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174 馬車鉄道


「それで、その馬車鉄道というものは具体的にどんなものなのだね。」


「基本的には今の馬車と変わりませんが、道を走る車輪の内側に別に鉄の車輪をつけその車輪でレールの上を走ります。

 馬車を引く馬は、レールが馬の動きを邪魔しない様に一頭立て、または直列2頭となるでしょうか。

 レールの上を走る時は鉄輪、道を走る時は通常の車輪となる様な構造にします。」


「そんな事が出来るのかね。」


「レールは高さを付けますから、レールの上に馬車があるときは「鉄輪はレールに着くが普通の車輪は地面に届かない。」構造にします。ターミナルや駅ではレールの横の土をあげ「通常車輪は地面に着くが鉄輪はレールに着かない。」という構造になりますね。レールから外れてしまえば通常の馬車と同じですから自由に走ることが出来ます。」


「そのようにうまく行くのだろうか。」


「うまくゆく様に考えますよ。それから、新街跡から東西・南北方面に幅20m位の直線の用地確保をお願いできればと思います。あ、北側は麓まででいいです。馬車鉄道で上り下りできる勾配の確認しながら、延長の可否を考えます。急傾斜でなければ多分大序部だと思うのですが、やってみないとわかりません。」


「それが、線路の敷地ということか。」


「そうなります。」


「幅20mというのは一頭立て馬車を引くには広すぎないかね」


「同方向に線路のレール間隔が1.5mとしてそれを3本平行に引ける幅。隙間を空けると大体3m×3本で9m、反対方向にも同様に3本のレールで計6本の線路を敷設できる用地を確保したいのです。1本だけだと何か起きた場合に使えなくなりますからね。

 それから駅とする場所には、馬を休ませる場所とか、馬車を止めて置ける場所を確保したいですね。休憩中の馬車が邪魔で次の馬車が動けないなんてことは困りますから。

 あと、実際の運用に目処がついたら。「急行」を作りたいのです。」


「急行とは何だね。」


「基本的に運用は各駅に停車するのを原則としたいのですが、急ぐ人用に主要駅に止まるだけの馬車ですね。できれば馬の休憩時間は取らずに、駅で馬だけ変えて馬車は休憩せずに目的地まで行けるような感じです。当然割増料金をいただきますけど。」


「確かに、各駅に止まることを鬱陶しいと感じる者もいるだろうからな。」


「だから急行専用のレールも確保したいんです。それで3本。」


「そうか、そういうことを考えると広い土地が必要なんだな。

 郊外の新街跡を選ぶ理由は、ターミナルもそうだが線路の用地確保が城内よりも容易であるという所が大きいのかな。」


「はい、そうなります。」


「わかった。エレオノーラもそれで良いのだな。」


「私の夫の腹案以上のものがあるのでしたら考えますが、そのような物はこの世に存在しません。私でもそこまでは思い至りません。流石は私の夫です。」て、いうか何も考えていなかったろう。

 それに、エレオノーラ達には「新街がそこにあること」が前提だから、余り思い切った考えは出ないと思うし。




「で、実際問題として太郎殿の案は実現は可能なものなのかな。」


「馬車は大丈夫でしょう。エステルグリーン侯爵領は鉄が取れますから鉄輪を作ることは可能だと思いますし、試作品は自分が作りますし、レールも大丈夫でしょう。

 目処が立ったら車両の量産はエステルグリーン侯爵領内で事業化します。

 実際の稼働に向けては線路敷地の確保、それから中継都市の駅整備、それから実際の運行をどの様にしていくかというのが課題になりますね。」


「分かった。我が領地の課題とすれば、先ず線路の用地確保を進めるということだな。」


「はい、そうなります。失礼な言い方になりますが、新街の維持経費がほぼ不要になるのでそちらの財源を充てていただけると財政的負担は最小限で済むかと思います。後は馬車と線路の準備が出来たら運用を検討して行くことになりますね。先ずは、エステルグリーン侯爵領とアンドレアソン公爵領を繋いでみてからになります。その先の線路を作るにも年単位となりますから追々でしょうか。」


「楽しそうだな。分かった準備を進めよう。」


「よろしくお願いします。」





「ところで、太郎殿は何故この別館にお泊まりなのかな。それに私が認識していた別館とは全く違うのだが。50年前頃祖父が在領していた当時の状態というか新築したての様な気がするのだが。」


「全館にクリーン魔法を掛けて、劣化しているところは改装してみました。公爵に無断でしちゃいましたけどね。」


「そうか・・・・。」


「叔父様、太郎様のなさることは『考えると負け』ですから、そういうものだと思ってくださいませ。」


「そういうものなのか。」


「そうですよ。今日のことだって叔父様には思いも付かないことでしたでしょ?」


「まあ、そうだな。」


「わたくしが選んだ夫ですからね。」エレオノーラ惚気なくていいからね。


「僕は一応、領主代行を勤めるよう公爵様から言いつかっていますが、エレオノーラに子供が出来るまでの間の代行ですし、エステルグリーン侯爵領領主代行が王命ですからそちらの方が優先度が高いです。なので、基本的にはエステルグリーン侯爵領に在領することになりますので、こちらは別館で十分なんです。」


「そうか。まあ、確かに勅命の方が優先ではあるな。」


「はい。明日僕たちはエステルグリーン侯爵領に向かいますが、エレオノーラ達は此所に留まることになります。僕が出て行った後はエレオノーラ達は本館に移ってもらおうと思います。その方が経費も掛からないし、領主令嬢が別館というのも変ですからね。」


「分かった。それで、太郎殿。改めての話なんだが。」


「はい、何でしょうか。」


「メイド長と執事長のことだが許してはもらえないだろうか。」


「メイド長のこと?。 ああ、僕たちを別館に押し込めたということですか。」


「まあ、それもあるが、アルベルティーナ王女に対する不敬とかだな。」


「それについては、アルベルティーナは宥めてますから外交問題にまでは至らない筈です。そうなったら、自分の夫である領主代行の僕の首を自分で絞めることになりますからね。」


「確かにそうなんだが。問題視しないというのも当家の対応としては不十分だと言われても仕方ないのでな、メイド長と執事長の解雇ということで折り合いを付けてはもらえないだろうか。」


「僕は構いませんが、お二方ともこの家での功績が大きな方ではないのですか。」


「まあ、我らが生まれる前からこの屋敷で働いておったからな。当家が筆頭公爵家として当主が王都詰であり領地のことは次代か先代が経営していたが、勝手を知っている両名には代々世話になっていた。

 しかし、彼等ももう歳だ。太郎殿の様な新進気鋭の旗手とは反りが合わんだろう。その一例が今回のことと私は思っている。

 今回のことを契機として引退し次代に譲るのも良い頃合いだと思うのだ。かといって長年の功績もあるから放逐するわけにもゆかないからな、私の屋敷で引きとろうと考えている。如何だろうか。」


「エレオノーラが良いのなら構いません。」


「私は構いませんよ。二人とも今回のことを反省しているなら考えますけど、多分本心からは反省というか納得は出来ないでしょうから。よろしいのではないでしょうか。」


「では、二人は預からせてもらおう。」


 元世界の知識と魔法で高速鉄道と思ったでしょ。でも、中世レベルでは早すぎるのは運用できないですからね。それに主人公は自動車王国グンマーだから、滅多に乗らない鉄道には詳しくなく蘊蓄もありません。それでも、横川(碓氷峠鉄道文化むら)には両親に連れて行ってもらった事はあるようです。

 それに、「神は高速を赦さない。人が先触れをして前を走れ!」みたいな横槍が入らないように馬車鉄道にしました。


 ちなみに、群馬でも高崎・前橋・渋川あたりは明治初期は馬車鉄道が路面電車みたいな感じで走っていたみたいですし、碓氷峠も急勾配で汽車が上れないので馬車鉄道が走っていた時期があります。


 それから、廃止になったレールは「レール式大聖牛」として前橋公園下に現存していますよ。

 ちなみに大聖牛は治水の設備で、川の流れから護岸を守るもの(骨組みに蛇籠に入れた石を載せて水流を弱める。詳細はググってね)で武田信玄が考案したと伝えられています。玉村にも治水施設として再利用されているものもあります。

 ちなみに魔法少女聖地の直ぐ横です(笑)


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