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1 気づいたら

主人公  間橋 太郎 男 20歳 会社員

 高3の2月末父母を事故で失い、大学進学をあきらめ就職。その時期にまともな就職先があるはずもなくフリーターになるところを進路担当教師達が頑張って頼み込んでくれた結果、かなりいい会社に当初2年間を前提に就職。総務課雑用係。今年2年となるため今後の生活を考え、この会社で仕事を続けようと決断して会計経理合宿研修に出発するところでした。

 眩しい光が和らぐと舞台の上に立っていた。

 自分の前には2時間サスペンスでよく見た裁判所の証言台のようなものがあり、擂り鉢状の客席(といっても自分より高い位置にあって、見下されている感じ)には、多くの白い衣装の人々がこちらを見ていた。何か、近くて高くて圧迫感がハンパない。


「咎人、間橋太郎、神殺しの罪により裁きを申し渡す。」

 客席中央の偉そうな黒い法衣の中年男性が低くて威厳を込めた声でそう告げた。


 って、ここ何処だ、これ日本の服装じゃないよな。でも、いまの日本語だよな。

 いわゆるテンプレの異世界召喚ってやつか。「おっ、初体験」って、そうじゃない。

 今、「咎人」と言ったよな。「神殺し」って自分がか?


 ちょっと待て、落ち着け、落ち着け自分。


 先ず、服装。スーツにぐんまちゃん柄のネクタイ、ロングダッフルコートにぐんまちゃんマフラーと革のウォーキングシューズ。背中にバックパック(ノートPC入り)、左手には「ぐんまちゃんの顔が全面に描かれたスーツケース」。さっき会社を出た格好のままだな。

 振り向き周りを見回してみたけど、周りは誰もいない、自分だけだ。

 後ろはちょっと奥行きがあるみたいけど、その先は真っ白い壁なので距離感が分からない。半円形の劇場の真ん中に、自分だけポツリと立っている。

 他に誰もいないから誰かの異世界召還に巻き込まれたという訳ではないんだな。

 なんですかこれ。


 待て、待て、異世界召喚ってラノベのお約束だと「死んだ」か「死ぬ直前」というシチュエーションで転移するんだよな。死んだのか自分? でも、会社のドアを出ただけで、駐車場にも道にも出てもいないよな。ウチ会社の玄関はポーチがあるから、雨漏りはするけどお約束の植木鉢とか落ちてきた訳じゃないよな。会社の健康診断でも問題はなかったから突然死とかもないよな。


 よし、深呼吸。


 でもさ、異世界召喚って、普通(たとえ悪意満々でも)美少女の王女さまが「勇者さま!! 我が国をお救い下さい!」とかじゃないのか? 何だよ「咎人」って。「裁きを申し渡す。」って犯罪者確定か。

 裁判って、検察がなんたらとか、検察側の証人がなんたらとか、被告がなんたらとか、被告弁護人がなんたら、とかあるんじゃないのか。

 それに、こういうのって「崖の上の片平○ぎさ」相手にするみたいに自分から罪状全部白状してドナドナされてからこういう所に来るんじゃないのか。せめてカズミさんに確認の時間くらい取らせろよ!


 キョロキョロしていたら、客席中央の偉そうな人が、こちらを見て何か言いたそうなので、先手を打ってみる。

「すみません! ここは何処ですか! 僕は何故、ここにいるのですか! 『神殺し』って何ですか!」


「おぬし、そこにもいる理由も分からないと申すのか。 罪の意識も、反省の色も全く無いようじゃの。」


「いや、そうではなくって『神殺し』って、普通に暮らしてる一般ピーポーですよ。漫画やアニメみたいに『神様』なんて殺せる訳ないではないですか。」


「心当たりがないと申すか。まぁ、咎人は罪を認めず否認し、無罪を主張し続けるものだからな。」


「だから、何で『神殺し』なんですか。何処の神様を殺したっていうのですか。分かりません。」


 何だか、雛壇がざわついてる。視線が痛い。中には異様に睨み付けているいるヤツとか、恨みがましい目をしているヤツがいるんだけど何なんだろう。


 偉そうな人が、右側下にいたの銀髪縦ロールの細身の美人を呼んでなんかやりとりしてる。


「仕方あるまい、『訴追の神ティルダ』からの起訴内容を伝えよう。お前たちの時間でいうと3日前の朝、午前7時53分頃だな、お前はお前たちが言う『交差点の歩道』にいた『愛の女神イヴァンネ』を、走行中の大型トラックに向け突き飛ばし轢死させた。それも『助けて』と懇願する女神を無慈悲にもだ。それがお前がここにいる理由だ。」


 ちょっと待て、3日前っていうと、明日から始まる研修の壮行会をしてくれた日か。飲むと帰れないから愛車R2じゃなくて、大工バスで通勤した日。


 あの日は千代田町3丁目のバス停で降りるとき、前の交差点に慌てた様な金髪美人が一人いたな。服装までは覚えていないけど。

 バスを降りて交差点でまで歩き信号が変わるのを待っているときに、後ろの方で何か話しかけていた様だったが、「金髪美人=英語 うん、無理。」気にしない様にしていた。


 信号が変わり歩きだそうとしたら突然金髪美人が自分の前に来て、「助けて」って手を握られた。突然の日本語に「えっ」思ったと同時に、目の前を黒いものが通り過ぎた様な気がしたときには既に金髪美人さんは消えていた。

 あの金髪美人が『愛の女神イヴァンネ様』で、自分が突き飛ばして黒い物(これが大型トラック?)に轢かせて殺したってことになっているのか。


 待て待て整理、整理 落ち着け自分。


 あのとき自分の前を歩いていた人や周りの人は何事もなく交差点を渡っていたし、横断歩道の右側にはさっき降りたばかりの大工バスが一番前に信号で止まっていたよな。だから、その前に大型トラックはいなかったし、スピードも出ない。

 黒い物が過ぎた後、あたりを見回したとき運転士さんと目が合ったけど、特に変わった表情はしていなかった。それに、立ち止まった自分を後ろから交差点を渡る人々に邪魔物扱いされていたから、何も起こってない筈。

「彼女いない歴=年齢」の自分としては金髪美人さんに手を握られたことで舞い上がったけど、次の瞬間には全て消えていたから幻覚だと思っていたけど本当に手を握られていたのか。でも、自分は「神様」なんて殺していないぞ、濡れ衣だ。


 ちなみにカズミさんは、グンマーなら声は誰でも知っている(多分)、グンマーローカルFM局の「電光石火のマッpha」を自称する公開生放送音楽?番組のラジオDJです。リスナーはアミーゴと呼ばれています。

なお、「カミ殺し」はカズミさんからのインスパイアではありません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「大工バス」って大工さんの専用バス?
[良い点] お前はまだ本当のグンマーを知らないを6話くらい見たからちょっとネタがわかる。
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