161 赴任
朝チュン。
目が覚めたら・・・、やっぱり同じ体勢だった。本当に夜間呼吸できているのかな?
「おはよう、朝練に行くから降ろすよ。」と、イヴァンネを降ろし、軽くキスする。
「おはようございます。ご主人様。」と微笑んだあと、今朝は両手で押さえられること無く、体にすり寄って来た。
「大丈夫?」
「え、優しくしてくれたから大丈夫。私の太郎ちゃんは私に酷いことなんてしないから大丈夫よ。だけど、そんなこと聞かないの。恥ずかしいんだからね。」
と、指で口を押さえられた。イヴァンネ真っ赤で可愛い。普段とは全然違う。乙女チック?
でも、やっぱり朝のルーチンワーク?は必須なのか両手で押さえられディープな世界へ。
暫くして、気が済んだのか「太郎様分補給完了しました。」と何時もの様に微笑む。
「じゃあ行って来るね。」と、ジャージに着替えたら「行ってらっしゃい。」と毛布を体に巻いて手を振ってくれた。 はにかんだ様でやっぱり可愛い。本当に女神様だわ。
でも、その女神様にあんなことやこんなことして本当に罰があたらないのかな。ちょっと怖い。
ちなみに桐箱奉納の儀は夜の内に済みだよ。これで名目上四箱目。イヴァンネの汚物を見るような、心の底から軽蔑しきった眼差しは見なかったことにした。
玄関まで行くと、何時ものメンバーは揃っていてたけど、カミラは不機嫌そうな表情を隠せないみたい。
走った後、何時もの様に打ち合いして、その後カミラに無刀取りを挑まれた。
今日はいつになく殺気立っていて怖い。一応力の差を見せつけてはみたけど涙目で睨まれた。仕方ないので「今日、馬車の中で頭ナデナデしてあげるからね。」と耳元で囁いたら機嫌は直ったみたい。安いな。
全員で食べる最後の朝食のあと、自分、エレオノーラ、ミミリィ、スヴェア、イヴァンネ、ティルダ、クラーラ、スティナ、エディット、マルギット、アルベルティーナ、カミラの12名で任地に赴くため馬車2台(アンドレアソン公爵家から2台借りた。)に分乗した。御者はミミリィとスヴェアがしてくれた。
御者は一応交代要員としては自分とイヴァンネが補助する予定。荷物は全部アイテムボックスに収納したので、簡単な手荷物だけ載せている。
庭には第一師団第一分団第五分隊の精鋭50騎が護衛として待っていてくれていたので、挨拶をしてから出発となった。
行程は5日間でアンドレアソン公爵家着、二泊滞在して、その後エステルグリーン侯爵領まで5日間、計11日を予定。直接エステルグリーン侯爵領に直接行けば7日で到着するのだけれど、エレオノーラを実家に預ける都合があるのでアンドレアソン公爵家を経由するんだよ。
初日は、ミミリイの御者で、エレオノーラ、エディット、マルギット、アルベルティーナ、カミラと自分、スヴェアの御者でイヴァンネ、ティルダ、クラーラ、スティナと別れた。初日だからね、一応、正夫人と元女神ズに分けたよ。アルベルティーナとイヴァンネは別にしたかったしね。
馬車の中では、当然権利と言わんばかりにカミラは自分の横に来て膝枕状態で頭ナデナデを主張してました。当然の様に反対側にはアルベルティーナがいて、同じことを強要された。エディットとマルギットの羨ましそうな視線が怖かったので、途中で代わりエディットとマルギットもナデナデしてあげたけどね。
アンドレアソン公爵領と王都間の街道は幹線で人通りも多いので、特に危険なこともなく順調に進むことができた。
道は平野を真っ直ぐ進むだけだから風景は変わり映えがしないのだけど、郊外になるとやっぱり道の管理が行き届いてないのか凸凹や水たまりが補修されていない所も多かった。整備出来ればもっと人の動きが活発になるのにね。王都との幹線がこの程度だと、とても良好な関係であったとは思われないアンドレアソン公爵領とヴィークストレーム公爵領間の道なんて・・・。まあ、頑張るしかないか。
道中はちゃんと宿に泊まり野宿はしなかったよ。一応(言うと怒られるから言わないけど)王女様がいるからね、捕虜として連行中は野宿したけど今は公爵家後継の正夫人だから不必要な野宿はさせられない。
昼食は休憩兼ねて作った。「つみっこ」、「カレー雑炊」等の簡単な料理にした。
宿がお弁当を作ってくれたりもしたけど、やっぱり汁物が欲しいので作ったよ。
勿論、護衛をしてくれる第五分隊分も用意したよ、イヴァンネや分隊の料理担当さんが手伝ってくれたので割と楽だった。
宿は、自分達12名は同じ宿、第五分隊の騎士達は分散して宿泊した。騎士達だけ野宿は避けたかったので、護衛リーダーさんに「ちゃんと宿で寝て、体力を温存するように」と厳命して宿を取らせた。自分達は結界張ってしまえば、問題ないからね。
だから、皆ぐっすり眠れたみたいで、護衛はきっちりしてもらえた。まあ、敵は現れなかったけどね。(遠くにいた魔物らしきものは遠距離雷魔法で駆除したし、マップで見つけた、盗賊集団も同様に駆除しておいたから、平和な移動だったよ。放置すると領内でワルサするだろうから、事前に予防駆除は必須でしょ?)
夜は、一泊目がエレオノーラとエディット、二泊目がマルギットとスヴェア、三泊目がティルダとクラーラ、四泊目がスティナとイヴァンネが添い寝してくれた。
勿論添い寝だけだよ。添い寝だけ。朝気付いたら掛け布団になっていたこともあったけど、普通にパジャマ着ていたから問題はありません。キッパリ。
王女ズには、「館で落ち着いてからにしましょうね。王女様を旅の宿で添い寝させたなんて知れたら外交問題になりますから。」と言い訳にもならないことを主張し先に延ばした。
その代わり、カミラは同じ馬車にいるときは膝枕で頭ナデナデを主張され続けたけどね。
アンドレアソン公爵領都アブヴリーは、筆頭公爵領の都だけあって、王都程ではないけど巨大な城砦都市だった。流石に筆頭公爵の居城であり、対エベスル国への備えの城という感じがする。
そもそも、ティヴァル王国は対ウニ国にヴィークストレーム公爵、エベスル国に対してパヨーク街道をアンドレアソン公爵、モナーオ平原をグランフェルト公爵、ルピーポッ街道をグランルンド公爵が守っていた。だから、それぞれの領都は王都を守る最前線の城を兼ねてもいたらしい。北部の海岸線は伯爵領が並び、南部対ルグミアン帝国は王家が直接対応する配置だったらしい。東側は同盟関係だから守る必要がないとされていた。
ウニ国もエベスル国も、ルグミアン帝国もここ数十年は小競り合い程度で、終戦協定は締結出来ないがそれぞれの国家間は険悪な関係ではなくなり緊張もほどけてきていた。
ただ、まだ、戦争中ということでエベスル国はヴィークストレーム公爵の「甘言に乗ってしまった」というのが現状らしい。そうでもなければ、カミラがアドルジュ高等学園に留学なんて危なくてできないからね。
その頃までは、バカ王もバカでなかったみたい。
アンドレアソン公爵領に入って二日目、領都の巨大な壁を認められる位になると、道も整備され快適な馬車の旅となった。
今日は、ミミリィと自分で御者をした。ミミリィ車はエレオノーラ、エディット、マルギット、アルベルティーナ、カミラの6人、自分の方には、イヴァンネ、ティルダ、クラーラ、スティナとスヴェアが乗った。と言っても、スヴェアは申し訳ないからと自分一緒に御者席にいたけどね。それもピッタリ寄り添って。
城門には当然門番がいたけど、エレオノーラの顔パスで、馬車2台と50騎は止められることもなくすんなり入城できたよ。
大通りは、流石筆頭公爵領と思えるほど人も多く賑わっていた。 あ、この街を治めろっていうのか・・・。 荷が重いな。
行政府?に立ち寄ってみたけど、もう夕方だったから今日の業務は終了したみたいで誰もいなかった。
残業している者すら居ないっていいのかな、それでも。グンマー県庁なんていつ見ても不夜城の如く電気がついているのに。
一応行政の実務担当者の人達の顔を見ておきたかったんだけどな。仕方ないから明日の朝改めて挨拶に来ることにした。
アンドレアソン公爵領行政府は、夕方定時退庁?みたいですけど、グンマー県庁は遅くまで電気がついてますよね。休日もついていることが多い感じがします。お役人って9時5時が基本と思っていたんですけど実態は違うんでしょうね。
お国の人達なんかになるともっとなんでしょうか。




