第58話 第4章-第3話
20170622公開
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富田様から電話が掛かって来たのはちょうど食事が終わって、食器を返却口に返した時だった。
電話の内容は、10分後に緊急の会議を開催する事と彩君と松浦君の会議への参加要請だった。
今回の会議にはカルロス准尉は出席しない。
衛兵隊から出席するのは重槍兵中隊中隊長のゴンザレス少佐だけだ。
彼は生存している士官で1番上位の為に衛兵隊のトップとしての出席だ。近いうちに正式に衛兵隊隊長として任命される運びだ。
『大獣災』の時は有事だったので軍事的要素が多分に含まれていた為に小隊長以上は出席していたが、今は半分平時に戻っている。今回の派遣の当事者でも無いしな。
そして、彩君と松浦君が呼ばれているのはその当事者になるからだ。
まあ、ぶっちゃけ呼ばなくてもいいのだが、『大獣災』以降のしきたりみたいなものだ。
彩君は『大獣災』の時の指揮ぶりが認められて、今では被召喚者の若手を集めた防衛任務班の正式な班長になっていた。
元々、女子高生レジバイト3人の姐御的存在だった為に人を引っ張っていく能力は申し分が無いし、深雪とも連携が取れる貴重な人材だ(まあ、深雪はどちらかといえば単独行動の方が性に合っているので扱い辛いユニットだ。きっと彼女以外では持て余すと言う頭の痛い問題が根底にある)。
本来なら年上の松浦君が班長となるのだろうが、松浦君本人が辞退した。
彼曰く『神崎さんは有能ですし、連携も上手く行っているのに替えるのはリスクが有る上に士気の問題が有ります。それに僕がサブリーダーに徹した方がより上手く行くと思いますよ』という理由だった。
彼は日本に居た頃は手堅い仕事をすると言う評価だったが、こちらに来てからは一皮むけた様だ。
宇宙船の行動の謎の一部を解いた事からも分かる通り、彼ならではの着眼点で助かっている事も多い。本音を言えば行政方面や政治方面に引っ張りたい人材だ。
富田様や根本様の下で学べば、将来は俺たち被召喚者の政を任せられる人材になると思う。
ちなみに、彼も半年ほどすれば新たに作られる班の班長になる予定だった。
巻き込まれたお客様の中の高校生4人が最近になって防衛任務に志願して来たからだ。現在は彩君の班に組み入れて、娑婆で言う『OJT(On-the-Job Training)』の最中だ。
志願者は、西健二君、天野芽衣君、佐久間凛君、豊田咲樹君の4人で、唯一の男性の西君だけが3年生で、他の女子3人は1年生だった。
女子3人組は同じ高校の陸上部に所属していて、召喚された日は『女子会兼勉強会』の為に集まっていて、食べ過ぎて切らしてしまったおやつを買いに来ていて巻き込まれたらしい。
志願した動機は4人とも同じだった。
彩君たち4人の女子高生が命懸けの危険な仕事をしているのに自分達は守られるだけでいいのか? という気持ちが湧いて来たそうだ。
そうは思っても、実際に戦死者が出ている任務に志願するのは勇気が要る。
結局、志願するのに4カ月近く掛かったという訳だ。
ちなみに、志願の動機を訊ねた時に彩君たち4人の話は出て来たが、深雪については触れていなかった。
念の為に訊いてみたが、レジっ娘4人に対するものとは全く違う感情を抱いているらしい。
西君の言葉が一番秀逸だった。
『スーパーサイ●人って日本にも実在するんですね』
深雪が1人で、『大型災獣』3頭(その内の1頭は路線バス並みの体長10㍍越えだ)を倒した話を聞いていたらしい。ニコラス中尉がバラしたみたいだ。
彩君と松浦君を迎えに行くと、初めてこういう会議に参加する2人は緊張していた。
「アヤッチ、そんなに緊張せんでええで。ちゃんと話は聞いていますよ、その証拠に、ほら、発言者の方を見て、頷いているでしょ? てな感じで頷いてたらええだけの簡単なお仕事や」
2人が真面目に緊張しているのを台無しにしたのは深雪だった。
「いや、それはさすがにダメだよ。ちゃんと内容にも参加しないと」
「まあ、班長のアヤッチに任せるわ。ソラさんも一緒やから心強いしな」
深雪流の緊張をほぐす為の冗談だったが、本人が出席していたら本当にやりかねないと思ったが、みんなの表情を見る限り、全員が同じ思いの様だった。
会議自体は30分ほどで終了した。
ニューランドに赴く人間も決まった。
漂着した知的生命体を、プラント教としてどう扱うのかを見極める役割として『教士』と『準教士』がそれぞれ3人、教団の行政部門から2人、富田様、俺、護衛部隊として彩君たち10人の計20人だ。
彩君の名誉の為に言うが、彼女はちゃんと発言した。
『護衛部隊としてはそれで問題ありません』という1言だったし、一瞬言葉に詰まったが、声が裏返る事も無かったし、噛む事も無かった。
この段階でも宇宙船は何のコメントも情報も明らかにしていなかった。
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