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114 12日目 冒険者の仕事


 朝チュン。


 隣で寝ているスヴェアのなんか安心しきった感じの寝顔が無防備で可愛い。


「朝だよ」と起こすと「おはようございます。」と返してくれた。


「あの・・・太郎様。おはようのキスを」と、真っ赤になってスヴェアが呟くので軽いキスをしてたら、もっと真っ赤になって布団を被ってしまった。


 ちょっと間を置いて、布団から顔を出して来たので「目が覚めた? 醒めたら朝練に行くよ。」と布団を剥ぐとやっぱりちょっと寒い。

「お願いします。」と、昨夜と同じ様にスヴェアが呟くので下着を着け、パジャマを着せ、自室で着替えてくるように言い自分も着替え始める。




 玄関ではベルタとエヴァリーナ、ソフィーア、グンネルのいつものメンバーが待っていた。ベルタがスヴェアの耳元で何か話掛けると、スヴェアが真っ赤になっていた。なんか可愛い。でも、ベルタ、本当は君は違うんだけどね・・・。


 今日は唇が青くないスヴェアと一緒に走り出し、ルーチンを一通りこなして朝食となった。朝食はカリカリベーコンと目玉焼きとサラダ。スープとパン。


 朝食のあと、今日は冒険者ギルドに行って冒険者の仕事をしてくるので帰りは夕方になることを告げ、エレオノーラとエイラさんに今日の仕事配分調整を指示する。

 ミミリィ、ベルタ、スヴェアは食後本邸に出勤し、ミミリィ以外は今日は泊まりになるとのこと。





 仕事の指示が終わったら冒険者ギルドにいそいそと出かけて行く。

 ギルドの場所はスヴェアに聞いていたので直ぐ分かった。流石に王都のギルド本部らしく大きくて立派な建物だったよ。アマランスのギルドと作りは同じでも規模が全然違ったけどね。


 早速、依頼票の張ってある掲示板を覗き、簡単そうな薬草採取案件を手に取りカウンターへ行き、窓口の綺麗なお姉さんに渡す。窓口担当だけあって綺麗な人だよ。


「これを受けたいのですが。」


「あ、薬草採取の依頼ですね。ありがとうございます。これ、報酬が低いと言って誰も受けてくれなかったものなんですよ。では、ギルドカードを出してください。」


「はい、お願いします。」とギルドカードを出すと


「間橋太郎様 等級は10等級ですね。この依頼は等級制限がないから構わないのですが・・・。魔物がでる可能性がある地域なのですが大丈夫ですか。」


「はい、まあ大丈夫でしょ。」


「そうですか、お気を付けて。」と言いながらカードを機械らしきものに通すと、ブッブーという、元世界で聞いた様な音がした。


 受付嬢がいぶかしそうな目で。

「太郎様、もしかしてこれが初めての仕事ですか。」


「あ、はい。」


「登録された時に、登録担当者から説明があったと思いますが、聞いていらっしゃいましたか?」


「あ、はい。一通りの説明は聞かせてもらいましたが、なにか。」


「登録されたばかりの10等級冒険者は、登録後7日以内に最低1件の依頼を受けなければならないという事を説明した筈なのですが。移動のため7日以内の受託が出来ない場合や、受託できる依頼が無い場合はギルドにその旨を登録する事になっていると言うことも説明した筈なのですが。」


「え、あ。そういえばそんな事を聞いたような。アマランスで登録してそのまま護衛にはいって、王都に来て色々あって冒険者ギルドに来られてなかった・・ですね。」


「護衛も依頼によるものでしたら実績加算されますけど、10等級では護衛依頼は受けられないので私的依頼ですね。」


「そうですね、護衛は受けられないことはアマランスでも言われたました。それで私的な依頼として受けました。」


「アマランスで「護衛」と言わず、「荷物運び」として依頼を受ければ実績になったのに、なんで対象とならない「護衛」なんて態々それも私的に受けたのですか。」


「「荷物運び」なら良かったのですか。」


「そうですよ。「荷物運び」も立派な仕事ですし、10等級でも受けられます。そうすればこんなことにならないのに。それにギルドを介さない私的依頼は犯罪案件や危険なモノや、報酬が支払われないといったトラブルの元になる事もあるのですよ。初心者の無知につけ込む連中だっているんですから。本当に何をやっているんですか、説明はちゃんと聞いててください。」


「あ、はい。で、こんなこととは?」


「ギルド資格停止1年。当然他の支部での再登録も1年間禁止です。」


「え、えー。嘘。」


「新規登録者は、身分証明の為だけに登録する者が多いのでこの様な制度になっています。

 済んでしまったことは、どうにもなりません。1年間はなんとか自力で生活してください。

 一応、依頼票の案件は受けられませんが、常時依頼の採取案件等を自主的にするのは自由です。買い取りはできますので買取カウンターに申し出てください。」


「すみません。」


「太郎様の場合、私的ではありますが護衛の任は果たしているようですし、アマランスのデータでは盗賊退治もされているとありますのに・・・なんでそういうことをするんですか。全く・・・ あれ、太郎様。太郎様ってどっかで聞いた様な・・・・。太郎様はもしかしてスヴェアの旦那様になった方ですか。」


「そういう事になっているみたいですが、なんで知っているんですか。」


「私スヴェアの幼なじみなんです。昨日嬉々として『旦那様捕まえたの~』って惚気てましたから。私も同じ年で独り身なのに、なんで筋肉バカのスヴェアが見つかって、こんな美人で人当たりの良い私には見つからないって不公平ですよね。

 毎日冒険者が此所に来るのに、いい男がいないって思っていたら、もっと接点がないスヴェアが見つけるなんで理不尽ですよね。

 太郎様はスヴェアと互角に打ち合えるってスヴェアが本当に嬉しそうに言ってましたよ。筋肉バカと朝から打ち合うなんてどんな筋肉バカかと思ったら、こんな優男なんてまったく、信じられませんよね。

 大体、どうやったら知り合えるんですか、あの筋肉バカはお屋敷と師団以外行くところなんてないのに、どう見ても両方に似つかわしくない優男が捕まるんですか。筋肉バカしかいない師団と美男しかいないお屋敷と聞いてますからね。

 毎日、受付で沢山の男性に会っている筈なのに見つからないのに、おかしいですよ。全く「リア充爆ぜろ! 」ですよね。

 そんな貴重な戦力なのにギルド資格停止一年なんて、冗談じゃありませんよ。」

 もしも~し、そんなにまくし立てなくても良いと思うのですが、それに本人に向かって「リア充爆ぜろ! 」っていわれても、爆ぜたくないし、「美男が多い屋敷に似つかわしくない」って事実だろうけどちょっと凹むぞ。それに「リア充爆ぜろ! 」って、自動翻訳だろうけど、こっちの世界でもそんな言葉があるのか・・・。


「はい、分かりました。1年間冒険者家業は謹慎します。でも、これ受け手が無いんですよね。」


「はい、ずっと張られている依頼票です。ただ、常時依頼にも載せてありますから、買取は出来ます。ただし、一般価格になるので依頼の八割位です。資格停止中はポイントがたまりませんから、どんなに頑張っていただいても1年後また10等級からとなります。」


「はい、分かりました。では、私的採取でこの薬草取りに行ってきますので買取お願いします。」


「はい、採取はよろしくお願いします。 買取カウンターは右手になります。 それから、まだ、期日は過ぎていますが2週間は経っていないので、今後の実績次第では資格停止期間の短縮があるかも知れません、常時依頼をこなしていった後で相談してください。

 それから、ギルドカードはお返しします。「資格停止中」の記載がありますが、剥奪ではないので門の出入りには困ることがないと思います。ただし、通行料が掛かることはご了承ください。」

 受付嬢に感謝の言葉を残し。ギルドを後にする。




 ギルドを出て西門へ向かう。依頼票では王都西方の森に有るらしい。

 正門から暫く歩き、人気が無くなってからホバー全開で進む。マップで大体の場所は把握したので近くの街道までホバーで進み、森に入ってからは歩く。


 森に入ってマップで探してみても、群生地はなくポツポツと広範囲に分布しているだけで、これじゃあ効率悪すぎて依頼を受けないのも頷けるよね。

 仕方ないので、地道に最短距離を辿り一個ずつ採取してゆく。これ、マップが無きゃ絶対に無理だ。基本歩きだけど開けた所はホバー全開で一気に移動。

 ふと、一本取ってコピーすれば良いじゃんと、いう「悪魔のささやき」が聞こえたりするが、それじゃ「毎日が冒険でぇ、青~春でぇ」にならないから、ぐっと押さえて地道に一本一本集めて行く。

 でも、根こそぎじゃないよ。群生はしてないけど一カ所2~3本はあるからそのうち一つだけにしておく。そうすれば、次の時も残っている筈だからね。一応採取地はマッピングしたけど、次ぎ必要ならまたマップで確認できるが採取したところからばっかり採ってると、絶えちゃうかも知れないから新しい所を探すんだよ。


 偶に、動物のような魔物が襲ってくるけど、気配感知で近づく前に分かっているし、石塊ショットガンや日本刀もどきで瞬殺してしているから採取には影響がほとんどない。

 これやっぱり倒すと、アイテムとか魔石とか取れるんだろうかと思い、死体を確認したけど、アイテムは落とさなかったから後は魔石かな? でも今日は薬草採取が目的だから魔石回収は面倒臭いので放置して先に進む。

 あ、放置すると魔物が増えるとかあるのかな。まあ、なんとかなるでしょ。多分・・・。一応戻り燃やしておいたよ。


 お昼を挟んで(朝食当番がサンドイッチのお弁当を作ってくれたのさ。ウチのメイド(側室候補生)さんは気が利くんだよ。エッヘン。)は。

 依頼票にあった50本分の採取を終わらせ、ふと気づいたらかなり森の奥まで入り込んでしまった。マップがあるから迷子になることはないんだけどねって、マップ確認したら100km位離れているんだけど・・・。ホーバーは早いんだなやっぱり。

 

 ふと、範囲を広げてみたら赤点と青点(赤点も含まれている)が接触している場所があった。

「何だろう、小競り合いかな。」と、スキル:千里眼を起動して覗いてみると、多分、この国の兵と、あ、あれはこの前の同じ顔がなんか話をしている。あの同じ顔ってウニ国人だよな。

 なんだろう、ちょっと気になる。気配遮断と不可視を起動してそっと近づいてみたが、といっても数10km先だから近づいた時にはもうそこには誰も居なくってなっていた。

 ちょっと気になるが、まあいいや。




 最短のルートで街道に出てから、マップで人気の無いのを確認してホバー全開で王都に戻る。途中でホバー解除してランニング程度の速度で王都まで戻った。


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