28 解呪返呪
「あ、原因が分かりました。」
肩から手を離し、床にあぐらをかき、頭を垂れる。
「早いな。もう分かったのか。エルサが手配した鑑定士でも分からなかったものをか。」
「細かい事は、企業秘密ということで、未来の義理の息子(仮)を信用してください。 伯爵様の不調原因は「衰弱」の呪いと、「毒物」の中毒ですね。」
「呪い? 鑑定士でも分からない呪いがあるのか。」
「鑑定をした鑑定士よりも、高位の呪術師の方が良かったかも知れませんが、多分この国のでは王宮の高位呪術師位でないと判別も解呪もできないレベルですね。」
「君はそれが分かると言うのか。」
「はい、企業秘密と言うことで。一応言っておきますが、呪いは僕が掛けたのではありませんよ、僕はこの世界に来てまだ3日目で、1ヶ月以上前から呪いを掛けるなんて出来ませんからね。」
「分かった、信じよう。が、分かったところで、高位呪術師でないと判別出来ないような呪いを解除することが出来るのか。」
「出来ますよ。ご安心ください。未来の義父(仮)になるかもしれない閣下を、こんな下らないことで失いたくはありませんから、してみせます。
それで、僕の国では「人を呪わば穴二つ」と言って、他人を呪うときは呪詛返しにあうことを考えるのが普通です。しかしながら、多分、呪いを掛けた者は返されることなど全く考えていないでしょう。自分以上の呪術師は居ないと高を括るって好き勝手なことをしているのだから、お仕置きが必要だと思うのです。僕の国では、「倍返し」という言葉がありますので、少し多めにお返ししたいのですが如何でしょうか。」
「構わん、太郎殿、懲らしめて遣りなさい。」
「お言葉に甘えさせて頂きます。」 ○に変わってお仕置きよ~。キラ~ン。
「それから、毒物ですが、ヒ素ですね。元の国では「イワミ」いう名ので害獣駆除に使われていたものです。 少しずつ投与されたのでしょう、衰弱に対する薬という名目で。 まあ、薬師は呪いによるものかは分からないと思いますが。ちなみに、この薬は?」
「エルザが手配した薬師のものだ。原因不明のため栄養剤と言っていたな。」
「その中に、微量ずつ混ぜられていたということですかね。 では、グダグダ言っていても仕方ないので、始めさせて頂きます。」
伯爵に一礼し、肩に触れる。
ステイタスボードと念じ、呪詛を有効化する。 脳内作業なので、二人にはブツブツ言っていることしか分からない。
「呪詛起動:解呪。リンクそのまま。」
伯爵の身体が光り身体から黒い靄の様なものが涌きだしてくる。黒いもやが3本の流れのように細く棚引く様に流れ出す。
「返呪:lv7 衰弱、振戦・隠蔽付加。」
伯爵の身体が光り、追い立てられる様に黒い靄が3本の流れとなって部屋から出て行くのを、アンナリーナ様が惚けた顔で見送っていた。
「呪いは、先方にお返ししました。振戦と隠蔽を付加しました。徐々に効いて来るでしょう。衰弱に振戦を付加しましたので、自分の意思とは関係なく手足に震えがきます。自分では止めることが出来ないので、じっくり反省してもらいましょう。 2~3日して振戦が出ている呪術者を探せば誰がやったか分かりますよ。」
「太郎殿は怖いな。」
「将来の義父(仮)に手を出したのですから、義理の息子(仮)が仇討ちするのは当然ですよ。と、言ってもまだ義父(仮)は健在ですけど。 では、お体の方に移りますが、どうですかご気分は?」
「まだ、身体は重いが、気持ちは壮快だ。」
「では、横になって頂けますか。身体の中の毒素を抽出し、治療を行います。」
伯爵にベッドに横になって肩を出してもらう。右肩に手を乗せる。フェリシアちゃんだったら、心臓とか言って胸に置くのだけど男は肩でいいや。
「物質精錬起動:ヒ素抽出9分9厘・精錬 」
肩に置いた手が光り出すと共に、伯爵の身体が光り出す。暫くの間眩く光った後、光は落ち着きほのかな光となり消えた。 僕の手には小さな金属様の粒が1つ残った。
一応、ヒ素も必須微量元素だから、全部取っちゃだめなんだよね。
「これが、ヒ素ですね。 危ないですから瓶にいれて僕のアイテムボックスで保管します。 大丈夫ですよ使いませんから。あとで粉にして海にでも投げておきます。」
紙に丸め瓶に入れ蓋をしてからアイテムボックスに仕舞う。
「治癒魔法起動:治癒・再生」
右手が光り、また、伯爵の身体が光りだす。ヒ素に冒された内臓器官などの治療と再生を行う。暫くして光が収まる。
「終わりましたよ。ご気分は如何ですか。 古傷なんかも治っちゃっているかも知れないですが、それはまた、ご愛敬ということで。」
「お、おぅ、身体が軽いぞ。」
血色が良くなった伯爵が微笑む。
「あなた。」と、アンナリーナ様が泣きながら伯爵に抱き着いた。
うん、これは見ていて良い物なのかな。仕方ないので落ち着くまで暫く待つ。
甘い夫婦の喜びの場面を見せつけられた所で、
「すみません、アンナリーナ様。アンナリーナ様も鑑定させて頂いてよろしいでしょうか。」
「何か、気になるところがあるのかしら。」
アンナリーナ様が涙でぐしゅぐしゅになった顔で答える。
「閣下を鑑定して感じたのですが、アンナリーナ様にもちょっと違和感を感じるのです。」
「いいわよ。息子に隠すことは無いわ。」 あ、まだ義理(仮)なんですけど。
「では、お言葉に甘えて。 閣下の隣にお座り頂いてよろしいですか。」
伯爵様の隣に腰掛けてもらい、伯爵様に一言断ってから肩に触れる。
「鑑定」 ほのかに、生活魔法で右手を光らせる。
名前 :アンナリーナ=エステルグリーン エステルグリーン伯爵家正室
種族 :人間
性別 :女
年齢 :35
状態 :健康
受呪 不妊(複数Max lv5):隠蔽
一応、スリーサイズとかも確認はしましたよ、教えてあげないけど。ミミリィさんに勝る立派なプロポーションでした。あと、数年もしたらフェリシアちゃんもこんなふうになるのか。そして自分のもの・・じゃなくてどっかの貴族のものになるんだろうな。
「分かりました。」 不妊って、なんか、分かりやすい結果だな。
肩から手を離し、ベッドから離れ二人の前であぐらをかき頭を垂れる。
「結果をお伝えします。鑑定はお体の状態を鑑定したのであって、決して疚しいことを鑑定したのではありませんのでご承知置き下さい。」
「いいわよ、何をしても。息子で、夫の命の恩人なんだから。」だから義理(仮)ですって。
「では、報告させて頂きます。アンナリーナ様にも閣下と同様に呪い掛かっていました。」
「え、呪い。 何の。」
「はい、「不妊」の呪いです。これも閣下程ではありませんが、それなりに高位の呪いですね。」
「いつから」
「済みません、何時からか迄は鑑定出来ませんでした。こちらも、解呪させて頂いてよろしいですか。」
「是非もありません。直ぐにお願いするわ。」
「これも、倍返しですよね。」
「当然です。何を躊躇うのですか。」
ベッドに近づき、伯爵に一瞥しアンナリーナ様の肩に右手を掛ける。
「呪詛起動:解呪。リンクそのまま。」
アンナリーナ様の身体から伯爵の時と同じように黒い靄の様なものが涌きだしてくる。 やはり、黒い靄が5本の流れのように細く棚引く様に流れ出す。
「返呪:lv7 真性包茎・精嚢萎縮・異臭・不正出血(治療可)・隠蔽付加。」
アンナリーナ様の身体が光り、追い立てられる様に黒い靄が5本の流れとなって部屋から出て行くのを、伯爵があんぐりとして見送っていた。
「終わりましたよ。」
「あ、はい。 もう終わったの。 で、何をおまけに付けてあげたのかしら? 御礼はちゃんとしてくれたのよね。」
「真性包茎と精嚢萎縮です。あと男とは限らないので不正出血と異臭を付けておきました。」
「ふふ、やっぱり怖い子ね。」
「この世に生を受ける筈だった義弟(仮)・義妹(仮)を亡き者にしたんですから当然の報いです。」
キッパリ。これで弟が生まれてくれれば、後継者問題は解決! フェリシアちゃんが当主になることもなく、由緒正しき貴族に嫁入。自分は平民生活を満喫できるぞ。 って、なんかモヤモヤする感じは何なんだろう。
「閣下、元気になった所でお腹空きませんか? 僕の生国の郷土料理ですが如何でしょうか。お口に合わないかもしれませんが、暫く食事を十分取れていなかった胃には優しいと思います。」
と、言ってアイテムボックスから確保しておいた熱々の「つみっこ鍋(複写済)」と、お玉・木製食器・木製フォーク・スプーンを取り出す。(木製じゃ失礼かと思ったけど、磁器に金属器じゃ熱くて持てないし、食べられないでしょ。)
よそうのはアンナリーナ様にお任せして、廊下に追い出したフェリシアちゃん達を呼び




