7 AEDはどこだ
誤字修正しました。
やば、青点が消えていると言うことは、生きていない。騎士が馬から落ちた位では死なない筈だから、打ち所が悪かったのか。
『心臓震盪』。
子供の頃、少年野球で左胸にプロテクターを付けるかどうかで親が騒いでいたな、あれか。
倒れている女の子に近づき、呼吸と心音を確認する。心肺停止状態ってやつか。
まだ間に合うか?
マズイ、マズイ、マズイ。訓練でしかやったことないぞ心臓マッサージ。
若い女の子の服をはぎ取るなんてマズイが、皮鎧は外さなきゃ心臓マッサージもできないから許してね。
両手で胸を押す、リズミカルに。
全力でやると力が20倍だから手加減が難しいな、肋骨粉砕しないようにしなきゃ。
1分、2分、時間が経過してゆく。
反応がない。 駄目か。
死んでいるとヒールは効かないよな。
AEDは? 異世界にある訳無いか。
電流なら雷魔法か? 制御できるか。
やらないと確実にこの娘は戻らない。
上半身の服をはぎ取り、胸が露わになる、綺麗な乳房に目が行くが魅入っている暇はない。
後ろから視線を感じるが緊急事態だから許してよ。訴訟なんか起こさないでよね。
右肩と左脇腹に手を当て、雷魔法起動! どっちがプラスかマイナスか分からないけど、
創造神様、大丈夫だよね。「電撃、電圧・電流任せる。(誰にだ!)」
女の子の軀がビクンと反応する。
すぐに、心臓マッサージ移行。 動いてくれ。
かすかに、呼吸と心臓の鼓動が手に伝わる。胸に耳を当ててみた。動いている。
いい匂いがする、このまま顔を埋めたい。違う違う、そんな場合じゃない。
「よっしゃー。 ヒール、ヒール、ヒール」
呼吸が戻り、顔色が蒼白から赤みが差してきた、良かった~。
会社の防災訓練の救急救命無駄じゃなかった。もっとちゃんと聞いておけば、ちゃんと救命講習受けておけば、もっと早く蘇生できたかもしれない。バカにしていた自分にちょっと後悔。後遺症が出ないで欲しいな。
安心して、娘の顔色を眺めていたら、気づいた様でパッと目を開けた。
ヒールを掛けた状態のまま左胸に当てた手に気づき、二人で目が合った、とたん「キャー」という悲鳴とともに、左頬に平手打ちが飛んできましたよ。 これ、デジャビュだな。
そのまま、彼女は上半身を起こすと同時に、両手で自分を突き飛ばした。怯えた表情で胸を隠して後ずさりしている。
「あ、リーダーさんフォローお願い。」
うん、とりあえずリーダーさんに任せ、馬車に向かう。
馬車は大丈夫そう。でも、さっきは気づかなかったけど、御者席の女性が右腕に矢で射貫かれ蹲まっていた。
「大丈夫ですか。今、抜きますね。」と、手を出そうとすると
「何が目的で私たちを助けるのです。この状況は自殺行為ではないのですか。それとも盗賊団の一味ですか。」
疑いの目で見つめられるが、気にせず矢を折り一気に抜き去る。左手のナイフは見なかった事にしよう。「ヒール」。傷口がほのかに光り、元通りになったようで出血もない。
「理由?『助けたかったから』では駄目ですか。 僕の国では「義を見てなさざるは勇なきなり。」漢じゃないし、『雷と空っ風義理人情』のグンマーだからね。困っている人は助けるのが遺伝子に組み込まれた基本だよ。ま、『ご先祖様みたいに、親戚の保証人になって一文無し』っていうこともないことはないけど。でもさ、グンマーとしてはそのくらいの矜持はあるさ。それに、一応、このくらいの人数相手なら大丈夫、多分。やったことないけど。」
「矜持ですか、自分の命よりも矜持を優先するとは、にわかには信じがたいですね。」
ジト目で見られる。
「グンマーなら当然でしょ。あ、言い忘れた、僕は間橋太郎、太郎が名前です。貴方は」
「ミミリィ=リンデロート。エステルグリーン伯爵家の侍女をしています。」
「僕は今、無職。これから王都で冒険者か商売人をしようとしてグンマーを出てきたところ。」
「無職? やはり、貴族の手助けをして、見返りを得ようとしたのですね。この場が凌げたら対応いたしましょう。それから、グンマーとは何処ですか。そんな国は知りませんが。」
「見返りは期待していないよ。見返りを求めないと変かな?」
実は、さっき矢を抜くときステータスをチラ見したんだよね。
名前 :ミミリィ=リンデロート リンデロート子爵家四女
種族 :人間
性別 :女(処女)
年齢 :21 以下略
身長体重スリーサイズは内緒。ふんわりメイド服ではよく分からないけど、ポンキュッポンだった。こんなに、綺麗でスタイルがいいって反則だよな。
「じゃ、あなた方を助ける報酬は『貴方の処女と僕の童貞を交換』というのではどうですか。そろそろ卒業したいし。」
「えっ。 な、な、なにを言っているのですか。」
ミミリィさん可愛い。真っ赤になってる。という自分も顔が熱いぞ。お互い視線が合わせられない。
「じゃ、そういう条件で検討して下さい。盗賊退治していきますからよろしくお願いします。それから、グンマーは、多分ここからは遠い山の国だよ。詳しくはまた後でね。」と、そそくさと逃げるように馬車から離れる。
ちなみに、主人公が受けたのは会社の消防訓練時受けた「救命入門コース」だけだったので、面倒くさがらずに「普通救命講習I」、できれば「普通救命講習II」も受講しておけばよかったと後悔しています。