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閑話 『悲劇の周辺』 ②

20170523公開


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『あ、佳澄ちゃん? 元気にしてる? 今、オンセの町を出たとこや。夜までには帰れるで』


 かいじゅう退治に行ったミユキお姉ちゃんからの電話だ!

 でも、声がすこしおかしい?


「うん、かすみはだいじょうぶ。でも、ミユキお姉ちゃん、なにか有ったの? 元気がないみたい」


 いつもならすぐに言葉が返って来るのに、ミユキお姉ちゃんの返事はちょっとだけおそかった。

 やっぱりおかしい・・・


『帰ったら話すわ。それと晩ご飯だけど、4人分の用意をしてもらってかまへんかな? お友だちを連れて行くからな』

「うん、いいよ」


 こんやもソラお兄ちゃんとニューお兄ちゃんがばんごはんを食べにくるのかな?

 きのうの夜は楽しかったから、またきてくれるならうれしい。

 でも、なにかもやもやしてる。

 

『『お店』には話を付けとくから、おかずを貰いに行ってくれる? 前に一緒に作ったクリームシチューが食べたいな』


 ちょっと元気な声になったけど、やっぱり変だ・・・ 


「うん、分かった」

『じゃあ、家に着く前にまた電話するからな』

「うん、待ってる」


 ミユキお姉ちゃんとの電話を切った後も、なにかもやもやした感じがする・・・

 でも、はやく『お店』に行って、お肉とか野菜とかシチューのルーとかを貰わないと。

 

 『お店』というのは、『店長さん』のお店にあったいろんな商品を買えるところだ。

 でも、1日に買えるのは1人500円までで、少なくなってきたお菓子とかラーメンとかは日曜日しか買えないのでちょっと悲しい。

 でも、こっちのお肉や野菜はただでくれるので、ちょっとだけがまんすればもんだいないと思う。

 だって、こっちのお菓子もただでくれるもん。あまり甘くはないけどけっこうおいしいし。

 『お店』についたけど、アヤお姉ちゃんのお母さんとあと2人のおじさんしかてんいんさんがいなかった。

 いつもなら、もっとたくさんいるのに?

 『お店』もはんぶんしまってる?


「佳澄ちゃん、待ってたよ。深雪ちゃんから頼まれてた分はこれだよ。『デッカイドウの美味しいクリームシチュー』のルーだから248円になるよ。それとシチューに入れるお肉とかお野菜とかは一緒に入れてあるよ」


 あれ? いつもなら『お店』の中でお買いものをするのに、今日は外でお金をはらうの?

 それに、おばちゃんも元気がない?

 おさいふから100円玉を3つ出しながら、きいてみた。


「えーと、なにかあったんですか? ミユキお姉ちゃんも元気がなかったし」

「うーんとね、きっと深雪ちゃんが教えてくれるから、帰って来たら聞いてごらん」


 いつもだったら、明るくてえがおを見せてくれるおばちゃんがこまった顔をしているから、それ以上はきけなかった。

 「ありがとうございます」と言って、帰ろうとしたけど、とちゅうでふりかえったら、『お店』の人たちとくらい顔でおはなしをしながら『お店』をしめていた。

 なにかあったんだ・・・

 また、わるいことがなにかあったんだ・・・


 ミユキお姉ちゃんから電話があったのは、ちょうどシチューができた後だった。

 おなべにふたをして、かまどの火を消して、とじまりをして、いそいで門まで走った。

 門にはたくさんの人たちがいた。

 兵たいさんもいっぱいならんでいたし、リリお姉ちゃんもいた。

 へんな感じがする・・・ いやな感じがする・・・

 だって、みんな悲しそうな顔をしているから・・・

 おとなの人がしゃべっているのを聞いていたら、だれかしんだらしい。

 もっと前に行こうとしていると、こうこうせいのお姉ちゃんたちがいた。

 いつも3人でいるなかよしさんだ。


「こんにちは」


 うしろから声をかけたら、びっくりした顔をされたけど、すぐにあいさつをしてくれた。

 思い切ってきいてみた。なんかみんなへんだと言って、きいてみた。


 ニューお兄ちゃんがしんだ? うそ?

 だって、きのうのよるにミユキお姉ちゃんとかすみとソラお兄ちゃんといっしょにごはんを食べたばかりだよ?

 元気にわらっていたよ?

 ニューランドのたびはたいへんだったから、しばらくお休みするんだって言ってたよ?

 うそ?

 お姉ちゃんたちが「なかないで」と言って、かすみのあたまをなでてくれた。

 まわりの人たちが急にしゃべりだした。「帰ってきた」と言ってる。

 お姉ちゃんたちがかすみを前のほうにつれて行ってくれた。

 

 ミユキお姉ちゃんがいた。

 かすみはがまんができずに、走ってミユキお姉ちゃんのところに行って、だきついた。

 あたまにミユキお姉ちゃんの手がのせられた。

 なんかいもなんかいもなでてくれる。

 



 そして、ミユキお姉ちゃんの声が聞こえた・・・




「ただいま、かすみちゃん」


 かすみはへんじができなかった・・・

 

 声を出したら泣いてしまうから・・・




 だから、ぎゅっとだきしめた。

 泣きそうになるたびにだきしめた・・・・・・




お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m

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