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ワールド・エンド・ホライズン  作者: キツネ
第一章
1/14

入学編

この物語はフィクションです。

この世界と似た架空の世界であり、実在の人物、団体、国家、宗教、その他固有名称で特定される全てのものとは、一切関係ありません。

▼△▼△▼△▼△◇


―― 痛い、辛いよ、死ぬ、ダメだ、いや大丈夫。


―― 大丈夫、大丈夫、この痛みは一瞬だ。



血の気が引く様な全身の気だるさと焼ける様な両足の痛み。

涙でぐちゃぐちゃになった顔で必死に痛みに抗いながら彼は両足が存在した箇所に手を伸ばした。

大丈夫、大丈夫、痛くない、こんなモノでは死なない。

大丈夫、母さんの力が伝わって来る。

母さんの力があれば俺は死なない。

生きていれば必ずアイツに復讐出来る。

周りの屍となった軍人や、能力者だったモノが視界に入る中、グッと歯を噛みしめながら彼は憎しみの炎を眼に宿した。

『君の様な覚悟も無く、三流でしかない能力者が一体何を勘違いした?』

既に朦朧となりつつある思考の中で繰り返しアイツの言葉が脳内で繰り返し木霊する。

彼を此処まで追い詰めた張本人であり、目の前に居ない憎むべき存在。

『君を見ていると吐き気がする。だが、これで安心だ、君は両足を失ったのだから』

『両足を失った君はもう騎士ではない』

『騎士では無い君は只の一般人だ』

『能力者でありながら、君は非能力者よりも劣る存在になり下がるのだ』

(違う、違う、違う!俺は....)



(お前を....必ず殺してやる)


――――――――


入学―1年生編



戦争で足を失った者や失明した者が数えきれない程増えた近年。

日本と言う国は比較的世界から見ても平和である事に変わりはない。

とは言え、それは他の先進国から見た位置付けであって一時期の戦争廃止を掲げていた時から比べれば雲泥の差だ。


だが、身体が不自由な人の為に点字床や、スロープと言った、ある種過剰とまで言える配慮が至る所に存在していて現在、国立能力者研究育成高等学校に車椅子に乗って校門を潜った新入生にとっては便利ではあった。


一昔前では、実験段階でもあった完全自動制御型の車だったり、人工知能の発達に伴った人間型アシストロボ等の科学技術の進歩も著しい。

最近では不老不死や、人口生物の開発....なんて眉唾物ではあるが大昔では考えられない様な実験を本格的にしている。

そんな時代でも、一種の苛めや、差別、と言った人間の感情だけは変わることは無く、寧ろ増していると言っても良い時代に恰好の的である少年が車椅子で校門を通ったのだ。

普通に、考えればこの時代では彼には辛く、本人も覚悟はしていたのだがそれは考え過ぎだったようだ。

周りには、他の新入生や、在校生と思しき人はチラホラと見かけるが皆、チラっと彼を見るだけで特に気にした素振りは見せず彼にとっては心地良いと感じ、同時に寂しくもあった。


(まぁ、見た目は、普通だしな)


両足の義足に目を向けながら息を吐いて講堂へと向かう。

思ったよりも此処は差別意識は少ないのかもしれないと彼は考えたが、同時に、パッと見ただけでは両足が義足であるなんて分からないのも無理は無いだろうと頭の片隅で彼は思考した。


現代に置いて、能力者は精神力と言う能力を発動する媒体を使って様々なことが出来る。

其処には、失った足や腕を特殊な義足や義手を着けて精神力を行使する事によって普通に動かす事も可能だからだ。

但し、この普通とは戦闘で役に立つっと言う意味なのだが。


(後は、単純に仲間意識か)


それならそれで有り難い、と考えた彼だったが、これを裏付ける珍客が突然現れた。


「あれ?....珍しいな」

(誰だ?)

「あーわりぃ。いや、両足義足なんて滅多に.....いや、変な意味じゃ無くてだな」


顔を覗かせながら新入生を表す、校章を付けた同い年の男がジッと足を見て話したかと思うと視線を合わせて慌てて謝る。

見た目、好青年とは言い難い強面の顔付きだが、話し方からは好青年の様子を見せる変な奴と彼は思った。

今の時代、黒髪が普通である....なんて凝り固まった概念は無く、単純に能力者の中には生まれつき、茶髪、金髪、銀髪なんて珍しくない

彼の前に現れた少年もまたその一人で、黒が混ざった様な暗い茶髪だ。


(変なやつだな)

「いや、別に気にしてない。それより君は?」


内心、早く会場入りしたいと考えている彼だったが、目の前の少年は如何やら話し相手が欲しかった様子で目に見えて嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「さんきゅー。滝澤 優、優って呼んでくれ。よろしくな!」

「あぁ、よろしく。俺は、神楽 湊。好きに呼んでくれ」


社交辞令と言う言葉が正にピッタリだろうと言える湊の愛想笑いにも気付いていないのか、優は豪快に笑うと湊の肩を軽くポンポンっと

軽快に叩いて嬉しさを表現していて、思わず苦笑いを浮かべてしまった。


(良い奴なんだろうけどな。俺とは対照的だ)


これが、俗に言う、不良に絡まれる好青年って奴か?と湊は考えたが、同時に俺は好青年でも無いか、と一人で彼は突っ込んだ。


「それにしても、なんで今の時代に車椅子、しかも旧式の手押しなんて使ってるんだ?」


優から見て、湊の車椅子が余程気になったのだろう。

それは当然で、手押し車椅子は今では殆ど売っていない。


科学が発展した今では、電動が主流であり、能力者である湊なら能力を発動する際に使う力、湊は精神力と呼んでいるが、それを使って移動する車椅子もある。

と言うより、能力者は基本的に後者を好んで使用する。

電動であれば充電が必要だが、精神力を使う車椅子であれば、充電も必要なく半永久的....とまでは行かないが、一日くらい平気で動かし続ける事も可能な上、車輪を使わないので路面に左右されずに動く事が可能なのだ。


だからこそ一種の異端児(?)である湊に興味を持ったのだが、それと相まって、同年代のしかも同じ能力者、同じ学校の新入生。


優自身、気分が高まってるのもあってか、湊への興味は尽きない様子。

言わないと何時までも付いてきそうだなっと半ば投げやりにもにた感情で優を苦笑い気味に見ながら思考した。




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