『夏の音』
夏の風と、
せせらぎの音を聴くと
かくれんぼをしていた
子どもの頃を思い出す。
わすれものを取り戻すみたいに………
オニヤンマは全長10cm
羽を広げた開張は11cm~13cmほどにもなる
日本最大級のトンボです。
大きな眼はきれいな緑色で、
光のあたり具合で
微妙に変化する様は宝石のようで、
体は黒と黄色のお洒落なボーダー柄で、
大きさだけでなく見た目も美しく
"トンボの王様"と呼ぶのに
ふさわしい風格をかもし出す。
秋の空に舞う赤トンボと違い、
動きも素早く
なかなか人を寄せ付けない孤高さもかっこよくて、
子どもの頃は、男の子たちの憧れの的だった。
幼虫であるヤゴは、
ヤゴといっても体長6cmもあるヘビー級、
清流に棲み 食欲旺盛で、
ザリガニの子どもやオタマジャクシ、小魚を餌にし、
成虫となってその勇姿を見せてくれるのは7月~8月。
成虫になるとオニヤンマは、
新しい縄張りを求めて漂行する癖があり
町中でオニヤンマを見かけたら、
漂行中なのかもしれない。
棲息地での飛びかたには一定のルールがあって、
一匹あたりの縄張りは清流に沿って100mぐらいのようで、
その間を行ったり来たり 巡回している。
ということは、
オニヤンマを見かけたら追いかけず、
その場所で待っていれば、
また数分後に戻ってくるということで、
時期になると
オニヤンマに毎年出会う場所に立ち、
悠々と飛ぶ姿をぼんやり眺めるのが
わたしの癖になった。
体をひるがえす時にに聞こえる
「ヴォーン、ヴォーン、」
と低音な清々しい羽音に耳を澄ます。
真夏の青空と白い雲
大きな黄色の向日葵に背を向けて、
目の前を飛び去るオニヤンマの羽音は
わたしにとって
夏の扉が開く合図なのかもしれない♪