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ワールド・エンド・ホライズン  作者: キツネ
第一章
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入学編8

だが、だからこそ、湊の答えはNOであり、覆る事は無い。


「いえ、お誘い頂けるのは嬉しいですが、お断りさせて頂きます」


沙綾にとっては意外だったのか、驚いた様子で湊を凝視した。

対する湊は相変わらずの無表情ではあったのだが、それが裏目にでて、尚更、沙綾を困惑させる。


「え?えーっと生徒会に入ればメリットが多い事は知っていますよね?」

「はい。知っていますが、それが?」

「え?え?なら、何故か理由を聞いても良いでしょうか?」

(そんなに驚く事なのだろうか?)


不思議に思った湊だったが、理由なら何個もあるので言葉に詰まる事は無い。


「単純に、俺は生徒会に入った際の特典が必要無いからです。後、最大の理由は、生徒会に掛かる時間が勿体ないと言う事です」


「特典が必要ないって....能力者選抜訓練メンバーに自動で選ばれるんですよ?それだけじゃ無く、卒業後の進路だって....特に貴方には絶対に必要な筈ですよ!?」


「確かに、能力を向上させるには良いかもしれませんが、あくまで自分は高校レベルで構いません....それと卒業後は既に決まっている俺には関係ありません」


「関係ないって!、だって貴方の両親は....それじゃあ貴方は」


困惑した様子で、説得しようとする沙綾だったが、湊からすれば何も心に響かない。


(と言うよりも、この人は俺の両親を知っている。ならアレも演技だったわけか)


流石、京極の家系と感銘を受けるが、ある意味失礼な行為だと湊は感じていた。

それに、沙綾の言っている事は意図も含めて、感情も、思考も完全に理解した上で響いてこないのだ。


「優しいんですね。ですが、心配する必要は全くありません。俺自身、それを望んでいますし、大学に行ければ後は、母の敷いたレールの上で生きる事を望んでいるのですから。沙綾先輩の心配も、考えている事も理解は出来ますが、自分はそれで構いませんから。」

「そんな....いえ、ごめんなさい。湊君の考えは分かりました....ですが、もし気が向いたら何時でも生徒会は歓迎します」


納得は出来ていない様子だが、一先ず理解した様子の沙綾に頷く湊だった。

もう少し、突っ込まれると、危険ではあったのだが、それは沙綾には関係無い事だろうと湊は思考した。


湊は、決してレールの上を歩む事にある意味では満足などしていない。


だが、その先に居る憎むべき存在を殺す為、そして謎を解く為にレールの上を進む事を選んだのだから。


「申し訳ありません。それで....もう一つの要件とは?」


話題転換しようと、敢えて湊からもう一つの要件を尋ねると、沙綾自身もネガティブな思考を振り払おうと無理な笑みを浮かべて頷く。


「あぁ、そうでしたね。もう一つの要件と言うのは、昨日の演武の際....いえ、演武の際に私の能力を見て感じた事はありますか?」


沙綾は、本当に聞きたかった事を敢えて止めて、違う事を聞いた。

それは、単純に聞いても目の前の湊は教えないだろうと理解してしまったからだ。


沙綾が本当に聞きたかった事は『あの時貴方は、手を抜いたのか?』であったのだが、沙綾はそんな事は無いと上辺では否定していた。


「随分と答えにくい質問ですが....感じた事とは、沙綾先輩の能力についての評価....と言う事でしょうか?」

「えぇ。他人の能力を適切に評価するのも必要な事ですから」


適切に評価する。


つまり、遠慮せずに言えと言う事だろうと湊は理解したが、先輩に無遠慮に言える人等居ないだろうと考えた。


例えるなら『先輩は頭悪いですね』と遠慮せずに言えばその人は間違いなく殴られるだろう。

此処は無難に言っとくべきだが、この人は変な所で鋭いと短時間で理解している湊は言葉を選んだ。


「能力の評価、と言っても其処まで詳しく見ていないので何とも言えませんが....学生としては十分だと思いますよ」


変にお世辞を入れれば疑われるので、本音と建前を交えて言ったのだが思いの外、驚いた表情を浮かべた沙綾に少し顔が引き攣った湊だった。


「学生としては....ですか。分かりました、では、次の授業まで時間も無いので此処までにしましょう」


チラっと時計を確認した沙綾は湊に笑みを見せながら話を終える。

当然、湊としても早く次の授業に行くっと言うより、沙綾から逃げたいと考えていた為に軽く会釈をして、生徒会室を後にした。


それを、眺める沙綾の表情は鋭く、自身の考えが正しい者だと理解した。

否、有り得ない事だと思っていた一つの真実が正しいモノではないか?っと考えたのだ。


(彼は高校生のレベルを軽く超えているのでは?)


沙綾が思った事は湊は知らない。

沙綾は自身が能力を十分に発揮出来ていない事を常に悩んでいた。


それは、自身が思っているだけでなく、兄の樹にも言われていた事実だった。

だが、それを理解する技量を持つ人は殆どいないのも事実である。


事実、学園内でそれを指摘された事は一度も無いのだから。


(学園内どころか....軍人でも理解されない)


だが、湊はこう言ったのだ、学生としては十分だと。

皮肉めいた言い方では無く、淡々と事実を告げる様にだ。

沙綾は、湊の発言を、こう解釈した。


――― 学生レベルであり、まだ下手だと。


(あの言い方はお世辞で言っただけ)


沙綾は少しだけ苛立ちめいたモノを感じて大きく首を振った。


思い出すのは、昨日のアノ一瞬。


(確かに、あの時....私の力が消し飛ばされそうになったのを感じた、あれはやっぱり)


もしそうだと仮定するなら彼は魔人か、怪物だ。

沙綾は背筋に冷たいモノを感じながら、先程まで話していた湊について考えるのであった。


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