34 新居契約
部屋に戻ると、フェリシアは居らず着替えに行ったようだった。
今日はスーツに着替える。荷物を整理していると、メイドさんが朝食が出来たと呼びに来たので、食堂に向かう。
食堂では、伯爵夫妻と学園の制服を着たフェリシアが待っていた。スヴェアさん達は使用人に戻ったみたいで別室らしいけど、ミミリィさんは給仕としてしっかり後ろに控えていた。
「おはようございます。お待たせいたしました。」
「おはよう、では頂こうかね。」
「はい、では頂きます。」
朝食は、目玉焼きと焼いたベーコン。サラダに野菜スープ。白いパンとリンゴみたいなジャムだった。
やっぱりちょっと薄味。昨日の「つみっこ」は病み上がりの閣下には味が強かったかもしれない。急にあんなに味が濃いもの食べてお腹大丈夫だったんだろうか。でも、今は元気そうだから大丈夫なのかな。
「ところで、太郎殿。夕べは疚しいことは無かったんだろうね。」閣下、声が怖い。
「あ、はい、お風呂はミミリィさんたちと一緒でしたし、夜も疚しいことをした記憶はありません。(した記憶はないよ。されたけど)」
「そうか、まだ、フェリシアは清い身体でいるんだな。」
「はい、多分大丈夫です。」
「多分?」 伯爵の視線が怖い。
「一緒に入浴したことも一晩同衾したことも事実ですから、それを清くないと言われれば反論は出来ません。ただし、一緒に入浴と言っても後ろ姿しか見ていませんし、夜も行為には及んでいません。」
「わかった。 それ以上は聞くまい。 どのみち2年後は息子になるのだからな。」
「閣下との手合わせが済んでおりませんが。」
「あ、それは良い。太郎殿はわざと負けようとするであろうからな。しない方が良いだろう。負けたりしたら娘の為に平民に負けたと陰口を叩かれ、勝ったら勝ったでフェリシアが口を聞いてくれなくなるだろうからな。儂に取ってのメリットが何も思い浮かばん。」
また退路、絶たれた。
「で、フェリシア、夕べはちゃんと眠れたの。」
「はい、ぐっすり眠ることが出来ました。太郎様の腕枕は最高です。もう、手放せません。今日から学園で太郎様分が補給出来ないのが淋しいです。」
「教えた通りに出来たかしら。」
「はい、大丈夫です。言われたとおりにしましたら、温かく眠れました。」
おい、アンナリーナ様の指示かい。いいのか娘にそんなことさせて。
「では、心置きなく学園に行けるわね。それから、幾ら太郎様の隣が気持ち良くても卒業までは閨房術の実践しちゃだめよ。」
「はい、心得ております。それでは行って参ります。 休みには戻ってきますから、太郎様をよろしくお願いします。でも、駄目ですよ誘惑しちゃ。フェリシアの太郎様なんですから。」
「バカね、私にはレンナルトがいるから、他の男はどうでも良いわ。」
「そうですよね。」よし、言質とったぞ。
「でも、息子とならお風呂も良いわね。裸見られるくらいなら問題はないし、まだ髪を洗ってもらってないわよね。ねえ、あなた。あ、それから、あっちも譲って貰わないとね。」
「ま、息子だからな。」閣下、それで宜しいのですか。
「太郎様、気を付けて下さいね。 こんなこと言ってますけど、甘言に乗るとお父様に殺されますよ。」
「はい、気を付けます。」
「太郎ちゃん、食事の後で別邸の売買契約をしましょう。 書類は執事に預けてあるから、ミミリィと一緒に不動産屋に行ってきて下さるかしら。」
「あ、はい、分かりました。でも、不動産屋を介さないといけないのですか。」
「そうね、不動産屋を介さない売買で「不正に売買しているのでないか」とか、「何か弱みを握られているのではないか」といった疑念を抱かせるのは、貴族としてはマイナスなのよ。
だから正規の手順を踏むのよ、手数料が掛かるけど仕方ないよね。
それから、不動産屋に情報を流すことで、太郎ちゃんが別館の主人であることがはっきりするのよ。こういう情報は筒抜けだからね。」
「そうなんですね。分かりました。」
フェリシアはミミリィさんの御者で学園に戻って行き、ミミリさんィが学園から帰って来た後、自分と不動産へ向い、別邸売買の契約をすることになった。
ミミリィさんと馬車が戻り、別邸に運ぶ荷物を載せる。思ったより少ない感じがする。
いつもと同じ様にミミリィさんが御者席で自分は隣に座る。馬車の中は誰も乗っていないが、一応別邸に運び込むことになる荷物(フェリシア分とミミリィさん分)が載っているので、少ないとはいえ、それなりの重さがあるみたいだ。
「荷物持って来てしまっていいのですか。」
「私は泊まりの勤務があるので毎日は帰れませんが、太郎様が居る場所が私の家ですから、仕事用の着替え以外は別邸に移します。フェリシア様分は学園がありますので、別邸に泊まる為の荷物だけです。」
「今日は、どうするのですか。」
「今日はもちろん別邸に泊まります。今日は私が占有して甘える日ですから。」
「そうでしたね。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。不束者ですが末永くよろしくお願いします。それから、私のことはミミリィと呼んでください。フェリシア様だけが呼び捨ては嫌です。」
「分かりました、ではミミリィ。今日の予定は何かありますか。特に無いようでしたら不動産屋の帰りにでも、日用品を購入したいのですが付き合ってくれますか。」
「もちろんです。私も使う物ですもの、一緒に選ばせていただきます。ただ、一度別邸に寄り荷物を降ろし、馬車を本邸に返してからゆっくり選びませんか。太郎様は収納をお持ちですから荷物にはならないでしょうし、本邸から本当のデートしながら買い物したいです。今日の仕事はここまでで、後は今日一日太郎様を占有する日ですから。」
そんな話をしているうちに、不動産屋に着いた。
話がついている様で、玄関を入ると直ぐ応接室に中に通され、契約内容の確認だけしてサインをすれば終了だった。
契約そのものは、「別邸の売買契約」だけど、伯爵家が二年後以降は同額での優先的に買い戻せる契約だった。
要するに、フェリシアが卒業する二年後に同額で伯爵家が買い戻す。すなわち、二年間無料で借りる。それも改造自由という破格の契約だった。
もちろん、買い取り請求は拒否できるが、他人に売り払いはできない。売ったとしても売却先から当初の売買額と同額で伯爵家が買い取る(拒否権なし)というものであった。
ま、当然だよね。息子(仮)のための売買契約(ほとんど偽装)だもの。
書類にサインし、大金貨20枚と不動産屋の手数料金貨6枚を払い契約が完了する。やはり3通作成し、自分、伯爵家、不動産屋で保管することになった。なんでも、偽造されても他の2通と付け合わせる事で正当性を主張できるということになるらしい。
契約が終わり、そのまま馬車で別邸に向かい荷物を片付けることにした。
ちなみに、グンマーの前橋市は都市成長率ランク
・子育てしながら働ける環境がある 【全国2位】
・移住者にやさしく適度に自然がある環境で仕事ができる 【全国4位】
・リタイア世代が余生を楽しみながら仕事ができる 【全国8位】




