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天使色

作者: 横山裕奈

お読みくださってありがとうございます。

これを見たあなたが、空を見上げることを祈って。

そして、いってしまわないことを、祈って。

 テレビの中の花嫁を見ていつも思うのは、彼女たちの苛烈さだ。白色はすべてを飲み込み浄化する、美しく激しい色。

 それを身にまとう彼女たちは、なんと苛烈なことか。否応なしに惹かれ、飲まれる。


 今、私は、同じ白でもそれとはまったく違う色を見ている。

 白を優しくした色。そう言い表すしかない、空に浮かぶ雲。その隙間から射し込む、夕焼け色の光。まだ燃え立つ紅ではない、柔らかな夕焼け色。

 あまりに美麗で、世界はその空と、突っ立って眺める1人の女だけになった。


 あの光のカーテンに飛び込めたなら、どれだけ幸福だろう。すべてを忘れて、光の粒子の1つとなって、穏やかにゆったりと世界に降り注ぐ。

 固い表情筋は動かなかったけれど、私は確かに幸福だった。その、数瞬だけ。


 並木を避けてここまで上ってきてよかった。

 あの光のところに、行ってみたい。衝動は強かった。

 堪えようもないくらい、心が踊った。

 だから私は、光の中に飛び込んだ。


 最期の最期、ふと思い出して悔しくなった。このままじゃ、私は彼のせいで死んだと思われる。

 違うのに。ただ、あの天使の色に惹かれただけなのに。



 だからさぁ、あの子、カレにフラれたじゃん?

 あー、結婚式の前日にね。


 2人の女が、友達の噂話をしていた。楽しそうに、愉しそうに。

 友達の恋路を密やかに笑う、ありがちな光景だった。その友達は、既にこの世にいないけれど。


 あてつけってこと?

 嫌だ、こわーい!

 でもそうじゃない?

 それしかないよね〜!


「違う」


 小さな子どもだった。近くに親はいない。店員は、カフェに入ってくる幼子を見逃したとでも言うのか?


 違う。違う。

 何度も繰り返す幼子は、不思議な色の服を着ていた。夕焼けのときの太陽が、雲の隙間から射し込むような。

 天使色、と2人の女の脳にそんな言葉が現れる。


 幼子は、固い表情筋を無理に動かして、くすりと笑った。苦楽を重ね、辛酸を舐めた、大人の女の笑顔だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎めいた部分もありましたが、白く光輝く天使色に魅せられてしまい、危ういまま、飛び込む一瞬を、踏み込む一歩手前を、何とか、自分を信じて理性と知性を保って留まり、天使色を見届けたい!、という主…
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