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15 虚実

誤字修正しました。


 懸命な謝罪のあと、どうにか許しをもらい二人で大きなベッドの両脇に入る。


 今日3回目の平手打ちだ。うち2回は事実だが邪な考えと欲望に基づいてでは無いぞ。それに、1回は未遂だぞ(こっちは邪だけど)。

 これから先も、平手打ちが続くのかな、気を付けよう。



 ベッドの両端に寝ているので、二人の間は2m近く離れてるから、ちょっと動いても迷惑を掛けないで済みそうだけど、左右の掌に柔らかくてぷにゅぷにゅした感覚が残り寝付けない。


「それでは、おやすみなさい。」とミミリィさんに声を掛けて寝ようとすると、


「間が空いて寒いので、近づいていいですか」と言われた。


「あ、身の危険を感じない程度でしたら、大丈夫ですよ。多分」


「太郎様も近くに来て下さい。私だけ動くと私が真ん中になってしまい申し訳ありません。」

 二人してゴソゴソと近づく。ちょっと近くに寄り過ぎて、こちらを向いていたミミリィさんの体に腕が当たってしまった。


「ごめんなさい。」そのとき、自分がしでかした重大な失敗に気づく。あ、さっきブラに当たった。あんなもの買わなければ、メラミンスポンジみたいな感覚で無くて布一枚でおっぱいだったのに、だったら、ハプニング扱いのラッキースケベで済んだのに。自分の考えのなさに愕然とし、ちょっと落ち込む。




 フーっとため息をついていると、「内緒の話をして良いですか。」とミミリィさんが耳の側で小声でささやく。


 近くにいるといい匂いがする。元世界ではこういうことは無かったので緊張する。


「何ですか。」


「太郎様が秘密を教えてくれたので、私も秘密を教えます。」

 お、何だ?「実は男なんです。」とかじゃないよな。そういう趣味はないからね。


「太郎様はいくつもスキルをお持ちのようですけど、私も一つ持っているんです。」


「あ、それ他人に言わない方がいいのでは無いですか?」


「太郎様ならいいんです。でも、絶対に内緒ですよ。 私のスキルは、『言語虚実』って言います。


「なんですか、それ。」


「話したことが、本当か嘘かなんとなく分かるスキルです。」


「え、ぇ、えー。 もしかして僕が言っていることが嘘か本当か分かるってこと?」


「はい。その人が真実と信じ込んだ言葉は、本人にとっては真実なので分かりませんが、普通の会話なら大体分かります。ただ、言わないで隠している事までは分かりませんけど、言っていることが嘘か本当かの判断はできます。」


「怖いスキルですね。」

 スキルだと自分にもあるのか、後で無効化リストから探してみよう。


「今日、初めて太郎様と会って、最初に言われた『理由?「助けたかったから」では駄目ですか。』とか、『見返りは期待していないよ。見返りを求めないと変かな?』が本当にそう思っていると分かって驚きました。そんな人はこの世に居ないと思っていたので・・・。 でも、『貴方の処女と僕の童貞を交換』は冗談で言ってましたよね。全然真実味が感じられなかったんですけど。女に取っては重要なことなんですよ。それって、私に価値が無いってことですか?」


 全部ばれてるわー、小っ恥ずかしい。


「私は、リンデロート子爵家四女ですが、継承順位も低いので小さい頃からお嬢様の侍女として働いていました。それでも、子爵家の娘ということで何件も婚約の話が来ていたんです。 政略結婚であれば親同士で決めるのでしょうけど、継承の予定もなく子供の頃から家を離れて、伯爵家の家族同様にしていただいていた私には純粋な政略結婚の話ではなく、一応は私の意思を確認してもらえる相手ではあったんですけどね。

 でも、お会いしてお話を聞いていると上辺だけの言葉で中身がなくて、「嘘」と思えることばかりしか話して頂けない方ばかりでした。そのため、男の人を信じることができず、怖いと思っていました。

 親も伯爵の手前、政略には役立たないと感じていた様で、特に強く勧められる事はなくお話は伯爵様にお願いして角が立たないように、今までお断りさせて頂いていました。」


 言葉の裏が分かっちゃうのはある意味辛いことかもね。「で、今の歳まで独身なのね」って言葉は、口にしちゃいけないよな。身の安全のために。


「なので、初めての方とお話するときは、どの様な方か分からないのでスキルを相手には内緒で使っています。」


 で、自分の時もそうしたということなんだね。当然だよな、盗賊に襲われている最中に突然現れたんだから、


「ですが、太郎様の言葉には嘘は無かったんです。全てお話しては頂けてはいないと思いますが、嘘は言われていませんでした。」


 ま、この世界に来たばかりだし、嘘を言っても仕方ないしね。


「それで、太郎様に対する警戒とか不審を抱かなくていいと感じて安心出来たのです。私に取っては初めてのことで、とても嬉しかったんです、本当なんですよ。

 スヴェアは太郎様のような方が味方でいて下さる方がよいので、太郎様を捕まえておくように言うのですけど、そんなことでは無くて側にいたいと思ってます。」


 スヴェアさん、さすがに抜け目ないな。


「今日の買い物も私に取っては初デートだったんです。とっても嬉しかったんです。

 だって、初デートが初めて好きになった人なんですよ。」

 

 自分だって「彼女いない歴=年齢」で、初デートがこんな美人なんて嬉しかったよ。


「さっきの事だって、下心が全然感じられませんでしたし、心から謝罪してくれていたし、太郎様と一緒にいると安心出来るんです。今日会ったばかりですけど、太郎様大好きです。ずっと一緒に居て下さいね。」

 ミミリィさん布団をかぶってしまった。


 うん、どうすりゃいいんだ。 暫くの沈黙。


「今は、なんとも言えないので、この仕事が終わってから考えます。そもそも自分が女性から好意を持たれるという経験が無く「彼女居ない歴=年齢」なので、よく分かりません。 僕もミミリィさん可愛いと思うし好きですよ。

 ただ、この国に来て今日のような事に巻き込まれたりして、女性と接することが多くなりました。浮ついた気持ちになるとミミリィさんが悲しむことになりますよね。

 それと、食物屋をやろうかと考えてますので、女性を雇うとミミリィさんより長い時間一緒にいることになりますけどいいんですか。

 それに、他の女性にフラフラして二股三股掛ける様な事をするかもしれませんよ。」


 ミミリィさんは布団から顔を出し、「私、負けませんから」と言う。 


「勝つ必要は無いですよ。ミミリィさん大事にしますから。ただ今まで女性から好意を抱かれていると感じた事が無いので、ふらふらしちゃうかも知れません。そんな男は嫌でしょ。」


「でも、太郎様がいいんです。使用人は奴隷にしてもらえば、私も嫉妬しませんから。」


「え、奴隷ってこの国では奴隷制度があるんですか。」


「あ、はい。犯罪奴隷、経済奴隷、性奴隷があります。 犯罪奴隷は犯罪者で牢屋に入る代わりに鉱山や土木工事などで刑期まで働きます。経済奴隷、戦争奴隷も含まれますが借金や納税出来ないなどで経済的な理由で自分を売るものですね。でも雇い主は食事の確保と納税の義務がありますし、性的な行為や暴力行為などは認められていません。また、労働に対しては対価を払う必要があり、お金を貯めれば自分を買い戻すことができます。性奴隷は経済奴隷と同じですが性的行為などを拒むことができない奴隷です。一般的に性奴隷の方が経済奴隷よりも高値で取引されるので、多額の借金を背負った場合など性奴隷となることが多いようです。」


「そうなんですか、では女性の性奴隷を購入すればハーレム状態になれるのですね。」


「そんなこと考えているのですか。 全然心がこもっていませんけど。」


「やっぱり「異世界もの」では鉄板かと。異世界といえば、やっぱりチートでハーレムでムフフ放題でしょ。元世界では望むべくもない「囲ってみたい」妄想と欲望が・・下卑た欲望のままに。」


「『異世界もの』の意味が分かりませんが・・・。太郎様に欲望があるのは分かりますが、心がこもってないってバレてますから。無駄ですよ。」


「でも、性奴隷って心揺さぶられるものがあるよね~。本能に従い下心満載で購入しちゃうかも。ミミリィさん幻滅しますよね。」


「本心から言っているのでしたらね。そんなに私が邪魔ですか。」


「いえ、ごめんなさい。 もう寝ましょ。 おやすみなさい。」


 そうして長い1日が終わった。



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