11 剣を買う
その後、ミミリィさんが教えてくれた3件の鍛冶屋の中で、気配感知で一番拘りを強く感じる(そんな機能は無いよ勘だよカン。スキル「鑑定」を使っても外見じゃ分からないさ)鍛冶屋に入る。
ドアを開けると、中から槌の音が響いていて、何かいい感じ。
「お邪魔します。」と、入ってゆくと店番らしい小学校高学年位の女の子に「いらっしゃいませ。」と愛想良く挨拶された。
「剣が欲しいのですが。」
「剣ですか、ちょっと待って下さいね。 おとーさーん」と奥に入って行った。
しばらくすると、店の主人だろう男とさっきの女の子が戻ってきた。
「剣が欲しいんだって。」
「はい、冒険者登録したので、護身用の剣が欲しいんです。」
「新人かい。今まで使っていた剣はあるのか。」
「職業剣士なんですが魔法が使えますので、普段は魔法なんです。なので、剣は持っていないんです。」
「振ったこともないのか。 それでよく剣士を名乗り剣を買おうなんて思うな。」
「剣はないです、でもこれで練習はしてました。」とアイテムボックスから袋竹刀を出す。
「アイテムボックス持ちか。魔法が使えるんだから不思議ではないか。 で、それは何だ。」
「袋竹刀といいます。練習用の剣ですね。刃がなく適当に撓りますから大怪我はしません。」
「で、本物の剣が欲しいと。」
「はい。」
「ちょっと貸してみろ。」主人は袋竹刀を受け取ると、数回振ってみる。
「ほー、こりゃ良いな。練習用の玩具かと思ったが、バランスも振った感じもよくできている。 お前は、これに近い物がいいんだな。」
「そうですね、練習用と実戦用がかけ離れていると、本番で困りますから。」
「分かった、ベアタ、一番奥の箱を持ってきてくれ。」
ベアタちゃんが重そうに、カラーボックス位の木箱を持ってきた。
「撓りが前提ってことは、ぶっ叩くよりも撓らせて切るって感じだな。それなら片刃の方が良いよな。10本位あるから、良さそうなのを探しな。」
片刃刀・・・それもどう見ても日本刀にしか見えない刀が10本入っていた。 この箱を一人で持ってくるなんてベアタちゃん力持ち。
一本ずつ手に持て感触を見る。(全然わからないので鑑定起動)一通り持ってみて、一番良さそうなもの購入することにした。これだけがランクAで、残りはBとCが半々だった。
「ほー、初心者にしてはよく分かったな、それは俺が打ったなかで一番出来がいいと思っているヤツだ。」
「いくらですか?」
「金貨4枚だな。」
「分かりました。お願いします。」
「それ、白サヤだから塗りサヤに変えておいてやる。明日取りに来い。」
「明日出発が早いのですが、朝一番でもいいですか。」
「構わん、今晩中に仕上げておく。」
「兄ちゃん、それからその袋竹刀っていいな、中何が入っているんだ?、木を割って纏めているだけにしちゃ、よく撓るし粘りもある。不思議だな。」
「一応、企業秘密ということにしておいて下さい、多分この地方では入手できないでしょうから。」
「そうか、残念だな。ウチで作って売り出すのは無理か。」
「そうですね、諦めて下さい。」
「分かった。代用品で何かできないか考えるよ。」
ミミリィさんは、ナイフを眺めていたが終わらせて、一緒に店を後にする。
外に出て歩き始めるとミミリィさんは隣に来て手を繋ぎながら、
「あの主人は、この辺では偏屈で通っているんですよ。納得した相手にしか売らないです。だから、日用品などは店番の女の子が対応してくれるのですが、武器は本人じゃないと駄目なんです。」
「ミミリィさんはここで買ったことがあるのですか?」
「ここは、スヴァールバリ伯爵家への経路ですから、何度も往復したことがあります。移動の途中で、スヴェアが剣を折ってしまい買いに来たことがあるんです。その時もスヴェアを同じように試されていましたね。スヴェアは最良品では無かったですけど、そこその物を選んだみたいで合格できたようです。」
「拘りの職人さんなんですね。」
「そうですね、辺鄙な場所の砦ですけど、しっかりした職人さんが居るんですよ。捨てた物ではないでしょ?」
そんな事を話しながら宿に戻った。
袋竹刀は剣聖上泉信綱様が考案したと伝えられています。木刀よりいいかもしれないですけど、当たると痛いですよね。ちなみに文中の「橇がうんぬん」はこじつけです。