどな。」
「下賤の者など、無礼打ちウニ。殺るウニ。」
「あ、一応いっておくけど、僕はエステルグリーン伯爵家次期当主の予定だからね。分かっててやるなら受けるけど、平民の無礼打ちでは済まないよ。」
「エステルグリーン伯爵、何だそれは。うまいウニか。そんなヤツは知らないウニ。」
後ろにいた年配の男が頭の悪そうな男になにやら耳打ちしている。
「第一師団長ウニ。この国最強軍隊の指令ウニか。」
何事も無かった様にエヴェリーナを突き飛ばし、踵を返して立ち去る。させる訳無いだろう。
「ちょっと待てお前等、詫びぐらいいれてもらわないとな。」それでも、無視して行こうとする男達。
「よし、宣戦布告と受け取っていいんだな。」
「な、何を言っているウニか。下賤の者とはいえ、それなりに見栄えがする女がいたから声を掛けてやっただけウニ。我々やんごとなき高貴な者から声を掛けられるのは名誉として自らその身体を差し出すのが当然ウニ。態々下賤の者に常識を教えてやろうと手をさしのべてやっただけウニ。それをお前が難癖を付けてきたウニ。もともとお前が悪いウニ。謝罪と賠償を要求するウニ。」
「お前の足らない頭ではそうかも知れないが、お前がしていた事実をここにいる市民全員が見ている。妄言はお前の国の中だけにしろ。エステルグリーン家をなめるなよ。」
「不愉快ウニ。帰るウニ。」猛ダッシュで遠ざかって行く一同。
「だめだなありゃ。 あれは何なんだ?」
「ご主人様ありがとうございます。元の身分でしたらブチ殺していた処ですが、今は奴隷の身。どんな屑でも、一応他国の貴族となると奴隷の身では国際問題となるので手出しが出来ません。本当にありがとうございした。」
「で、彼奴等はなんなんだ。」
「隣国のマゾーン帝国属国のウニ国(自称:大ウニ帝国)の貴族です。「大ウニ帝国全権大使」を自称し、呼ばれてもいないのに勝手に来るんですよ。
道中、宿舎の備品や農家の家畜や作物を盗んだり、女子を拐かしたりやりたい放題の本当に碌でもない奴等です。王国としても迷惑しているんですが、自称大ウニ帝国が隣接国外交と言って勝手にやって来るんですよ。
そもそも自称「大帝国」大使、それも全権大使を自称するのに、裏口からしか王宮に入れてもらえないんですよ。 ほとんど御用聞きと言うか押し売り扱いされているのにそれに気づかないんですよ。それに、全権大使って言ってもなんの協議・交渉もしたことはないんですけどね。」
「全権委任をもって、迷惑を掛けまくっているって、ほとんど宣戦布告だね。ほんと迷惑な奴等だね。」
「そもそも、学者が言うには生物的には特殊な進化?をしていて、現在は亜人ヒトモドキに分類される種族らしいです。元々は、普通の人間だったらしいのですが、数千年前から隣国のマゾーン帝国(死ぬと死体が残らない種族:こちらも分類は亜人らしいです。死体が残らないって魔物なんですかね。)の属国となり、毎年2,000人の乙女を献上し続けたため、男女比率の不均衡を生じているらしく、元々女性の地位が低いこともあり年齢問わず女なら犯して子供生むための道具扱する事が普通の国の様です。
ウニ国では女性は子供を産む道具にしかすぎず、地位が低いので嫁ぐ前に父や兄弟までが行為に及び、子供を産めることを証明してから嫁に出すということが恒常的に行われていたり、献上品は処女に限られるため、「献上されるなら」と近親相姦で資格を失わせてるなんてことが日常的だったらしいです。そのため生物的な関連性はもう後戻りが出来ないくらい周辺の人族諸国と乖離しているらしいです。」
「滅亡させちゃえばいいのに。」
「滅亡させるのは簡単なのですが、マゾーン帝国も王国も滅亡させる手間に見合うメリットがないため放置しているのが現状ですね。」
「存在そのものが迷惑ってやつか。」
「マゾーン帝国は勝手に毎年乙女2,000人が送られてくるのと、王国からの侵攻があった場合のクッションの役割として一応メリットがあるらしいです。」
「そのマゾーン帝国に毎年2,000人って子供ができたりして蔓延ったりしないの?」
「去勢するらしいです。例え孕んでも生ませる事は無いようです。そもそも人扱い(亜人同士ですが)されていないとのことです。
それに、まともに扱うと、親が一族郎党引き連れて引っ越してきて集るらしいのでそれを防ぐ意味もあるみたいですよ。人族だと一族郎党で集るなんて普通恥ずかしくて出来ないですが、彼等はそんな感覚はそもそも持ち合わせていないとの話です。
なので、人身御供にされウニ人の美形系統はどんどん絶えていったようですね。」
「去勢ねぇ。犬猫と同じ扱いか。当代の美人は帝国に、隔世遺伝的に美人が生まれてもまた帝国に送られて、残り少ない女性を取り合い多様性が失われていくというある種の人為淘汰されて、ああいう同じ様な顔をしていくのね。人身御供の上に特定貴族はにあぐらをかいて我が世の春を謳歌(貴族はどうせ献上品をちょろまかしているからそれなりってことか。)して、実力は伴わない事大主義のプライドだけ強い連中ばっかりになったと。
でもその毎年2,000人の人身御供に見合う対価って何なんだろう。そんなものあるわけないじゃないか。その対価がやんごとなき高貴な者?の安寧なんて絶対釣り合わないよな。
それに、男達はそれを指を咥えて見てるだけなのか。下種丸出しでニタニタ笑ってたんだろうか。男として女を守るって矜持すら持ってないのか?」
「隔世遺伝の意味が分かりませんが、隔てた世代と言うことでしたらそういうことですね。貴族は自分の国内だとどんなことでも「貴族」特権で済ませるので、王国に来ても変えられないようです。
人身御供に対して反乱が起きたという話は聞いたことがありませんので、何千年前からなので感覚が麻痺しているんでしょうか。確かに献上されると実家には幾ばくかの対価が支払われるらしいということですが・・・・。
人身御供の女性達も連れ去られるときに、幼馴染みにニタニタ笑われたら生きて行く気力も失いますよね。
ほんともう、どうしようもない種族ですね。」
「まあ、関わらない方がいいんだろうね。 この王国にもその種族が婚姻して入り込んでいる家とかあるのかな。」
「表向きには、正妻はいませんが妾には入り込んでいるようです。 噂では、ヴィークストレーム公爵の愛妾にいるとかいないとか。」
「でも、去勢してるんでしょ。」
「マゾーン帝国はそうですが、この国は女性に優しいので去勢はしていないと思います。元は人間だったので一応人間との間に子供はできるらしいですが・・・。ヴィークストレーム公爵には、最近ウニ国縁者が入り込んでいる様な話も聞きます。」
「一族郎党に集られて、お家を乗っ取られてしまわないか心配ですね。」
「そうですね。あの種族は繁殖力がハンパないという話も聞いています。噂の範囲でしか知りませんがなんでもG並の繁殖力があるらしいですよ。G並って流石にそれはあり得ないし、酷い言い方ですよね。
まあ、確かに痩せた国土らしいですから、G並の繁殖力だと餓死者に直結するから、体の良い厄介払い扱いなんでしょうか。それでも酷いです。」
「あ、そうなの。やっぱり300体が50万体に50年で増殖みたいな、それも元がほとんど雄でも増殖しちゃうみたいな?」
若干の引っかかりを感じながらも、エヴェリーナと商店を巡り「あーじゃないこーじゃない」など言いながら、めぼしい食材を購入していった。
皆様のおかげをもちまして、30,000PVを超えました。 最初は完結までに10,000PVを超えればいいなと思っていたのですが、作品名が何の変哲も無いうえに、キーワードも最低限しかない拙作を見つけていただき、お読みいただいている皆様に感謝いたします。
ユニークユーザーも25人から始めて延べ4000人を超える皆様いお読みいただくことができました。




