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17 試験販売

 街中に入り、いかにも高級そうな宿の前で止まった。ミミリィさんが御者席から降りてそのまま宿へと入って行き、暫くして出てきて部屋がとれた事を告げた。

 馬車と騎馬を宿の人に預け宿に入る。また、ワンフロア貸し切りのようだ。宿の人に案内され階段を上る。



 今日は、フェリシア様とミミリィさん。ベルタちゃん、アルヴァちゃん、カロリーネさん。スヴェアさんは自分と同室って、どういう部屋割りなんだよ。


「昨晩はフェリシア様のお世話ができなかったので、今日の太郎様のお世話はスヴェアが担当します。」


「いや、そうじゃなくて。ミミリィさんは「嫁に行けない体にする」っていう前提があったけど、スヴェアさんは関係ないでしょ。ただの未婚の妙齢の女性じゃないですか。男と同室ってそれマズイでしょ。」


「前提がある私に何もしない太郎様が、前提がないスヴェアに何かすることは無いでしょ?」


「いや、だって夕べ『未婚の男女が同じ部屋で一夜を明かすことは、事象の有無にかかわらず既に行為成立済みと判断される。』って言いましたよね?」


「たとえ、寝顔や下着姿を見られたからといって「無防備の女が隣に居るのに何もできないヘタレ」と、一夜同室同衾といっても自慢にもなりません。

 それとも、私には何もしないヘタレでも、スヴェアには手を出すと。私がスヴェアに劣る、魅力が無かったと言いたいのですか。」


「すみません。そういうことではありません。でも、でも、それは好ましいことでは無いような。それに、何か今とても酷いことを言われた気がするのですが。」


「事実を言っただけですよ、では、フェリシア様行きましょう。」


昨日と同じように、二人廊下に残された。

「あ、じゃあ、一応、部屋に入りましょう。」




 スヴェアさんと部屋に入ったもののすることがない。沈黙の時間が流れる。

 何か会話をしなければと思うが言葉が出ない。 ただのコミュ障には荷が重いぞ。


「あの~、太郎さんは王都で商売を始めるのですよね。」

 スヴェアさんが言いにくそうに聞いた。


「あ、はい。冒険者と食物屋を適当にやろうかと考えてます。」


「食べ物だけなのですか? 服とかは売らないのですか。」


「服ですか。将来的にはそういうのもいいかもしれませんね。」


「今はまだ販売はしないのですね・・・。」


「え、何か気になりますか?」


「あ、ミミリィが着ていたのが私も欲しいな~ っと思ったんですけど。」


「ミミリィさんの? 長袖の肌着ですか?」


「え、それじゃない方」


「あ、女性用下着ですか。手持ちが無いわけではないですが、測らないとサイズが分かりませんよ。それからサンプル用だから数はありませんけど。 って、なんでそんなこと知っているんですか。何時聞いたんですか。」


「太郎さんが武器屋に行ったあと、ミミリィの部屋に行って夕べの事を聞き出そうとしたら、『何も無かった。』と言われて、それでもしつこく食い下がったら下着を貰ったと言って見せてくれたの。あれ、私も欲しいです。普段は動きやすい様に布を巻いているのですが、ちょっと苦しいのでミミリィが着けていたのが私も欲しいんです。」


「えぇ、まぁいいですけど。男が女性用下着を持っているなんで、気持ち悪くないですか。そんなヤツに体を測られるのですけど、本当にいいんですか?」


「我慢します。」  即答だった。


「あ、じゃあ下着になって下さい。 ってここではなくて、別の部屋で脱いで来て下さいよ。」その場に脱ごうとするスヴェアさんを押しとどめ、洗面所に行ってもらった。

 ほんとは、昨日鑑定してるからサイズは知っているのだけど、そんなこと言えないので実際に測ることにした。

 

 スヴェアさんが軽鎧を脱いで、キャミソールみたいなヤツとひもパンになって戻ってきた。ちょっと顔が赤い。


「じゃ、後ろ向いて上をたくし上げて下さい。」

 後ろから手を回して、胸とか測る。ミミリィさん程ではないがポンキュッポン。筋肉質だけど女性の柔らかさを感じた。ふと、この背中の向こう側は生おっぱいじゃないか、このまま手が滑って抱きしめて揉みしだくという邪な考えが浮かぶが、煩悩退散!理性で抑えて終わりを告げる。

 ふと、たくし上げなくても薄手のキャミソールなら、そのまま上から測っても大差無いような気がしてきたんだけど、いや、やっぱりきっちり測った方がいいよね。絶対。これは譲れないとしよう。決して下心満載ってだけじゃ無いんだからね。本当だよ。



「スヴェアさん位胸があるとミミリィさんと同じフルカップがいいですね、色はどんな感じがいいんですか?」

 昨日、ミミリィさんの下着と同じシンプルな形で色・サイズ違いをサンプルにとポチったものしかないが色は数色ある。アイテムボックスからテーブルに並べて出し気に入った色を選んでもらう。渋くダークブラウンがいいそうだ。


「上下2枚ずつでいいですか?サンプルなのであまり枚数が無いんですよ。」


「はい、お願いします。」


「スヴェアさんのサイズだとこれになりますね。試してみて下さい。」

 昨日の轍を踏まないように、付け方を説明してから渡す。


「って、ここじゃなくて、別の部屋でお願いします。」    

 スヴェアさんニコニコしながら洗面所に出て行き、暫くするとブラとショーツだけの格好で戻ってきた。下着モデルみたい、スタイルがいいから映える。


「どうですか。」


「あ、とてもお似合いです。でも、よいのですか? 妙齢で未婚の女性が男の前に下着姿で出たりしない方がよいのではないでしょうか。それに、身の危険を感じていただいたほうが良いかと思います。」 目のやり場に困るし。


「あ、そうですね。嬉しくって出てきちゃいました。上着て来ます。」と恥ずかしそうに戻っていった。後ろ姿もモデルみたいだわ。


もしかして、ミミリィさんこれをやらせたくてスヴェアさんと同室にしたのか。そんなことしなくてもアイテムボックスから出すだけなら何処でもいいのに。男と二人で同室なんて失うものの方が大きくないか? 女心はわかんないや。

 ま、一応ネット通販のことはバレていないのだと思うけど、まだあまり広めて欲しくないな。


 そんな事を考えていたら、コットを着たスヴェアさんが戻ってきた。


「ありがとうございました。 おいくらですか」

 ふと、思ったんだけどスヴェアさん昨日と口調が違わなく無いか。


「今のところサンプルなので、上下セットで銀貨6枚位で考えてますがどうですか?」


「2セットで大銀貨1枚銀貨2枚ですね。私にはちょっと高いかも、でも貴族とか商人とかお金持ちの人が買うと考えれば、どう見ても高級品なのでとても安いですけどね。」


「では、スヴェアさんが特別友人価格ということで銀貨8枚でどうですか。ただし、暫くは口外しない約束でお願いします。 サンプルがなくなっちゃいますから。」


「分かりました。でも、そのうち一緒にいるみんなにはバレちゃいますよ。」


「バレたら、「そのうち売り出すらしいから待っててね。」と言って置いて下さい。だって男が女性用下着を売ってる店って、怪しいでしょ。僕が売り子をするのは難しいので女性使用人を確保しないと店は開けませんからね、販売するとしても落ち着いてからですよ。

 ただ、仕入れに問題があるんですよね。グンマーから仕入れないと駄目なので、その方法が見つからないとサンプルで終わっちゃいうのが難点です。」


「分かりました。あと、ミミリィが着ていた暖かそうな肌着は?」


「サンプル切れで、あれはもう無いです。次の機会に って、何時になることやら。」


 そんなことを話していたら、宿の人が夕食の用意ができたと告げに来たので、食堂に向かうことにした。


 ふと、「測らなくてはいけない」って言ってますけど、サイズって調整できる様になっていた気がするから1cm単位とかじゃないですよね。良く分からないけど、多分。このへんは彼女もいない主人公の思い込みということで御容赦ください。


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