62 試食そして社員教育
グンネルが部屋を出て行くと、入れ違いにエイラさん達がお茶を用意してリビングに戻ってきた。
「グンネルさんが暗い顔で出て行きましたが、どうしたのですか。」
「まあ、そっとしておきます。」
「はぁ、そうですか。 お茶が入りました。」
「では、改めて君たちに作ってもらうものを見せます。そして試食してどれが君たちの好みかを聞かせて欲しい。」
エイラさん達がお茶を淹れる間に、甘太郎とその他試作品をお皿に並べて、食べ比べられる様に包丁でそれぞれ4等分する。
「これが基本の粒あんと白あん。こっちが、違うバージョン。こしあん(さらっとしたの)、ずんだあん(緑)、紫いもあん(紫)、黒ごまあん(黒)を作ってみた。試食してみて、君たちの感想と好みを聞かせて欲しいんだ。レポートにして提出してくれるかな。エイラさん、グンネルにも持っていってレポート書くように言ってくれる。」
あ、そういえば、父親がよく”ずんだずんだ~ずんだずんだずんだぁ~ ずんだずんだ~ずんだずんだずんだぁ~”とか歌っていたけどあれは何だったんだろう。
「分かりました。」と、お皿に甘太郎を入れて上に持って行った。
「お茶飲みながら食べて見てね。それから、これは、君たちに作ってもらう物だからね。心してレポートして、売れないと君たちのご飯が減っちゃうからね。」
「外はちょっと堅めですけど中がふわふわで甘いのですね。 中のあんですか?も色々あって嬉しいです。」
「これ、私でも作れるのですか。美味しいです。」
「柔らないパンみたいですが、ふわふわしてますね。」
「お茶の渋みが目立ちますね。このあんには合わない感じがします。」
とエディットの感想に頷くものが数名。
「そう、やっぱりそう感じるかな。じゃあこっちはどうかな。」と、生地に紅茶を混ぜ、カスタードあん、ココアあん、イチゴジャムの改造バージョンを出してみる。
「あ、これはお茶に合います。とても美味しいです。ジャムはクッキーとかでも食べますから違和感がないです。ご主人様この黄色や茶色あんの中身はなんですか。」
「企業秘密。ジャム太郎はやっぱり違和感がないか。」
「はい、企業秘密を教えて頂ける様に精進します。」
「じゃ、改めて甘太郎達をこっちのお茶で食べて見てくれるかな。」と、煎茶を出してみる。
「あ、こちらのお茶だと、渋みを感じません。美味しいです。お茶の種類でこんなに感じが違うんですね。驚きました。」
「飲み物によって、美味しさが変わるのでしたら、お茶もセットで販売したらどうでしょうか。この緑色のお茶は飲んだことがないですが、砂糖がなくても美味しいですね。いつものお茶と違います。」
「この緑のお茶は淹れたときは緑だけど直ぐに色が茶色になっちゃうんだよね。淹れたてが美味しい。販売は方法を考える必要があるね。喫茶店でもすればいいかもね。その辺もレポートにまとめて報告して。」
そんなやりとりをしていると、グンネルとエイラさんが降りてきた。
「ご主人様、大変申し訳ありませんでした。家事も一生懸命しますから、ここに置いてください。このお菓子私作りたいです。もっといろいろなもの作ります。アイデア出します。だから、転売しないでください。」エイラさんが後ろで困惑顔だ。
「メイド仕事も頑張れるかな。」
「はい、出来るように頑張ります。ですから、此所に置いてください。こんなお菓子を作って生活するのって夢見てたんです。これで生活が出来るならご主人様に毎晩手籠めににされても我慢します。」
「だから、矢鱈目鱈手は出さないって言ってるでしょ。」
「あ、でもそのくらいの覚悟でやらせてください。」
「はいはい、頑張ってね。 これ追加で出したバージョン違いね、感想はレポートにして提出すること。 エイラさんも食べて見て、エイラさんはレポートは要らないから。」
久しぶりのお菓子なのか、みんな真剣な顔だけど、嬉しそうに甘太郎を頬張っている。美味しい物を食べてる笑顔っていいよね。
試食が済んだら、みんなを連れて1階の店に連れて行く。
「じゃあ、作り方を説明するね。基本はこの鉄板を熱して穴に油を引く。入れすぎるとムラになるから薄めにね。温まってきたら、これで穴に一列おきに生地を入れて、その後あんを乗せる。その後空けて置いた方の穴に生地を入れる。
最初に入れたあんが入っている方の周りを千枚通しで外して、反対側に乗っける。時々ひっくり返して焼き色を見ながら、薄茶色くらいになったらできあがり。」
実演しながら説明する。
「出来たら鉄板の前の溝に並べていってね。
今日は、用意した生地とあん全部使い切っていいから、実際に作って練習してみて。
エイラさん以外は全員するんだよ、サボっちゃだめだからね。自分が作らない時は人の作業を見て、良いところ悪いところ、改善点をちゃんと考え自分でやってみること。全員だからね。まあ、明日も練習出来るけど、他の仕事も覚える必要があるから早く覚えてね。 目安の砂時計は置いて置くから、考えながらやってみて。絶対に自分でやらないと分からないからね。
出来た甘太郎の粗熱が取れたら、こっちの箱に並べて入れて置いて。売り物には出来ないけど試供品くらいにはなるでしょ。」
みんな興味津々で真剣に聞いている。家事と違って興味があるみたいだ。
「将来的には、他の物も提供したいと思っているんだ。だから、まず全員がこれを問題なく作れる様になってもらえないと先に進めない。だから、良く覚えてね。」
「この、生地とあんはどうやって作るのですか。」グンネル積極的だな。
「生地とあんは当分の間僕が作る。作り方や配合は企業秘密ということで。」
「私達に教えてもらえないんですか。」
「うん、まだ調合が途中なんだよ。手持ちと同じ様な物をこの国の材料で作る方法を検討中なの。だから教えられないというのが実情。」
「それば決まれば、教えてもらえるんですか。」
「材料は一応企業秘密だから、公表はしないよ。 ただ、スサンとイヴァンネには手伝ってもらおうかと考えている。」
「如何して二人だけなんですか。私じゃダメなんですか。」グンネルちょっと涙目
「二人は平民で、当分の間自分を買い取る事が出来ないと思うから。君達は実家が買い戻すと言ったら貴族様には逆らえないでしょ。そうすると、レシピとか作り方が企業秘密じゃなくなっちゃうじゃない。 この店が軌道に乗る前にライバル出現とか、この店の経営が成り立たなくなるんだよ。」
「そうですか、残念です。でも、私も買い戻されなければ此所にいていいんですよね。」
「まあ、そうだけど、僕的には早く買い戻して自立して欲しいんだけどね。奴隷でいるなんてあまり好ましくないから。それに、スサンやイヴァンネだって5年くらい働けば、買い戻す位はできるはずだよ。」
「私、ご主人様の奴隷なら一生奴隷でもいいですけど・・・・。でも、スサンやイヴァンネだって、何処かの誰かが引き取りに来るかもしれないじゃないですか。」
「あ、二人は転売しないよ。平民相手なら基本拒否。家族以外の引き取りは断固拒否するつもりだからね。それは君たちも同じ。僕の奴隷になった以上は貴族と言っても家族以外に引き渡さない。例え王族であっても絶対に。でも、仕事してもらえないなら転売を考えるけどね。」
「ちゃんと仕事できれば、置いていただけるのですね。」
「そうだね、それほど多くは望まないよ。でも、秘密は守ってね。」
ワイワイ、キャーキャー言いながら甘太郎を作って行く僕の奴隷達。真剣だけど笑い顔が見られるのはいいな。
一通りさせてみたところ、流石にlv9のイヴァンネ様は完璧だった。スサン様も全く問題なかった。他の娘達もそこそこ出来ているので練習すれば大丈夫そう。
そろそろ夕飯の食材を買いに行こうか。出かけられそうなのはエイラさんとイヴァンネ様、スサン様くらいか。
イヴァンネ様はもう練習する必要もないから、連れ出しても大丈夫かな。他の子の指導はエイラさんとスサン様で対応できるだろう、多分。
「夕食の食材を買いに行って来るので、練習していて。イヴァンネ付き合ってくれるかな。」
「え、デートですか、これ、デートなんですね。」と、上目づかいで聞いてくるので、
「夕食材料の買い物だけだよ。」と、明確に答えて置いた。
『なんで、「デートだと」言ってくれないんですか。そうすれば、優越感に浸れるのに。』
『買い物だけだよ。優越感関係ないんじゃないの。』
『全く女心が分からない人ですね。ここの娘達はご主人様に好意を持っているんですよ。だから、デートと言ってくれると、ただの買い物だけでも満足するんですよ。全く鈍感なんだから。』
『分からないものは、分かりませんよ。』
だから、彼女居ない歴=年齢だったコミュ障(元)童貞に分かる筈無いでしょ。言わせないでよ。




