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第62話  第4章-第7話

20170715公開

4-7


 ニューランド主席行政官のセルヒオ・ナバーロ氏以下、ニューランド行政府の役人も交えて俺たちが会議室に到着すると、そこには4角形を作る様に4つのテーブルが配置されていた。

 ファーストランド行政府2人、ニューランド行政府5人、プラント教団の教士3人、そして俺たち『プラント様が遣わした援徒』4人の名札がそれぞれの机に置いてあった。

 俺たちはその名札が置かれているテーブルに座った。


 この場でのファーストランド行政府とプラント教団の関係は少し複雑だ。

 通常の場合、プラント教団はまつりごとの場には姿を出さない。

 宗教団体の為に生臭い話には距離を置くからだ。

 ただし、ファーストランドの行政機関自体がプラント教団の下部組織な為に、実際には浮世の話にも首を突っ込んでいる。

 まあ、さすがにトップ自らが首を突っ込んだ前回のリリシーナ訪問は有事と非常事態が重なった故に実現した稀有な例となるだろう。今後はこの様な席に臨席する事は滅多に無いだろう。

 今回の協議も行政府と教団の二重構造を抱合している事になるが、教団としては人を出さざるを得ない。

 これまでと違って、教義との整合を図らなければならないからだ。


 口火を切ったのは根本様だった。


「渋谷君が現地に着けば、プラントしんが翻訳してくれる事になっている。これまでよりも格段に意思疎通がはかどるだろう」

「こういった時に、『プラント様が遣わした援徒』様が来てくれて良かったと実感しますね。少なくとも聞く限りでは、現地では身振り手振りでしか意思疎通が出来ていない様ですから」


 この場で話し合われた事は非公式会談という形を取るので表には出て行かない。

 現在までの所、ファーストランドとニューランドの協議は根本様と渋谷様がオブザーバーとして参加したものが公式なものだ。

 その協議内容はメールで貰っているので、俺も富田様も頭には入っている。

 ちなみに、深雪たちは松浦君を除いてさっそくお風呂に向かっている筈だ。

 松浦君は今後の勉強も兼ねて、この打ち合わせに強制参加させられている。

 

「それで、我々のイーストランドへ行く話はどの程度、話が進んでいるのでしょうか?」


 クレスポ1等教士が切りこんだ。

 下手すれば、これまでの教義の1部が覆る可能性が有るだけに、教団側も気が気でないだろう。

 少なくとも、知的生命体に関する記述は原典には無い。

 その事から、状況の推移によっては記述が書き加えられる筈だ。

 この辺りは神託が現実に下されて来た宗教故の特徴と言うか、柔軟性が損なわれていないと言える。

 まあ、問題はその神託が現在の所、新たに下されていない事だ。

 リリシーナが宇宙船プラントに訊いても、何も答えないそうだ。

 これは昨日の昼食前に直接確認したから確実だ。

 何故ここまで沈黙を守っているのかが不明だったが、その推測は昨夜ベッドに入った後で1つ思い浮かんでいる。


 知的生命体との接触に関する制約が、宇宙船プラントの植民コードに書かれている可能性だ。

 最終的に判断するのは人類だと植民コードに書かれていれば、いくら能力が高かろうと、宇宙船プラントとしては口を挟めない。


 だから、知的生命体と接触が迫った段階で俺たちをコピペ召喚したとすれば、全ての辻褄が合う気がする。

 宇宙船プラントから聞いた話の中で、コピペ召喚自体は1年間は準備に時間が掛かるほどの大事業というくだりが有った。俺たちの召喚自体、害獣や災獣の襲来に対する対応も有っただろうが、本命の理由は手出し出来ない自身の代わりに、知的生命体に対処させようという目論見という気がしている。

 

「明日の午前中にはここを発てる様に調整中です」


 根本様が答えた。

 一緒の馬車で来たので、内情を知った上で富田様がクレスポ1等教士に質問をした。


「それで、教団側としてはどの様な方向を考えているのですか?」


 これは現段階での教団側の感触を出席者全員に周知する為の質問だ。


「プラント様の御神託は現段階では出ていません。我々だけの力で乗り越えろと言う事なのでしょうが・・・」


 俺たち『プラント様が遣わした援徒』4人は頷いたが、他の出席者は不安そうな表情を浮かべた。


「オダ殿、率直な意見を聞きたいのですが、どうしてプラント様は御神託を下されないのでしょうか? せめて何らかの示唆が有れば、我々としてはそれに従うのですが・・・」


 クレスポ1等教士が訊いて来た。馬車の中で主に話していたから、訊き易いのだろう。

 そして、正直な言葉と言える。

 一歩間違えれば、信仰心に揺らぎが発生していると指摘されかねない言葉だった。  


「残念ながら、自分にもプラント紳の真意は分かりません。ですが、1等教士がご自身で言った、自分達でこの状況を乗り越えろ、というのが当たっている気がします」


 みんなの視線が俺に注がれる。

 自分の推論に自信はあるが、万が一間違っていたら、どこかで対応も間違える気がする。

 答えてくれるかは不明だが、試してみるか。


『プラントが持つ、地球外の知的生命体との接触に関する権限を答えよ』

『個体名織田信之の質問を確認。該当する【行動規定】を抜粋後展開』


 いきなり【説明シーケンス】に突入した。

 一瞬で済むとはいえ、あまり気持ちのいいものでは無い。


「やっと、分かりました。プラント紳は知的生命体との接触に関与する気は有りません。我々が責任を持って対応する事を望んでいます」


 あ、やってしまった・・・・・

 これって、俺が神託を下されたという事になってしまうんじゃ?


『リリシーナにも今の内容を伝えてくれ』

『個体名織田信之の要望を確認。同時に同じ趣旨の説明は終了済み』


「どうやら『プラント様に仕えし至高巫女様』にはもう御神託が下っている様です」


 同時にとは言わない。

 多分、誤魔化せた筈だ。



お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m



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