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第55話  第3章-第16話

20170520公開

3-15


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

-14d22h12m04s  織田 深雪 viewpoint




「この色ボケのマセ餓鬼が! 一丁前いっちょまえの口をききやがって! 親の顔が見たいわ!」


 角田さんがあっさりと激昂した。

 あれくらいの言葉で大人げないけど、こういう大人って自覚が無いんやろな。

 自衛隊部門を含めて、店側の人間は敢えて口を出してない。

 こっちに来てから、未成年であろうが自分自身で判断して戦って来たウチらは、十分に大人として扱われているからな。

 あ、でも、ソラさんがそろそろ限界やな。かなり赤くなってる。

 ウチも含めた3人で戦って来たし、オタク同士の2人は話が合ってたから、ニューランド遠征の時に下ネタを含んだ話が出来るくらい打ち解けてたからな。本当は玲奈ちゃん以上に悲しい筈や。

 あ、ウチは下ネタは聞いてない事になってる。こう見えても女子高生やからさすがに2人とも聞こえない様にしゃべってたからな。まあ、こっそり聞こえてないフリをして聞いてたんは秘密や。

 

「私が母親ですけど、お呼びですか?」

「どんな教育をしてるんや! 大人をからかうのもええ加減にさらせ!」

「親の私が言うのもなんですけど、立派に育ってくれたと思いますが? 口だけで何もしていない大人よりは余程世間様のお役に立っている自慢の娘です」


 アヤッチとこのおばちゃん、言い切った・・・

 しかも、アヤッチ以上にドヤ顔や・・・

 似た者母娘おやこや・・・

 ソラさんも空気を読んだのか、口を挟む気が無くなったみたいや。

 まあ、おばちゃんが戦闘モードになってるんや。下手に参戦出来んわな。


 自衛隊部門は当たり前として、あの逃避行時に前線を支えたレジっを含めてスーパー織田の従業員は全員がなんやかんやで『害獣アロ』を撃ち殺した経験を持ってる。なんやったっけ、コンバットブローブンやったっけ? 実戦を経験してるって事や。

 日本でレジを打ってたおばちゃんが、こっちでは人を食べる肉食獣を銃で撃って殺すなんて冗談みたいやけど、あの時は『お客様を守る』という意識がみんなに有ったからな。

 こっちに来てすぐにお兄ちゃんがお客様に約束したから、その言葉が素人なりに戦うという行動に走らせたんや。

 なんせ、今年57歳の腰痛で悩んでた田中副店長おやっさんさんでさえ、何匹か撃ち殺してる。

 そう言えば、角田のオッチャンに近い黄色が多い人達はあまり変わってないな。というよりは視線と表情を見る限りはむしろ角田のオッチャンの味方と言うよりはこっちの味方か?

 もしかしたら、自分達も逃避行時の状況が状況だっただけに、自衛の為とお兄ちゃんのお要請の為にコルト・ガバメントを構えてたから、1人だけ何もしなかった角田のオッチャンに反発してる?


「おい、店長、お前のとこは客をバカにする様な教育をしてるのか? どうなんや?」


 とばっちりがお兄ちゃんに行った?

 アヤッチとおばちゃんがしまった、という顔をしたけど、ウチから言わせたら問題無い。

 むしろチャンスや。

 現状のそれぞれの立場を分からせるチャンスや。

 お兄ちゃんも分かっているのか、急速に赤い部分が減って、黒く変わっていってる。


「角田様、勿論、スーパー織田はその様な教育はしておりません」

「嘘つけ! 今のやり取りを聞いていたやろ? 客、舐めとったら承知せんぞ!」

「なるほど、認識の違いが有りますね。プラント、スキャニングをする際に、特定の位置を狙ったのか? 先程の条件でみんなにも聞こえる様に答えろ」

『個体名織田信之の質問を確認。否定』

「ならば、どこでも良かったのか?」

『個体名織田信之の質問を確認。肯定』

「では、何故、当店が選ばれた?」

『個体名織田信之の質問を確認。読み取り効率と読み取り範囲を鑑み、存在する人類の密度により選定』

「分かった。ありがとう」


 お兄ちゃんは『もうお分かりでしょう?』という顔をしたけど、角田のおっちゃんは分かってないな。


「なんや、何を言いたいんや? まさか責任逃れする気か?」

「いえ、店としての責任は果たしたと認識しているだけです」

「そうだな、少なくとも我々は現在では安全な居場所を得ている。言い換えれば、我々の客という立場は終わったという事だ。それ以上を店側に求めるのは欲張り過ぎだろう」


 富田のおじさんがさりげなく助け船を出してくれた。

 うん、こういう所は見習わないとなあ。


「はん、あんたは店寄りの人間やから、店長の味方をするんやろ?」

「その程度の認識しか出来ん様なら、もうどうでもいい。あんたを相手にするのは時間の無駄だな。それよりも店長、そろそろ『神代教首代理』殿が来る時間じゃないのか?」

「そうですね、あと数分でこちらに来る筈ですね。ありがとうございます。危うく恥を晒す所でした」

「おい、待てよ、まだ話は終わってないだろ! 謝れよ!」

「もういいでしょ、角田さん。貴方あなたも女子高生相手にセクハラまがいの事を言ったんだ。それ以上の追及は自分の身に振り掛かって来る事になる」


 根本のおじさんまで仲裁に入ってくれた。

 確かにセクハラめいた言葉を言ってた。その角度から突っ込まれると男の人、特に社会人は弱いって、アヤッちも言ってたな。

 あ、もしかしてあの顔はアヤッチも分かってたな。

 でも、富田のおじさんと言い、根本のオジサンと言い、さすが年の功や。

 角田の『おっさん』は分が悪いと判断したんか、明らかに不機嫌な顔で離れて行った。

 うん、真っ赤やな。顔色も精神も。



 リリシーナちゃんも臨席したニューさんの葬儀は、ウチの予想を超えて大勢の住民が参加した。

 住民の合同葬儀の時はそれどころでは無かったという事も有るんやろけど、献花という文化がこっちにも有ったんやと嫌でも気付かされるほどの花が急遽用意された献花台に積まれた。

 もしかしたらファーストランドに在る花を根こそぎ捧げたんやないか? って思うくらいや。

 花を捧げる人たちがウチらに本当に感謝していて、ニューさんを悼んでくれている事は力を使わんでも表情と態度で分かった。


 昨日からウチと佳澄ちゃんと一緒に住み始めた孤児になった兄妹も献花をしてくれた。




 その姿を見て、玲奈ちゃんはやっと、涙を流した・・・・・


 

 



お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m


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