表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・エンド・ホライズン  作者: キツネ
第一章
2/14

入学編2


当然、優には気付かれていない。


湊は感情を表に出す事が殆ど無い。

それは、過去の出来事が関係しているのだが、優にはある種、関係の無い事であった。


「あぁ、単純に精神力の節約だよ。まぁ貧乏性だとでも思ってくれ」

「あー、まぁ今は能力者狩りなんてのも流行ってるしな~。確かに魔力の節約は必要だな」


大きく頷きながら納得する優に、若干嫌な感情は緩和された湊だったが、むしろ優の事を何処か小動物(?)みたいに感じてしまい思わず笑顔を浮かべてしまう。


(彼は魔力派か....恐らく少ないんだろうな)


笑顔を浮かべながらも内心では少しだけ同情していた。

精神力は基本的に向上しない。

それは能力が公表されてから50年の月日が流れた今でも研究成果が得られていない問題でもあるからだ。

だからこそ、絶対的な力を持つ能力者でも最強では無いのだ。


能力は精神力に左右される。


効率的に能力を行使しても精神力が尽きれば無能力者であり、一般人なのだから。

戦闘に関しても、基本的に現代兵器を使用しない能力者が多い近年では精神力の大小は今後に左右される。

なら現代兵器を使用すれば?っと湊も一時期は考えたが、それは現実的では無い。


なんせ、能力を使った方が効率が良い上に、能力向上と同時に現代兵器の使用技術向上を同時に行う二刀流は時間効率が悪い。


それに、今は表面上(・・・)平和なら尚の事。


争いの為の力など本来無い方が良いのだから....と言うのが世論だからだ。


優の場合、恐らく精神力が常人より少なく能力を十分に扱えないのだろう。

そう言った精神力の少ない人物は得てして精神力を魔力と表現しやすい。

それは、過去から続く、魔力は向上出来ると言った小説や、漫画等から来る希望だ。


当然、そんな事を思われていると考えていない優だったが、優自身此処でこの話は終わらせるべきだと感じていた様子で辺りをキョロキョロと見回す。

これ以上聞いたら気になってしまうと本人が思ってしまったのだ。

湊の両足が義足である理由について。

今の時代、戦争やテロ等で足や腕を失う者は多い。

医療が発達した今では、事故等で腕を切断した者や足を切断した者であっても、早期治療すれば接合は可能である。


ただ、戦争等直ぐに治療出来ない場合や切断された腕や足を粉砕、又は消滅された場合は別である。

だからこそ優は湊の両足が無い事が気になったのだが、それは言うべきでないと理解してた。


「そういや、湊に聞きたいんだけど、此処に来る途中新入生の女子見なかったか?」

(女子?随分曖昧な質問だな)

「曖昧すぎて返答に困るんだが....ナンパか?」


思わず、率直に聞いてしまったからか、優は一瞬硬直して直ぐに赤面しながら慌てて首を横に振った。

そこまで慌てる事か?っと疑問に思ったが、それよりも自分はコミュニケーション能力が低いかもなと思った湊。

同時に優の説明が下手な一面も見れたのだが、そこは多分何か慌ててたのだろうと湊は理解した。


「い、いやいや、そんな訳ないだろ!あれだよ、待ち合わせしてるんだよ」

(待ち合わせ?)

「そういう事か。なら、特徴を正確に教えてほしい所だが....生憎、俺も今来た所だからな」


どうやら知り合いがこの学校に居るみたいだ、能力者との繋がりは比較的、非能力者に比べて強い傾向にあるから当然かもしれない。

それでも、同じ高校に知り合い、それも同じ新入生であれば珍しいのだがっと湊は思考した。


(まぁ、それが枷になると考えればあまり褒めたモノでは無いが)


「はぁ。まぁそうだよなぁ。全く....あのゴリマッチョ何処に」


居るんだ?っと言いたかったのだろうが、突如優の頭上から伸びてきた手刀が見事に脳天に直撃して声にならないうめき声を上げながら優はその場に蹲った。

例えるなら、噂をすれば何とやらである。


「ちょっと!だーれが、ゴリマッチョよ」

「いや、だって実際、凛子ってバカみたいに力つえーだろ!...いてっ!」

(まるで漫才を見てる気分だ)


目の前で行き成りラブコメ漫才を見ているような気分になった湊。

確かに、目の前で先程『ゴリマッチョ』と言われていた少女、凛子が美少女でありながら、目元の一切が笑っていない笑顔を浮かべながら力の限りに優の脳天を叩きのめしていれば変な漫才に巻き込まれたと考えるのが妥当だろう。


優も、変に言い返さなければ良いモノをっと初対面ながら湊は呆れた様子で無表情で眺めた。


(それにしても、一応初対面なんだが....こうも騒がれると少し疲れるな)

「で?優、この人は?知り合い?」

「あーいてぇ。....いや、ついさっき知り合った親友だな」

(いや、ついさっき知り合った親友ってなんだよ)


遂に、と言うべきか、先ほどまでの漫才が終わった二人が湊に話題が移りどうしたものか?っと考えた。

別に仲良くする義理も義務も無いと考えている湊だったが、入学式当日に険悪な関係になるのも考え物だし、なるべく友人は作るべきだと母からも言われている。

言われているのだが、積極的に作りたく無い上に、騒がしいのは少し苦手だと自覚している湊としては、さっさとこの場を立ち去りたいと考えている。


「初めまして。俺は、神楽 湊よろしく」

「うん。よろしくね~、私は野村 凛子。因みに此処に居る優の彼女」


彼女と聞いて多少動揺した湊だったが、確かに言われてみれば仲の良さが少し友人とは違っていたので直ぐに理解した。


(俺には恋愛なんて興味の無い話だが)


まぁ彼氏、彼女と言う関係を聞いた後で、先ほどの一幕を見せつけられると興味の無い湊であっても若干の苛立ちはある。

湊の心情を昔風に言えば『リア充爆発しろ』である。


「そうか。まぁお似合いな二人だと思うが....ん?」

「いや~。初対面の男の子に言われると照れる....あ、コレの事?」


湊の疑問にいち早く気付いた凛子は腰に差している拳銃に似た機械を見えやすいようにジャケットを少し捲って湊に見せた。


「あぁ、確かに凛子のそれって珍しいわな。普通そんなの使わねぇしな」

「ちょっと。私が変人みたいに言わないでよね。私は可憐な普通の女子高生なんだから」

(別に変人とは一言も優は言ってなかったと思うが)


ようやく脳天の痛みが引いた優が、先に凛子が持っている拳銃について感想を言った。

言わば、中途半端な兵器であるそれを態々携帯している人は珍しい。


「まぁ非効率な武器に変わりないけどさ~。でも能力は隠しておきたいじゃん?」


一昔前から、銃器の携帯については緩和されている。

と言うのも、能力者は存在自体が兵器だから銃刀法などがあると非能力者の自衛行動が難しくなるからだ。


だが、彼女の持つ銃器はちょっと違う。


能力者用兵器、アビリティガンと言われる精神力を使う拳銃。

一般人は玩具と呼んでいるそれは、現代兵器より劣り、更には精神力の消費が異常に多いと言う効率最悪の武器だ。


(わざわざ使うって事は....訳アリか)


凛子の良い訳を聞きながらも、本心を察した湊は特に追求する事無く聞き流す。


「まぁ、人それぞれって事だな....っと話しはこの辺にして、移動しないか?」


ちらりっと時計を確認しながら湊が話しを半ば強引に切り会場を指す。

入学式まで、そう時間は無い。

此処で話し込んで、入学式早々遅刻するのは避けたいと湊は考え、それは二人も同様だった。


(新鮮だが、大変な高校生活になりそうだ。)


会場に向けて時折話ながら、歩調を合わせて三人で歩く。

高校生活に胸を躍らせながら。

だが、湊は確かに心の奥底、誰にも見つかる事の無い奥底で憎悪の炎を宿す。

誰にも気づかれない憎悪の炎はやがて業火へと昇華していく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ